ゆりやんレトリィバァ × 南沙良 対談 恋はわざわい? | Numero TOKYO
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ゆりやんレトリィバァ × 南沙良 対談 恋はわざわい?

お笑い芸人のゆりやんレトリィバァが監督に初挑戦し、南沙良が主演を務めた映画『禍禍女』。ゆりやん自身の恋愛を元につくり始めた本作は、いつの間にかホラー映画の様相を帯びていったという。カオスで狂気的な世界観を生み出したゆりやんと、それを怪演した南が表現した「恋」とは。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年3月号掲載)

 

ゆりやんの恋愛はホラー⁈

──『禍禍女』には恋愛の裏側に潜む嫉妬や執着が狂気的に描かれていて圧倒されました。感情が渦巻くカオスな世界観を映画で表現しようと思った理由は何でしたか?

ゆりやん(以下、Y)「2021年にプロデューサーの高橋大典さんから映画を撮ってみませんかと言われて。どういう映画を撮ろうかと考えたとき、自分の中にあるものを表現するなら恋愛だと思ったんです。私は恋愛体質というか、恋多き女であり荷物多き女なので(笑)、自分の過去の恋愛についていろいろと話していたら、高橋さんに『それ、ホラーですね』と言われて……」

──具体的にどのような恋バナをされたのでしょうか?

「高校生の頃、水泳部の先輩を好きになって、『平泳ぎ教えてください!』と言い寄ったり、EXILEが好きな人のためにラジカセを持って校庭で大音量で流したり。他にもいろいろ……」

──たしかに、ホラーです。

「こうしたエピソードを聞いた高橋さんの提案もあって、恋に落ちた女性が自分でも制御できなくなるほど暴走をしてしまう姿を描こうと決まって。脚本家として内藤瑛亮さんが入ってくださり、どういうホラー描写にしようかと一緒に考えていきました。私としては『恋の翼』というタイトルで、青春恋愛映画を撮るんだと思っていたのですが……(笑)」

──(笑)。南さんは、好きになった男性に執拗に付きまとう、早苗を熱演。初めて脚本を読んだとき、どんな印象を持ちましたか?

南(以下、M)「とにかくインパクトがすごくて。ただ、台本を読んだ時点では、まさかここまで狂気性のある女の子を演じるとは思っていませんでした(笑)。脚本にある程度、方向性は書かれていたんですけど、実際にどういう芝居にしていくかは、監督と話し合いながら、現場で一緒に作っていきました」

「『恋をした早苗ってこういう思いを抱えてるんじゃないですかね?』とか、お互いが思う早苗像を重ね合わせていきました。だから、沙良さん以外の人が演じていたら、まったく違う早苗になっていたと思います。暴走する早苗には沙良さんの内面が、ばっちり出てたんやと思います‼」

「いえ、違います(笑)。ゆりやんさんを観察したり、話したりしているうちに 『あ、早苗ってゆりやんさんなんだ』と思えて。それで役が立体的になりました」

「えぇ、そんな……。私、あんなヤツですか?」

「そうですね……(笑)。ただ、監督に『もうちょっとこう動いてみたら?』とか、『こういう表情のほうが説得力が出る』って言っていただいたりして、一緒に作り上げた結果、私自身、新しい表現の扉が開いたことがすごく大きかったです」

「監督業は初めてで、何もわからない状態からのスタートだったんですけど、沙良さんと二人三脚でやると決めたからには、自分が思っていることを伝えないと意味がないと思って、『今日は勇気出して言うぞ!』と腹をくくりました。目の焦点が合わんと、わけわからんテンションで話すこともあって、だいぶ怖かったと思うんですけど(笑)」

──話を聞いていると、そういった感情をぶつけ合うやりとりは恋愛に通じるものを感じます。お二人は恋をすると、気持ちをストレートに伝えるタイプですか?

「私は恋愛に限らず、何事においても人に気持ちを真っすぐぶつけることはあまりないかも……」

「ええ~! 私はすべてどストレートの直球タイプ。『好きです! なんでダメなんですか⁈ 私の好きという気持ちが100で、あなたの無理という気持ちも100なんだったら、なんで私だけ諦めないといけないんですか⁈ どっちも100やったら、1回ぐらいあなたが譲ってくれてもよくないですか⁈』って。本気でそう思って詰めてたんです」

──禍々しい感じが伝わります。

「でも、最近変わりました」

──何があったんですか(笑)。

「恋愛心理学のYouTubeを見て学んだんです。それまでは自分がどれだけ好きかがすべてやったんですけど、それって完全に一人よがりやなって。相手の気持ちを想像して、相手をどれだけ大切にできるかが恋愛なんだって、当たり前のことなんですけど、それに気づけたことは自分の中では大きな成長でした。それを『禍禍女』にも込めました」

恋は禍々しい、でも愛おしい

──では、最近の恋愛禍々エピソードはありますか?

「それが、ないんですよ。映画を制作する上で恋愛に関するネガティブな感情をすべて出し切ってしまって。宣伝チームの皆さんに恋愛の『怒りや恨みを教えてください!』って言われるんですけど、本当になくて、『困ります!』って言われてます(笑)。『禍禍女』が私を浄化してくれたのかもしれません」

──恋は時に災いであり、時に人生を照らす光でもある気がしてきました。お二人は『禍禍女』を観た方にどう受け取ってほしいですか?

「早苗は一見すると理解しがたい女の子かもしれないけど、きっと誰にでも深いところで『ちょっとわかるかも』と思える瞬間があるはず。共感できるところは笑って、共感できないところは『え、そこまでやる⁈』って引きながら(笑)、楽しんで観ていただけたらうれしいです」

「いろんな感情になってもらえたらうれしいです。そういえば、この作品の撮影後、スタッフの方が結婚されたり、素敵な出会いがあったりという話を結構聞くんです! だから、恋愛成就映画だと思っています。この映画を観たら、あなたの恋愛運が絶対に上がります!!!」

禍禍女的恋愛指南
編集部に寄せられた恋のお悩みに二人がアンサー。

Q1 恋をすると、相手を研究しまくってSNSをすべてチェックし、博士のようになります。程よい興味にとどめるにはどうしたらいい?

「私は開き直って博士になります。“○○学教授”になるくらいの気持ちで突き詰めちゃいましょう」

「私は逆に一切調べません! 調べたらどんどんしんどくなるから。“他人博士”じゃなくて“自分博士”になったほうがいいですよ。私は恋愛心理学のYouTubeを大量に見て気づいたんですけど、恋がうまくいく人には共通点があるんですよ。それは 自分の人生を楽しんでる人は恋愛上手ということ! だから、相手のSNSより、自分の毎日を見つめて、心の底から楽しんでください」

Q2 好きな人からLINEが来ないだけで世界の終わりみたいに感じてしまいます。世界、続きますか?

「続きます(笑)」

「普通に続きます。それどころか、そもそも、あなたの魅力に気づかず、返信を早く返さないような人、全然大したことないですよ! そんな人の指先ひとつで世界終わらされたらたまりません!!!」

Q3 恋愛がうまくいかず、落ち込んだときは気持ちをどう切り替えればいいでしょうか?

「私は落ち込んだ気持ちをそのまま放置せず、自分の中に押し込めたりせずに、紙に全部書き出したり、人に会ってしゃべってデトックスします。友達に会って笑うと、『あ、大丈夫だな』って気持ちがリフレッシュするのでおすすめです」

「私は自分を振った人のことを盛りに盛って言いふらします。スカッとしますよ!!」

Q4 相手を思う気持ちが強すぎて、嫉妬したり、執着したりして、自分の中の闇の感情が顔を出します。その闇の感情とうまく付き合うには?

「その闇の感情に大好きなものの名前をつけるのはどうでしょうか? 私はホルモンが大好物なのですが、愛犬に『ホルモン』と名付けて、日常で呼びかけることで愛情がどんどん増幅しています。きっと闇の感情も急にかわいく見えてくるはずです」

「闇の感情がムクッと出てきた瞬間に“『禍禍女』2月6日公開!”って心の中で唱えてみるのはどうでしょうか。そうしたら、観に行かなきゃって気持ちが強くなるので、黒い感情にも振り回されずに済みます」
 

『禍禍女』
ゆりやんレトリィバァ自身の恋愛経験を基にした狂気の恋愛復讐劇。2月6日(金)より全国公開中。
監督/ゆりやんレトリィバァ 
脚本/内藤瑛亮 
出演/南沙良 
URL/https://k2pic.com/film/mmo
 


 

Photo:Kisimari Styling:Marie Takehisa(Sara Minami) Interview & Text:Mariko Uramoto Edit:Mariko Kimbara

Profile

ゆりやんレトリィバァ Yuriyan Retriever 1990年生まれ、奈良県出身。吉本興業NSC大阪校を首席で卒業する。2017年、女芸人No.1決定戦「THE W」第1回大会で優勝。21年、R-1グランプリ優勝。Netflixドラマ『極悪女王』で主演を務めるなど俳優としても活躍するほか、楽曲リリースやトレーニングウェア「YURYUR(ユーユー)」のディレションなど幅広く活動。24年に活動拠点をLAに移す。ポッドキャスト番組に『ゆりやんレトリィバァ の最近どう?』も配信中。
南沙良 Sara Minami 2002年生まれ、東京都出身。映画『幼な子われらに生まれ』(17年)で俳優デビュー。初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18年)で、報知映画賞、ブルーリボン賞ほか数々の映画賞を受賞。現在、主演映画『万事快調<オール・グリーンズ>』が公開中。ヒロインを務めた香港映画『ROAD TO VENDETTA 殺手#4(キラーナンバーフォー)』が日本では春に公開予定。
 

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