2026年春夏シーズンのキーワードのひとつ「解放」。衣服と身体のあいだに生まれる余白は、装うことを束縛から解き放ち、より自由な身体感覚へと導いていく。フランス出身のモデル、マイラス・ル・ブランが、鮮やかなカラーを差し色に描き出す、新たな「解放」のかたち。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年4月号掲載)

ブランドの伝統を継承しながら、現代の女性像をより軽やかに再構築したサンローラン。大胆に強調されたショルダーラインのジャケットやアシンメトリーのドレスといった象徴的なシルエットを軸に、軽量で実用性を備えたナイロン素材のトレンチコートやドレスが加わり、新たな表情をもたらした。マスタードイエローのドレスに合わせたサングラスと大ぶりのイヤリングが、スタイリングにシャープな輝きを与える。

「働く女性たち」へと視線を向けたミュウミュウ。労働を努力の痕跡としてだけでなく、ケアや愛情の延長として捉えた。工場や家事労働を想起させる “エプロン”を今季のキーモチーフとして取り入れ、女性への敬意を示す。エプロンを思わせるレーストップとセットアップのスカートが、装いのなかに複数の意味を折り重ね、知的なフェミニニティを浮かび上がらせる。



バレンシアガは、時代を超えて受け継がれる革新的なシルエットをモダンにアップデートし、既存のルールから解き放した造形として立ち上がらせた。正面だけでなく、側面や背面に至るまで緻密に計算されたフォルムのケープは、身体の輪郭そのものを問い直す。オールブラックの装いが、ブルーの背景のなかに際立ち、圧倒的な存在感を放つ。

シャネルは今季、「パラドックス」「昼から夜まで」「ユニバーサル」という3つのキーワードをベースに、空間や時間の境界を横断する世界を描いた。そこにあるのは、状況や時間に縛られない、女性たちの自由な精神。メゾンを象徴するツイードのジャケットはショート丈で軽やかに刷新され、シースルーのインナーを重ねて。深いスリットを施したスカートが、洗練の奥に潜むセンシュアルな一面を覗かせる。

ディオールの伝統にオマージュを捧げながら、新たな時代の扉を開いた今季のコレクション。「デルフト」「カプリス」「ラ シガール」と名付けられたクチュールドレスは、エレガンスを宿したまま、パンツやキュロットへと姿を変え、装いの可能性を広げていく。骨組みを内側に仕込んだドレスには、裾に編み込みのディテールを施し、立体的なフォルムを生み出した。

「Body of Composition(構成される身体)」というテーマに、情報過多と不確実性に満ちた時代に、いかに身を置くかを思考したプラダ。ワークシャツにクロップトトップ、サスペンダースカートを重ねることで、身体と衣服の関係を固定されたものから解きほぐしていく。ヴィヴィッドなブルーのグローブをアクセントに、鮮やかな色彩がリズムを与え、モダンな佇まいへと導く。

スペインで誕生してから180年の歴史を重ねてきたロエベは、明瞭さ、色彩、官能を軸に、ビーチや太陽、高揚感といったスペインの情緒を、鮮やかなカラーパレットとして昇華させる。ブラックドレスにピンクやイエローの強い色調を差し込むことで、絵画的なコントラストをもたらした。スケルトンのパンプスが抜けをつくり、色とフォルムに爽快な余韻を残している。

クラシックなテーラリングに、メゾンのルーツである馬術のエッセンスを映したシルクスカーフ。セリーヌは、時代に左右されないスタイルを提示する。ベルトでウエストを引き締めたジャケットにデニムを合わせたスタイルは、デイリーウェアでありながら、洗練と知性を内包した女性像を示唆する。スカーフとフラットシューズで、今の気分をさりげなく差し込んで。



アライアは、衣服とのあいだに生じる緊張やねじれに焦点を当て、フォルムそのものを通して女性の輪郭を強く印象づけた。ボディラインに寄り添う厳密なカッティングに、赤やグリーン、イエローといった鮮やかな色彩を効かせ、視覚に明快なリズムをもたらしている。動きに応じて表情を変えるヌーディなドレスが流動的なシルエットを描き、赤のサンダルが、鮮烈なアクセントを添える。

「パワフルなフェミニニティ」をテーマに、女性の強さと繊細さを探求したジバンシィ。テーラリングの構造を解体し、肌を見せることで抑制から放たれた解放感を表現した。ボディスーツにミニ丈のナッパレザージャケットを纏ったスタイルは、官能的なムードを醸し出す。メタリックのイヤリングと、エナメルフリンジを効かせたシューズが、揺るぎない意志を刻み込む。

創業60周年を迎えるボッテガ・ヴェネタは、「工房」を意味するブランド名の原点をあらためて見つめ直す。メゾンを象徴するイントレチャートは、異なる要素を編み重ねることで、現代における新たな強さを生み出している。シャツにスカート、スカーフというタイムレスなスタイルには上質なレザーを用い、素材と技の魅力を引き立てた。
Styling:Joana Dacheville at Saint Germain Agency Hair:Quentin Guyen at Calliste Agency Makeup:Yvane Rocher at WSM Model:Maylis Le Brun at IMG Paris Executive Producer:Cleo Ferenczi at New Light Films at Art and Commerce Line Producer:Stella Besson at New Light Films at Art and Commerce Unit Manager:Samuel Maspoli at New Light Films at Art and Commerce Photo Assistant:Camille Canet Stylist Assistant:Matéo Ferreira Special thanks to Andrea Barone Edit & Text:Maki Saito
