ちゃんみなインタビュー「もう一度、素を見せるとき」 | Numero TOKYO
Fashion / Feature

ちゃんみなインタビュー「もう一度、素を見せるとき」

ツアー、結婚、出産、ガールズグループHANAのプロデュース。公私ともに大きな変化を経て、輝きを増すちゃんみな。自身の新アルバムを制作中という彼女の次なるクリエイションに迫る。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年3月号掲載)

ジャケット¥346,500 トップ¥396,000 パンツ¥180,400 イヤリングセット¥88,000 ベルト¥62,700(すべて予定価格)/Balenciaga(バレンシアガ クライアントサービス)
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──前作『Naked』から約3年、出産とHANAのプロデュースを経て、現在制作中の新アルバムでは制作スタイルに変化はありましたか。

「変わらないつもりでも、やっぱり変化しました。というのも、HANAがいることが大きくて。彼女たちの楽曲も全部手がけているので、自分のアルバムは必然的に『ちゃんみならしさとは何か』を追求した表現になりそうです。そういう意味でも、新アルバムは『ちゃんみなとは一体どういう人間なのか』を理解してもらえるものになると思います」

──2、3年おきにコンスタントにアルバムを発表していますが、今回もリリース日を決めて制作を?

「今回は焦りたくなかったんです。ずっとHANAの制作をしていたので、自分のアルバムを同時進行するのはどうしても無理があったんですね。私にとって音楽は、私生活あってこそ。私生活を犠牲にすると音楽が作れないから、まずちゃんと“生活”をさせてほしいとスタッフと話し合いました。だから、自分の気持ちにフィットするような曲作りをできている感覚があります」

──生活がクリエイションの源に?

「そうですね。娘と公園に行ったり、家の中で遊んで笑い合ったり。一緒にお風呂に入って、どんなに忙しくても一緒に眠る。それで朝は保育園に連れていく。ちゃんとオフの状態を作って娘と、そして家族と過ごしたり、友達と会ったり。パートナーは韓国に住んでいるので、両親に手伝ってもらいながらですけどね」

“ギャグセン”とアートの融合

──2026年はデビューシングル「未成年」から10年目へと入りますが、これはひとつの章の完結、それとも新たな章のスタートでしょうか。

「継続のひとつのポイントになると思います。10年目にやりたいことは以前から決めていて、まだお知らせはできないんですが、形にしたいし、ライブツアーもありますし。ただ、23年から続いたツアーシリーズ『AREA OF DIAMOND(以下、AOD)』は、2月からの『AOD4』をもってピリオドを打ちます。次はライブの自由度をもう少し上げてみようかなと思っていて。音楽にはルールはないし、ライブは私の自由なAREAですよね。私は演出も自分で手がけているんですが、いわゆるライブの構成にこだわらずに、でもデジタル社会の今だからこそ、生で聴く意味や会場にわざわざ足を運ぶ価値があるライブの良さを提示できたらいいなと考えています」

──ライブツアーは18〜21年の「THE PRINCESS PROJECT(以下、TPP)」シリーズ、23年からは「AOD」シリーズでした。ツアータイトルが変わるときは、ご自身の中でも活動のテーマが転換する時期なのでしょうか。

「『AOD』を始める前に、私の中でも変化があって。デビューしてからそれまで、私のファンの子たちの肩身が狭そうだなと思うことがあったんです。『ちゃんみなが好き』と口に出しにくいんだろうな、と。デビュー当時、『練馬のJKラッパー』とかいろんなラベルが貼られて、イロモノ扱いされることもあった。そもそも名前がひらがなだし、私を知らない人は『何をやってる人?』という状態。大人たちも私の話をまともに聞いてくれなかったんですよ。『若い子が何を言ってるの?』って。

私は私で、当時、尖り散らかしていたんですけどね。でも『TPP』シリーズが完結したあたりで、私を取り巻くものが大きく変わったと感じました。大型フェスに出演したとき、会場に入場制限がかかるほどたくさんの人が見に来てくれて、一番奥にいる人まで私に手のひらを見せてくれた。そのときに初めて『私、認められたんだ』と感じました。ファンの子たちが『ちゃんみなが好き』と堂々と言えるタイミングが来たと確信して、『AOD』を始めようと思ったんです」

──それはアルバムでいうと『ハレンチ』と『Naked』の間頃?

「はい。その頃、自分に自信がついたんですよね。『私の好きなように表現していいんだ』と思えた。本当の自分を見せられるぐらい成長したから、素を出してしっかり生きてみようと。それでステージ上でメイクを落としたんです。『素敵』って『素に敵なし』だと思っているんですね。本当の自分をさらけ出して嫌われたら仕方ない。取り繕うほうが意にそぐわない。それから、だいぶ『変な人』になったと思います。でも本来、私はこんな感じです」

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「違和感」から曲が生まれ、「責任」が背中を押す

──今、クリエイションにおいて大切にしていることは?

「“ギャグセン”の高さです。新アルバムのジャケットも一歩間違えたらギャグになるけれど、それがアートと交差するとき、クリエイティブが爆発するような瞬間があるんですよね。本当に紙一重なんですけど、どれだけギャグセンが高いものを世に送り出せるかを追求したいんです。『面白い』ってたくさん種類があって、なかには人を傷つけたり、不快にさせるものもあるけれど、私はそれをいいと思わない。どれだけルードにならず、いかに面白さとアートを融合させるか。先行シングル『WORK HARD』もそうですけど、ライブの会場が『わぁっ』と沸いて、みんながハッピーになる、その瞬間を共有したいと思っています」

──クリエイションの原動力はどこから湧いてくるんですか。

「すべては『違和感』から始まります。今回のアルバムもそうですね。ガールズグループオーディション『No No Girls』が始まった頃から、『ちゃんみな先生』とか『ちゃんみな様』と呼ばれることが増えたんです。私は別にあがめられたいわけでもないし、先生と呼ばれるほどの年齢でも、経歴でも、芸歴でもない。美化されすぎているんじゃないかと違和感がありました。

そこから広げていって、かなり生々しい表現になりそうです。もちろん、ギャグセンを交えながらですけどね。もしかしたら今、もう一度、『素』を見せる段階なのかもしれません。ステージでメイクを落として、私とみんなの間にある壁を取り払ったら、なぜかキラキラのフィルターがかかってしまった。それを外す作業をしないと。私のファンの人にも、周りにいる人にも、できるだけ本来の『ちゃんみな』の認識であってほしいと思っています」

──出産を経験すると、母性が崇拝されすぎることもありますよね。

「すべての母たちはあがめられるべきですよ。子どもを産んで育てるって本当に大変ですから。その一方で『母』という言葉がプレッシャーになることもありますよね。『私』じゃなくて『お母さん』にならなくちゃ、優しくなくちゃいけないし、良い母であらねばって。母は偉大だけど、そこを強調しすぎないでほしいとは思います」

──出産・子育ては創作に影響しましたか。

「私にとって音楽は日記みたいなものなので、そこはあまり変わりません。『i love you』という曲は10月期の金曜ドラマ『フェイクマミー』の主題歌でもあったし、この純粋な想いを残しておきたいという気持ちもあったけど、だからといって、作品全部がガラッと変わるということでもなくて。何かを作るのは『タトゥー』を入れることに近い感覚です。だから私はタトゥーだらけ」

──身も心も削りながら、ずっと音楽を作り続ける理由は?

「クリエイションは私にとっての命綱です。これがなかったらとっくに死んでいたかもしれません。音楽を作ることで私でいられるし、今は『責任』もあります。定年退職した両親のこと、娘のこと、HANAのこと、『No No Girls』に参加してくれた子たちと今も連絡を取り合っているので、彼女たちの未来も。私の肩に『責任』がドンとのしかかっていて、それがエネルギーになっているわけじゃないけど、責任感から作り続ける部分もあると思います」

──ライブのMCで「私が死んでも曲は残る」と話したり、インタビュー記事でも「死から逆算して考える」と答えていましたが、いつも終わりへの意識が?

「人はいつか死にますから。『命日』は仏教(浄土真宗)で『仏としての命がもらえた日』という意味の言葉なんですって。日本は死んだら数え年で一歳増えるんですよね。そういうのも興味深いなと思って。死に対して恐怖心はないんです。好奇心があるというと誤解を生みそうですが、先に逝った親族や友人に会えると思うと楽しみですし。終わりを意識することで、今やるべきことがはっきりするんです。仕事ばかりしていても、もったいない。私が好きなこと、今やっておきたいことはなんだろうなって。たとえば旅行でも、死ぬまでに見たい景色を優先して行き先を決めています。エジプトに行ったり、今は最北端の街に行きたくて。余命は誰にもわからないから、毎日ベストを尽くそうと思って生きています」

──5年後、10年後の未来にやりたいこと、続けていきたいことは?

「音楽は自分と切っても切り離せないものだから、曲は作り続けていると思います。ただ、音楽しか知らない人間にはなりたくないんですね。この間も、自動車税の高さに驚きました。保育園の入園にもこんなにたくさん書類が必要なのかって。でも、そうやって地に足をつけて、生活することはちゃんと続けていきたい。それから、ほかのアーティストのプロデュースも続けられたら。HANAはいつかセルフプロデュースができるように育てているので、ある程度、私の手を離れるかもしれませんが、息苦しさを感じて生きるミュージシャン、クリエイターに対して、私が共感できるところは手を差し伸べてあげられるくらい、懐が広い人間になれたらと思っています」

Photos:Yusuke Miyazaki Hair:Yuta Kitamura Makeup:Yuko Nozaki Inteview & Text:Miho Matsuda Fashion Editor:Aika Kiyohara Edit:Mariko Kimbara

Profile

ちゃんみな Chanmina ラッパー、シンガー。作詞作曲、トラック制作、ステージ演出などすべてセルフプロデュースで行う。2024年に第一子を出産。同年、BMSGとタッグを組み、ガールズグループオーディションプロジェクト「No No Girls」のプロデューサーを務めた。同プロジェクトから生まれたガールズグループ、HANAのプロデューサーとしても活躍。自身の活動の幅を広げ続けている。26年春、最新アルバム『LEGEND』をリリース予定。
 

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