フィンランド・ラップランドで世界最北級の屋外スパでととのう、ウェルネス・ラグジュアリーステイ | Numero TOKYO
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フィンランド・ラップランドで世界最北級の屋外スパでととのう、ウェルネス・ラグジュアリーステイ

見渡す限りの雪原、夜空に輝くオーロラ、悠々と歩くトナカイ、そして太陽が沈まない白夜。人生で一度は足を踏み入れてみたい北極圏に、世界最北クラスの屋外スパを有するフィンランド初のスモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド(以下SLH)加盟ホテルがオープンした。2025年11月に誕生した「Gáldu Hotel & Spa(ガルドゥ・ホテル&スパ)」だ。冬はクロスカントリースキーをはじめとしたウィンタースポーツ、夏はハイキングや魚釣りが楽しめるヨーロッパ屈指のリゾートで、ウェルネス・ラグジュアリーな時間を過ごしてきた。

先住民サーミの魂が宿るフィンランド北部「ラップランド」へ。北極圏へと誘う旅路

北極圏というと地球の果てのように思われがちだが、実はヨーロッパ各都市へ行くのとそう変わらない所要時間でたどり着ける。東京・羽田空港から21:50発のフィンエアーに乗り、約12時間半でヘルシンキへ。そこから2時間弱のトランジットを経て、1時間半のフライトで北極圏のイヴァロ空港に現地時間の翌日8:40に到着する。

日本への帰国もイヴァロ空港12:20発のフライトでヘルシンキへ飛べば、ヘルシンキ発東京・羽田行きのフィンエアーに間に合う。ホテルで朝食を済ませてから余裕をもって帰国の途に着ける。しかも「Gáldu Hotel & Spa(ガルドゥ・ホテル&スパ)」は、イヴァロ空港から車で約25分とアクセスが良い。

「ラップランド(Lapland)」という言葉は、実は北極圏(北緯66度3分以北)とイコールではない。欧州唯一の先住民族であるサーミの人々が、何世紀も前からトナカイと共に生きてきた文化圏「サプミ」を指す言葉だ。ラップランドはサーミ人を指すラップ人(今は蔑称に当たる)が由来の言葉で、スカンジナビア半島の北部からロシアのコラ半島にかけて、フィンランドやスウェーデン、ノルウェー、ロシアの4カ国にまたがる。エリアによっては北極圏外に位置するラップランドも存在するのだ。

そんな北極圏であり、ラップランドでもあるイヴァロエリア初のブティックホテルとしてオープンしたのが「ガルドゥ・ホテル」だ。サーリセルカという人口300人ほどの小さな村の中にある。フィンランドで2番目に大きな国立公園「ウルホ・ケッコネン国立公園」の原生林が目の前に迫る、自然豊かな場所だ。

フィンランド人建築家が描いた、自然と共鳴するモダン・ノルディックホテル

ホテルが加盟するSLHは世界100カ国以上、700軒を超える独立系ラグジュアリーブティックホテルが名を連ねる、世界有数のホテルブランドグループだ。平均約50室という小規模かつ、独自の理念を持つラグジュアリーブティックホテルが中心となっている。ホテルの設計を手がけたのは、フィンランドの建築界を牽引するペッカ・マキ氏。地熱暖房を備えたサステナブルな建築は、周囲の景観に溶け込みながらも、圧倒的な美意識を放つ。

ホテルを営むのは、家族代々この土地のホスピタリティ業界に関わってきた背景を持つイェルムさんと、妻のノラさん夫妻。ロビーでは、黒い毛並みが美しいラピッシュ・ヘーディング・ドッグのヘルガ(Helga)ちゃんとともに、イェルムさんが出迎えてくれた。

ラピッシュ・ヘーディング・ドッグは、サーミの人々がトナカイの群れを管理するために共に働いてきた、歴史ある牧畜犬。そしてイェルムさんの祖父は、サーミの血を引いている。二人の存在は、ラップランドの文化と歴史が地続きであることを思わす。

客室は全31室で、1階に位置する「フォレスト・ヘイヴン」や2階に位置する「ステラー・ヘイヴン」、50㎡のゆとりある空間に、プライベートバルコニーを有する「シグネチャー・スイート」の3タイプ。全ての部屋に床から天井まで届く大きな窓が配されており、窓の向こうに白樺の木々がそびえたつ。

今回宿泊した「ステラー・ヘイヴン」は25㎡とミニマルながら、一面の大きな窓のおかげで窮屈さはなく、無駄を排した機能美と自然のぬくもりが同居した心地よい空間だ。ベッドに寝ころんだ時の、雪の森に溶け込んだような浮遊感がたまらない。「日常を遮断し、快適さを妥協せずにラップランドの静寂を享受する」という創業者夫妻の想いが、随所に息づいている。

3つのサウナを有する世界最北端クラスの屋外スパで、極上のととのい

ホテルの名前「ガルドゥ」は、サーミ語で「冷たい泉」を意味する。その名の通り、世界最北級の屋外スパには、本格的なウェルネス体験が用意されている。サウナの本場ゆえ、水風呂の刺激は鮮烈だ。名前の由来にもなった水風呂は、約2℃と驚くほど冷たい。サウナ業界では温度が1桁台の水風呂のことを「シングル(グルシン)」と呼び、深いととのいが味わえると言われている。ガルドゥの水風呂も、身体の奥底から覚醒するような感覚をもたらしてくれる。

3つのサウナもまた、かなりの充実ぶりだ。炎を意味する「LIEKKI(リエッキ)」は、フィンランドの薪焚きサウナ。炎の揺らぎを眺めながら、スモーキーな薪の香りに包まれる独特のリラックス効果が魅力で、森林大国フィンランドらしいサウナとも言える。

隣接するのは、「塩」を意味するエプソムソルトのスチームルーム「SUOLA(スオラ)」。こちらは温度が低く湿度が高いため、初心者でも利用しやすく、肌と喉を優しく潤してくれる。

「枝」を意味する「HAVU(ハヴ)」は、トウヒや松の香りに包まれる伝統的なフィンランド式サウナだ。熱したサウナストーンに水をかけ、蒸気を発生させ、室内の湿度と体感温度を上げるセルフロウリュが楽しめる。

海塩やアロマオイルもおいてあるので、香りでリラックスしながら発汗作用を促せるのもありがたい。このセルフロウリュ、現地フィンランド人は5分間隔と頻度高く行うので、かなり室内が高温多湿になる。

サウナで身体を芯から温めた後は、屋外の温水プールやジャグジー、そして究極のデトックスともいえるコールドプランジへ。さらなるととのいを求めるなら、童心に返って雪原へダイブするのもいいだろう。北極圏の大自然に身をゆだね、マイナス気温の中で行う外気浴は、細胞一つひとつが目覚めるような、圧倒的な開放感をもたらしてくれる。

スパ内には森林に溶け込むかのような、ガラス張りのラウンジもある。ウォーターサーバーが設置されている他、バーカウンターには様々なお酒も並ぶ。

フィンランドに来たからには、ご当地サウナドリンク「ロンケロ(正式名称はロングドリンク)」をぜひ飲んでみてほしい。ジンとグレープフルーツを炭酸水で割ったサワーのような飲み物で、サウナ後にさらなる爽快感をもたらしてくれる。

ちなみにスパ施設内の更衣室は、フィンランドの法律で義務付けられた防空壕(ボムシェルター)になっている。ロシア国境から約25kmというこの土地のリアルを物語る施設だ。

北極海の魚介類やサプミの恵みにあふれた、ラップランド料理

ラップランドの美味を五感で味わうなら、迷わず「シェフズセレクション(フルボード)」を選びたい。シグネチャーレストランでの朝食、ランチ、アフタヌーンスナック、そして4コースのディナーまでが含まれたプランだ。

朝食時のブッフェ台には、フィンランド名物のお粥パンをはじめとした自家製パン、チーズやハム、たっぷりと脂がのったフレッシュなサーモンや北欧ならではのビルベリーやリンゴンベリーなどのフルーツたちが並ぶ。

朝食はメインが選べるハーフブッフェスタイルで、北極イワナとも呼ばれるアークティック・チャーのグリルをトッピングしたオムレツも選べる。インフューズドウォーターもコケモモを使っていたり、細部まで北極圏ならではのおもてなしを感じさせる。

ランチではリンゴンベリーのドレッシングを使ったサラダや、カリフラワーとトリュフバターソースをかけた牛肉のステーキを。

香ばしく焼き上げられた自家製パンも提供されるのだが、これにホイップされたブラウンバターを塗って食べると最高においしい。

そしてアフタヌーンスナックもまた、心躍るひとときだ。マカロンやマフィン、ナッツを使った焼き菓子を、温かい紅茶と共に雪景色や暖炉の火を眺めながら過ごす時間は、この上ないリラックスをもたらしてくれる。

一日の締めくくりは、シェフが腕を振るうディナーを。北極海やラップランドの森から届く最高級食材を使用しており、この土地の伝統を尊重しつつ、現代的なひねりを加え、世界各国の料理のエッセンスを取り入れた料理になっている。

例えばスターターには北極海のキングクラブを使った濃厚なスープや、アークティック・チャーの冷燻製タルタルなど。アークティック・チャーは、地元のイナリ湖やその周辺の川で釣ることができるサケやマスの仲間で、真っ赤なお腹をした美しい魚だ。サケに比べて脂が少なく、より風味が豊かでおいしい。

メインには56度の低温で火入れされたトナカイ肉のテンダーロインと、じっくり煮込んだ牛肉を合わせた一皿を。サーミ族の伝統食であるトナカイは、ジビエ特有の臭みが強すぎず、洗練された鹿肉のような味わいだ。ローストしたビーツ、アーモンドクリーム、そして黒胡椒とリコリスのソースの組み合わせも北欧らしい。

ドリンクリストも、感度の高いゲストを満足させる本格的なセレクション。「ルイナール(Ruinart)」や「ドン・ペリニヨン(Dom Pérignon)」、「クリュッグ(Krug)」といった名門シャンパーニュ、そしてトスカーナの名門「ティニャネロ(Tignanello)」などに加え、ローカルのクラフトビールも豊富にそろう。

北極圏の原生林に佇む。サステナブルな建築とサーミ文化が融合するホテルへ

北極圏ならではのスパ体験、手つかずの自然をそのまま取り込んだようなデザイン、地元食材を使ったラップランド料理。「日常から離れ、ラップランドの静寂に身をゆだねながらも、快適さを犠牲にしない場所を作りたい」そんなオーナー・イェルムさんの想いが見事に体現されたホテルだ。

Gáldu Hotel & Spa(ガルドゥ・ホテル&スパ)
住所/Viskitie 1, 99830 Saariselkä, Finland
TEL/+358 40 770 6709
URL/https://slh.com/hotels/galdu-hotel-and-spa

取材協力:スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド

Photos & Text:Riho Nakamori

Profile

中森りほ Riho Nakamori 東京生まれ、東京在住のフリーランスライター・編集者。食や旅などライフスタイルを中心とした各種メディアで活躍。年間100日ほど仕事やプライベートで国内外を旅している。Instagram: @tokyo.and.elsewhere
 

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