ワインにハマってしばらく経つと、避けては通れないのがフランスの「ブルゴーニュ」という産地。大好評だった「赤ワイン(ピノ・ノワール)編」に続き、今回は「ブルゴーニュの白ワイン」にフォーカスしてご案内します。ブルゴーニュワインには興味があるけれど、なんだか難しそう……という方のために、ワインマーケット・パーティー店長の沼田英之ソムリエに、ワインブロガーのヒマワインがわかりやすく解説してもらいました!

ブルゴーニュの白ワインはなぜ人気?
ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回はブルゴーニュの『白』について深掘りしていきたいと思うんですが、店長、ブルゴーニュの白って昔から特別だったんですか?」
沼田店長(以下、店長)「そうですね。昔はドイツのリースリングが覇権を握っていた時代もありましたが、今やブルゴーニュの白は世界で一番みんなが欲しがる、おそらく世界で一番高い白ワインの一つです。基本的には『シャルドネ』というぶどう品種から造られます」
ヒマ「世界中で植えられていて、大人気の品種で。なかでもブルゴーニュは最高峰の産地ですよね」
店長「そうですね。シャルドネって幅が広すぎて、ブラインドテイスティング(銘柄を明かさずに飲んで、産地や品種を当てる飲み方)で飲んでいても、まるで反復横跳びをしているみたいに的が絞れないんです。シャルドネは、よく『個性がないって言われるのが個性』だと言われますが、だからこそ土地や人、醸造の個性が色濃く反映される品種でもあるんです」
ヒマ「たしかに! すごく爽やかなシャルドネもあれば、こってり濃厚なタイプもある。語弊を一切恐れずにラーメンにたとえれば、塩ラーメンっぽいものからトンコツラーメンっぽいものまであるのがシャルドネだと思います(笑)。そのうえであえて聞きますが、ブルゴーニュのシャルドネに共通する特徴って、ズバリ何なのでしょう?」
店長「ブルゴーニュだけでも造り手が多くて千差万別ですが、大まかに言えば『樽熟成による香ばしさや旨味』がブルゴーニュらしさの基準になることが多いですね。最近は脱・樽熟成の動きもありますが、やはり樽のニュアンスでブルゴーニュかどうかを判定しやすい。その唯一無二の味に惹かれて、世界中でこの産地を目指したワインが造られているんです」
ヒマ「では、ブルゴーニュのシャルドネの“反復横跳び”をはじめましょうか!」
ブルゴーニュの白ワインその1:クレマン・ド・ブルゴーニュ

店長「まずは『泡』からご紹介しましょう。クレマン・ド・ブルゴーニュと呼ばれるスパークリングワインです」
ヒマ「シャンパーニュと同じ“瓶内二次発酵”と言われる手法で作られるワインですよね」
店長「はい。クレマンは『クリーム』という意味で、その名の通り柔らかい泡が特徴なんです」
ヒマ「クレマンはフランスのあちこちで造られていますが、とくにブルゴーニュのものは品質が高い気がします」
店長「そうですね。ただ、ブルゴーニュは赤と白を先に造る産地なので、クレマン用の若い樹齢のぶどうなどは早摘みして、協同組合や専門の瓶詰め業者に委託して造ってもらうことも多いんです。自分で設備を持って泡まで仕込んでいる生産者は実はほとんどいません」
ヒマ「へ〜、そういうもんですか」
店長「ここで紹介したいのがクレマンしか造っていない専門の造り手で、『ポール・ショレ』という生産者のものです。飲んでみてください。最近流行りのシャンパーニュのような、ちょっと酸化熟成的なニュアンスがあってめちゃくちゃ美味しいんですよ」

ヒマ「本当だ、香ばしくて美味しい! これはおいくらですか?」
店長「3,300円です」
ヒマ「3,000円台でこのクオリティは驚きですね」
店長「ブルゴーニュは“泡”もおいしい。まずはそこを知っておいてください」
ブルゴーニュの白ワインその2:シャブリ

店長「ここからはスティルワイン、いわゆるふつうの白ワインを見ていきましょう。まずはブルゴーニュ最北の産地、シャブリから」
ヒマ「『生牡蠣にはシャブリ』なんてよく言われる有名な産地ですね」
店長「はい、ワインに詳しくなくてもシャブリを知っている方多いのではないでしょうか。そして、ボトルにシャブリと書いてあったら品種は絶対にシャルドネなんです。実はシャブリって、昔は川を使ってパリにワインを運んで栄えていたんですが、南仏からパリへの鉄道が開通して安いワインが流入したせいで、一時期どんどん畑がなくなって衰退してしまったという歴史があるんです。今は復興し、高品質な白ワインの産地として世界的に有名です」
ヒマ「鉄道のせいで! それは意外な歴史ですね」

店長「シャブリには『プティ・シャブリ』『シャブリ』『一級畑(プルミエ・クリュ)』『特級畑(グラン・クリュ)』という独自の格付けがあります。シャブリ特有の、海藻のようなヨード感やキンメリジャン土壌(牡蠣の化石を含む石灰質土壌)のミネラル感を感じやすいのは、実は平地に近いプティ・シャブリや村名のシャブリなんです」
ヒマ「特級畑じゃないほうがシャブリらしいんですか?」
店長「特級畑など標高の高い斜面に行くと、ギュッと引き締まった骨格のワインになるので、『わかりやすいシャブリらしさ』からは離れて、あとでお話するムルソーやモンラッシェのように感じてしまうこともあります。だから、純粋なシャブリらしさを味わいたいなら、あえて下のクラスを飲むというのも面白いんですよ」
ブルゴーニュの白ワインその3:コート・ド・ニュイ

ヒマ「さて、世界最高のピノ・ノワール(赤ワイン用品種)の産地として知られるブルゴーニュの『コート・ド・ニュイ』地域ですが、ここでも白ワインは造られているんですか?」
店長「はい。ただ、コート・ド・ニュイには白ワインの特級畑(グラン・クリュ)は一つもありません。ブルゴーニュのワインには複雑なルールがあり、赤ワインの産地として名高いシャンボール・ミュジニー村などでは、実は白ワインの村名すら名乗れないんです」
ヒマ「へー! そうなんですね。正直ルールがややこしすぎるのですが、そうして伝統や品質を守っているわけですね」
店長「そうですね。そしてコート・ド・ニュイにも素晴らしい白ワインは存在するんです。北端のマルサネはロゼが有名ですが、冷涼なのでキュッと引き締まった美味しい白ワインが造られます」

ヒマ「トップ生産者のドメーヌ・デュジャックが造る『モレ・サン・ドニ』の白ワインなんてのもあるんですね」

店長「デュジャックのモレ・サン・ドニ・ブランは、フランス大統領府(エリゼ宮)の晩餐会でもオンリストされるような特別なワインです。味わいは、そうだなあ……まるで『真珠』のようです。円形でまろやかな実在感があり、樽も上品に効いていて、ムルソーなどの銘醸地と区別がつかないほどの圧倒的なレベルを誇ります」
ヒマ「うーん、飲んでみたい!」
ブルゴーニュの白ワインその4:コート・ド・ボーヌ

店長「そして、いよいよブルゴーニュにおける白ワインの本場『コート・ド・ボーヌ』です。ここで絶対に覚えておきたいキーワードが、『コルトン・シャルルマーニュ』、『ムルソー』、『モンラッシェ』の3つです」
ヒマ「白ワイン界の飛車・角・王のBIG3みたいな名前ですね。とくに『ムルソー』の名前は有名ではないでしょうか」
店長「ですね。まずはコルトン・シャルルマーニュから。ブルゴーニュの格付け最高峰『特級畑(グランクリュ)』と呼ばれる産地のひとつで、標高が高く石灰質が多いため、『石を舐めているみたいに硬い(味わいに親しみやすさがないといった意味)』と評する人もいるくらい、塩味とミネラルが圧倒的なワインです。個人的には親しみやすさもちゃんとあると思います」

ヒマ「そして、ムルソー。これはどんな特徴ですか?」

店長「コルトン・シャルルマーニュと異なり、ムルソーというのは村の名前。そして、私が若い頃に先輩から『赤より濃い白があるんだよ』と教わったのがムルソーです。ムルソーには特級畑がないのですが、樽がしっかり効いていて、まるで干し芋や凝縮したドライフルーツのような力強い果実味と旨味があります。特級畑がないからこそ、造り手たちが次に紹介する『モンラッシェ』に負けまいと競い合っている、白ワインの一つの完成形とも言えるワインです」
ヒマ「最後に、モンラッシェ。これはピュリニー・モンラッシェ村とシャサーニュ・モンラッシェ村にまたがる特級畑ですね」

店長「モンラッシェは、石灰が多く、しっかりとした酸が乗っていて、熟成しても全くダレません。世界で一番高いシャルドネであり、ブルゴーニュの造り手たちが皆『このレベルに達していなければならない』と目指す、まさにスター選手です」
ヒマ「ピュリニー・モンラッシェ、サシャーニュ・モンラッシェとラベルに書かれた『村名』のワインも素晴らしいものがたくさんありますよね。お値段は少々高いですが……!」

店長「はい、でもここで紹介した産地はどれも、一度は飲んでいただきたいです」
ブルゴーニュの白ワインその5:シャルドネ「以外」のブルゴーニュ

店長「ここでちょっと変化球も交えておきましょうか。シャルドネが圧倒的に有名なブルゴーニュですが、実は他の品種も一部使われているんです。まずはシャブリのすぐ近くにあるサン・ブリ村。ここはブルゴーニュで唯一、ソーヴィニヨン・ブランという品種の使用が認められている村です」

ヒマ「ソーヴィニヨン・ブラン! 同じフランスでもボルドー地方ややロワール地方で有名な品種ですね。どんな味なんだろう」
店長「論より証拠、ちょっと飲んでみてください」
ヒマ「これはうまいですよ。白い花やグレープフルーツのようなソーヴィニヨン・ブランらしい香りがしつつ、どこかブルゴーニュらしい蜜っぽさも感じられる」
店長「まるでシャルドネのようなソーヴィニヨン・ブラン。ぜひ一度味わっていただきたいです。そしてもうひとつ紹介したいのがブーズロンという村です」
ヒマ「正直、ちょっとマイナーな村というイメージです(笑)」

店長「たしかにそうかもしれませんが、実は大きな特徴があるんです。それは、ブーズロンを名乗るワインはアリゴテという品種であるということです。昔はアリゴテといえば酸っぱくて、『キール』というカクテル(白ワインとカシスリキュールを割る)にして飲むのが定番でしたが、今は温暖化の影響で普通に飲んでも驚くほど美味しいワインになっています。ちなみにキールという名前はこのカクテルを考案したキールさんという市長の名前に由来しています」
ヒマ「いいトリビアですね。アリゴテはちょっぴり地味な品種ですが、近年素晴らしいワインが増えている印象が私にもあります!」
ブルゴーニュの白ワインその6:ブルゴーニュ南部の地域(マコネ)

店長「最後に、ブルゴーニュでも南に位置するマコネ地区をご紹介します。ここは安くて美味しいシャルドネの産地だったのですが、近年はドメーヌ・ルフレーヴやコント・ラフォンといった北部の超一流生産者がこぞって進出してきて、一気にレベルと価格が上がっています」

ヒマ「需要と供給のバランスが変わりつつあるんですね。マコンは安うまブルゴーニュ愛好家の聖地だったのに……!(涙)」
店長「いえいえ、まだまだ安くておいしいものが探せますので安心してください。さて、このマコネで知っておきたい産地の筆頭がプイィ・フュイッセ。なんと2020年(※リリースは2022年〜)から、マコネ地区で初めてとなる『一級畑(プルミエ・クリュ)』が22個も誕生し、マニアの間で大きな話題になったんです」

ヒマ「一気に22個も! それだけ品質が高いということですね。他にも面白い村はありますか?」
店長「マコネでは『ヴィレ・クレッセ』という村もぜひ覚えておいてください。実はここ、毎年必ず『貴腐菌』がつくという特殊な産地なんです」

ヒマ「貴腐ワインというとボルドーの甘口ワインなどが有名ですよね。独特の芳醇な香りが特徴。 ブルゴーニュでは珍しいですね」
店長「ブルゴーニュ全域の規定では貴腐菌のついたぶどうは取り除くのが望ましいとされているんですが、ドメーヌ・ボングランという造り手は、あえて貴腐菌を残し、2017年からは法的に『ドゥミ・セック(半甘口)』や『ルブルーテ』といった糖分を残したシャルドネを造ることが認められたんです。ルブルーテというのは、秋の終わりにぶどうが野ウサギの毛並みのように茶色くなるまで待つ『遅摘み』のキュヴェです」
ヒマ「ブルゴーニュなのに甘口のシャルドネかあ。それはワイン会に持っていくと確実に盛り上がりそうですね。安うまの印象のあるマコネ地区にも、意外な多様性があることがわかりました」
ブルゴーニュの白ワインは、世界を巡る旅の終着点

ヒマ「北のシャブリから、南のマコネの甘口まで……。今日お話を伺って確信しました。もし『人生で一生に一つの白ワイン産地しか飲めません』と言われたら、白ワインは絶対にブルゴーニュを選びます。ブルゴーニュのなかで多様性が半端ないですからね」
店長「泡もあるし、ソーヴィニヨン・ブランやアリゴテもあるし、シャルドネに至っては『干し芋』のようなムルソーから『石を舐める』という人もいるコルトン・シャルルマーニュまで、本当に幅広いですよね」
ヒマ「ボルドーやシャンパーニュも素晴らしいですが、ブルゴーニュの白ワインは選手層が厚すぎます(笑)。みなさんもぜひ、好みの『ブルゴーニュの白』を探す旅に出てみてください!」
ワインマーケット パーティ
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営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
URL/winemart.jp
Photos & Text: Hima_Wine
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