韓国の最旬俳優ク・ギョファンが語る「後悔はしない」作品作りと生き方の美学 | Numero TOKYO
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韓国の最旬俳優ク・ギョファンが語る「後悔はしない」作品作りと生き方の美学

出演する映画やドラマが次々と話題を呼び、いま韓国エンタメ界で圧倒的な存在感を放つ俳優、ク・ギョファン。最新主演映画『サヨナラの引力』が7月3日(金)、待望の日本公開を迎える。本国で『私の頭の中の消しゴム』の記録を塗り替える大ヒットとなった今作で、自身初となる本格的なラブストーリーに挑む中、観客それぞれの人生に溶け込む普遍的な「愛と別れ」の物語をどう紡ぎ出したのか?また、映画監督としての顔も持つ彼に、K-POPアーティスト・aespaのティザー作品に起用された“幻のシナリオ秘話”や、クリエイターとしての矜持について聞いてみた。

僕はこれまで演じてきた、全てのキャラクターに愛を込めてきました

──映画『サヨナラの引力』の出演オファーを受けた際、最も心を動かされたのはどの部分でしたか。

「キム・ドヨン監督の作品で、さらに相手役がムン・ガヨンさんだと伺って。そこが一番の決め手でした。他にも惹かれる部分はありましたが、まず監督と共演者の存在ですね。お二人とぜひ仕事がしてみたい!と思い、出演を決めました」

──今回はク・ギョファンさんにとって、商業作品では初の恋愛映画でした。初挑戦してみた率直な感想を伺いたいです。

「僕はこれまで演じてきた、全てのキャラクターに愛を込めて演技をしてきました。そして今回が初めてのラブストーリー。また恋愛モノの作品に呼んでいただけるなら、再び“素敵な愛の演技”をお届けしたいと思います」

──これまでご覧になった「恋愛映画」の中で、お気に入りの作品を教えてください。

「たくさんありますが、中でも『ラヴソング』という作品が好きです」

ムン・ガヨンさんと“次は敵役で共演しよう”なんて話しています

──出演を決めたきっかけでもある、ムン・ガヨンさんとの初共演。韓国でも「最高のケミストリー」と絶賛されたそうですが、実際に現場を共にしたことで感じたことは?

「ガヨンさんと一緒に最後まで素敵な作品を作り上げられた、ということ自体が素晴らしく嬉しいことです。今でも良い友人関係が続いていますし、僕の演技の先生にもなってくれました。彼女から学ぶことは多かったですし、素敵なご縁をいただきました。別の作品で再び共演できる日を楽しみにしています。半分冗談ですが『今回は恋人役だったから、次はお互いの敵役で共演しよう』なんて言いあったりもしているんです。僕とガヨンさんのどちらが“ヴィラン(悪役)”になるのか……それは分かりませんね」

──劇中で、わざと食べられないムール貝の貝殻を噛んだりと、ウノの不器用なキャラクターを表すコミカルな描写が出てきます。その中に、ク・ギョファンさんのアドリブも入っているのでしょうか。

「完全なアドリブというよりは、リハーサルの時に監督と『こうしたらいいんじゃないか』『この仕草はどう?』と一緒にアイデアを出し合いながら考えました。話し合いながら共に作り上げたシーンです」

初めて買ったノートパソコンとは、壊れた今でもサヨナラできません

──今作の韓国での原題は「もしも、私たちが」です。ク・ギョファンさんがこれまでの人生で「もしもあの時、ああしていれば…」と悔やんでいることはありますか

「実は僕、『絶対に後悔しない』と決めているんです。その場、その場での最善を尽くそうって。もしも悔やんでしまいそうな気持ちが湧いてきたら、瞬時に消してしまいます(笑)! 後悔はしない主義です」

──映画『サヨナラの引力』は大切な人との「別れ」を軸に人間模様を描いた作品です。時には「出会うこと」よりも「別れること」のほうが難しい、と感じることもあるかと思います。ク・ギョファンさんがこれまで「サヨナラするのが難しい!」と思ったものは?

「これまで、なかなか誰にもお話しできなかったエピソードなのですが…僕にとって『別れがたいもの』は、古いノートパソコンです。2007年……いや、2006年だったと思います。大学時代にお金を貯めて買った、初代のノートパソコンでした。それを使ってたくさんの映像作品を作ったのですが、ずっと使い続けていたら、もう修理に出しても直らない状態にまでなってしまいました。すでに起動もできない状態ですが、今でも“僕だけの博物館”に大切に保管してあります」

『サヨナラの引力』は観客自身が主人公となれる“自分の物語”

──近年、韓国映画界では以前よりも恋愛映画がヒットしづらい状況と言われています。そんな中、日本でも有名な『私の頭の中の消しゴム』の興行成績を上回る大ヒットを記録した『サヨナラの引力』。観客の心を掴んだのは、どんな部分だと考えますか。

「観客の皆さんが“主人公”になれる作品だからではないでしょうか?映画の主役は僕の演じたウノと、ムン・ガヨンさん演じるジョンウォンですが、観ている方々それぞれの物語でもあるんです。誰もが一度は、悲しい恋愛の経験があると思います。観客それぞれが抱える実体験が、映画の中に溶け込んでいき、たくさんのストーリーが派生していく。つまり、観ている人の誰もがウノであり、ジョンウォンなのです。『これは自分の物語だ』と思える部分がヒットの要因ではないでしょうか」

──今回の作品は、単に愛と別れを描くだけではなく、「居場所」の重要性についても触れているように感じました。ク・ギョファンさんにとっての居場所と言えば、どこでしょうか

「『現場』です。映画やドラマの撮影現場が僕の居場所であり、ホームだと思っています。現場に行くとなぜかホッとするのです。監督や撮影監督、共演者の皆さんが僕にとって心強い存在です。僕も周りの人にとっての『安らぎ』や『居場所』になれたらいいなとも思っています。

──7月3日(金)から日本で『サヨナラの引力』が公開されます。ぜひ注目してほしいポイントは?

「先ほどお話しした韓国でヒットした理由にもつながると思うのですが、普遍的な『私たち』の物語であることが見どころです。ぜひ、日本の皆さんも、ご自身の経験や物語をこの作品に溶け込ませて、あなただけのエンディングを作っていただけたらと思います」

クリエイターとして、好きな作品を、好きなスタイルで届けたい

──映画の中で演じられているウノは、大学時代から懸命にゲームクリエイターを目指すという役です。ク・ギョファンさんも学生時代から映画製作をされていますが、共感できる部分があったのではないでしょうか。

「そうですね。『自分の好きなスタイルで』『好きな物語を』『好きな方法で』作ってアプローチしようとしていた部分は、かつての自分と同じだと思いました。作中のウノが情熱を注いでいたものはゲーム制作でしたが、僕も『好きな作品』を望む形で観客の皆さんに届けたいという思いがあります。そこはウノと僕の共通点ですね。彼との違いは……あえて探していません。むしろ、似ているところを探りながら演じました」

──ク・ギョファンさんが今後、映画監督やクリエイターとして取り上げたいテーマがあれば教えてください。

「うーん。今、これといって決まったテーマはありません。その時、その時で強く心に響いたもの、気になった人、見てみたい物語を描いていきたいです」

──K-POPグループaespaの楽曲『Rich Man』のティザー作品にも出演されています。まるで短編映画のような豪華で刺激的な映像作品でしたが、ク・ギョファンさんが過去に書いていたシナリオが使われていると伺いました。

「そうなんです! そろそろ詳細を明かすべき時が来たようですね(笑)。あれは僕が約10年前に書きながらも、当時は映像化できなかったシナリオが使われています。序盤のボウリングのシーンや冷凍倉庫でのシーンです。台本案を作った当時、残念ながら撮影までには至らず『このままお蔵入りするのは悔しいな』と残念に思っていました。しかし今、ようやく映像化が実現したのを見ると、改めて『後悔や未練なんていう感情は不要だ』と感じましたね。だって、どうにかすれば、いつかは叶うチャンスが巡ってくるのですから」

──最新主演ドラマ「誰だって無価値な自分と闘っている」も話題沸騰中です。ク・ギョファンさんが演じる主人公ドンマンは、大学の映画サークルで唯一“デビューできずにいる映画監督”。それでも諦めずに夢を追う姿は、映画『サヨナラの引力』のウノにも通じる部分を感じます。ウノやドンマンのように、目標や夢に向かって頑張っている読者の皆さんへメッセージをお願いします。

「ぜひ『自分が一番楽しみながら』挑戦してください。自ら楽しんで夢中になっている姿は、きっと周りの人をも楽しませると信じています。僕の場合もそうでした。自分が心から楽しい、好きだと思えることに力を注いでほしいです。あなたの『好き』や『持ち味』が生かされた仕事や成果が世に出ることを、僕も応援していますし、楽しみにしています!」

『サヨナラの引力』


監督/キム・ドヨン
出演/ク・ギョファン、ムン・ガヨン
https://sayonara-inryoku.jp/

7月3日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
© 2025 KC VENTURES CO., LTD AND K WAVE MEDIA LTD ALL RIGHTS RESERVED.

配給/日活/KDDI

Photos: Shim Kyutai Interview & Text: K-POP Yuriko Edit: Yukiko Shinto

Profile

ク・ギョファン Koo Kyo Hwan 1982年12月14日生まれ。ソウル芸術大学映画学科卒業後、インディペンデント映画を中心に活躍。演技だけでなく脚本、演出、編集などにも携わりながらキャリアを積む。主要映画賞で新人賞を多数受賞した『夢のジェーン(原題/日本未公開)』(2017)で注目の俳優に。『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)で民兵集団のリーダーを鮮烈に演じて以降は『モガディシュ 脱出までの14日間』(2021)と話題作に次々と出演。自由奔放に見えながらも客観性を感じさせる演技、唯一無二の声の魅力は、ドラマシリーズ「D.P. -脱走兵追跡官-」(2021・2023)や映画『脱走』(2024)でも存分に発揮。カンヌ国際映画祭上映作『群体(原題)』にも出演、最新主演ドラマ「誰だって無価値な自分と闘っている」も話題作となっている。
 

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