マリー・アントワネットの生涯に重ねる、現代の自己像「ムッシャン」2026年秋冬コレクション | Numero TOKYO
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マリー・アントワネットの生涯に重ねる、現代の自己像「ムッシャン」2026年秋冬コレクション

2026年秋冬東京コレクションのフィナーレを飾った、木村由佳が手掛ける「ムッシャン(mukcyen)」。昨シーズンに続き2度目となる今回のショーでは、18世紀フランス王妃、マリー・アントワネットの生涯に着目した。

今季のテーマ「在;formed」の背景にあるのは、木村自身がインフルエンサーとデザイナーという2つの顔を持つ中で感じてきた、社会から与えられるイメージへの違和感だ。王妃、妻、母といった多面的な役割を背負わされ、最後にはひとりの人間として運命を全うしたマリー・アントワネットの姿に、自身の葛藤を重ねたと語る。

ファーストルックは、繊細な花柄レースを纏ったボリュームのあるトップとスカートに、パンツを合わせたレイヤードスタイル。ブランドを象徴するボディに沿うタイトなラインに加え、今季はゆとりのあるデザインが多く登場し、シルエットの対比を強調させた。

印象的だったのは、18世紀ヨーロッパのロココ様式の影響が色濃く反映されたルック。レースのヴェールや首元のラッフル、パワーショルダーのコートや高く結い上げたヘアスタイルなど、当時の華やかな文化を感じさせる要素を取り入れつつ、ブランド独自の世界観へと落とし込んでいた。

カラーパレットは、純真なホワイトから始まり、グレーを経て、ブランドのキーカラーであるブラックへと移行。フィナーレに向かうにつれ、装飾の華やかさは削ぎ落とされ、精神的な力強さが宿っていく過程を表現するようだった。

そして、ブランドのシグネチャーアイテムであるセカンドスキンも昨シーズンに続いて登場。機能性を追求し、アルガンオイルを配合した素材によって、肌に吸い付くような滑らかな着心地を実現している。その生地には、“優しく守られているような安心感を形にしたい”という想いが込められている。

世間からのイメージと本来の自分。その間に生まれる葛藤や違和感を、美しく、力強く描き出した本コレクションには、ムッシャンの新たな可能性と、揺るがない芯の強さが宿っていた。

 

Text:Kanami Abe

 

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2026.3.27 発売

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