ザ・コンランショップの美学が詰まったホテルが軽井沢にオープン。名作家具に身を委ねる「HACIENDA KARUIZAWA」の滞在 | Numero TOKYO
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ザ・コンランショップの美学が詰まったホテルが軽井沢にオープン。名作家具に身を委ねる「HACIENDA KARUIZAWA」の滞在

東京から北陸新幹線に乗って、わずか70分で到着する軽井沢。駅北口から徒歩1分という立地に、今年3月、駅直結の商業施設「軽井沢T-SITE」が開業した。ここは「しなの鉄道」が所有する敷地で、レストランやカフェ、スパ、ライフスタイルショップなど全6棟で構成。その中の一棟が「ザ・コンランショップ」が監修した宿泊施設「HACIENDA KARUIZAWA」だ。

4月25日にグランドオープンした、全9室の小規模で贅沢な宿泊施設「HACIENDA KARUIZAWA」。山小屋のようなロビーに一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは暖炉のゆらめく炎。軽井沢らしい落ち着いた空気感で、到着したゲストを温かく迎えてくれる。暖炉のまわりには、ハンス・J・ウェグナーのラウンジチェアや、シェーカーロッキングチェアが配置。椅子に深く身体を預けると、ギャラリーで鑑賞するのとは全く異なる、名作家具でくつろげる感動に包まれた。

3mを超える暖炉には、画家の平澤まりこさんが手がけた空を駆ける馬の姿。古くから乗馬を楽しむ文化が根付く軽井沢に関連するモチーフを、躍動感あふれるタッチで描いている。

平澤さんに話を伺うと「パブリックな場で見ていただく作品なので、広い年齢層の方に楽しんでいただけることを意識して制作しました。ロビーのシックな雰囲気と調和するように、色数を抑えています。今回は3m超えの作品だったので、最初に模型を制作し、それを元に現場で煙突に直に描いたことは新しい試みです」。

凛としながらもやさしさを湛えた平澤さんの馬たち。モダンな家具と組み合わさることで、ホテルの世界観を象徴する重要なアートピースになっている。

客室に入ると、そこはザ・コンランショップの私設美術館だ。ブランドの審美眼で選び抜かれた、タイムレスな名作から現代のアイコンまで美しく配置されている。また、全室すべてのデザインが異なるため、画一的なホテルステイにならないのも大きな特徴。こちらの部屋は根強い人気のカール・ハンセン&サンのプリコチェアや、ザ・コンランショップを代表するモジュラーソファでくつろげる。

ブランドやデザイナーの背景を読み解きながら、自分の体に馴染む一脚を探すのは、このホテルでしかできない贅沢な「椅子の試着」である。「もしこの家具を自宅に置けたら?」と、単なるラグジュアリーなホテルという枠を超え、私たちの日常をアップデートするヒントに満ちていた。

北欧デザインのヴィンテージのキャビネットの隣には、ザ・コンランショップのオリジナルのピルエットコートスタンドを配置。キャビネット上の陶磁器と色味を合わせることで、空間に温かみや穏やかさが漂う。部屋にはそれぞれテーマカラーがあるため、色の持つインスピレーションにも触れられる。

また、ブランドものだけでなく「アノニマス(無名)で美しいもの」を混ぜているのが、ザ・コンランショップの手腕。ヨーロッパで買い付けられた一点もののヴィンテージ家具や、日本の古い欅の帳場箪笥など、北欧家具と一緒に並ぶことで、軽井沢の「邸宅」を思わせる深みを出している。

空間を決定づけているのは、既存の家具だけではない。壁と一体化し、建物の骨組みと共鳴するビルトインの造作の美しいこと。空間に完璧に調和した作り付けのデスクやソファに座る夜のひとときが楽しみになる。

デスクに置かれたオリジナルのレターセットひとつを見てもセンスの良さが伺える。スマホ片手に全ての連絡が叶う今、あえてアナログなペンを握る時間は、あふれるノイズを遮断して旅先のマインドに委ねられる贅沢な時間。

朝起きたら、スタッフによって客室まで運ばれるモーニングをぜひ楽しみにしてほしい。8時頃、ドアを叩く音がその合図。部屋の外へ出ると美しいバスケットが置かれ、中身は地元で愛されるパンや卵料理、丁寧につくられたハム、濃厚なヨーグルトなど、信州の自然が生んだ食材が詰められている。

モーニングをいただくカトラリーにも注目。こちらはスタイリストの石井佳苗さんが監修したブランド別注アイテム。1751年創業のカトラリー製造の老舗「燕産業」が共作したキャフシリーズだ。イギリスの大衆食堂からインスパイアされ、シンプルで実用性が高く、まさに日常で使えるデザイン。この重さは手に馴染む? 質感は朝の光でどう見える? 自宅に迎える前に、自分の感性との相性を試せる良い機会になる。

ちなみに、客室のスリッパは持ち帰りが可能。ふんわりと厚みがあり、素足に心地いいテクスチャーは、まさにザ・コンランショップのこだわりの極み。アメニティーにも徹底した美意識が貫かれている。

時間があれば、共用エリアのライブラリーにも足を運んでほしい。ザ・コンランショップCDOの中原慎一郎氏が厳選した長野に関連する書籍やアートブック、写真集などが並び、その知的で静寂な空間にうっとりする。ラウンジチェアに体を預けて本を眺める時間は、ゲストの感性を刺激する視覚的なキュレーションそのもの。

ここにある家具は、どれも単なる機能的な道具ではない。座り心地、手触り、視線が抜ける先にあるアートとのバランス。滞在しながら個々の暮らしを想像できる、素晴らしいインスピレーション源になるだろう。

HACIENDA KARUIZAWA
住所/長野県北佐久郡軽井沢大字軽井沢字中谷地1178-1293(軽井沢T-SITE内B06)
TEL/0267-31-6460
https://hacienda-karuizawa.jp

Edit & Text : Tokiko Nitta

Profile

仁田ときこ Tokiko Nitta 民俗学を学んだ経験を活かし、日本各地や世界を旅しながら、土地に根ざした文化や風習、手仕事について執筆する。海辺の葉山暮らし。Instagram:@tokikonitta
 

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