能にインスピレーションを受けた音楽劇『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』 | Numero TOKYO
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能にインスピレーションを受けた音楽劇『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』

過去、何人もの演劇人たちが「演劇を突き詰めると能に行きつく」ということを語っている。

極端に抑制された動きで、ただその舞台に「居る」ということ、此岸と彼岸のギリギリの部分をいく登場人物など、現存する世界最古の舞台芸術と言われる「能」には、演劇の究極型があるのかもしれない。

演劇カンパニー「チェルフィッチュ」を主宰し、国際的に活躍する演劇作家の岡田利規が2月に上演する音楽劇『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』も、能に触発されて生み出された作品だ。

この作品は、そもそもドイツ公立劇場の名門、ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品として創作、2017年に発表され、話題を呼んだ「NŌ THEATER」の日本版進化形でもある。「挫波(ザハ)」と、「敦賀(つるが)」の2本立てで上演された前作は、第25回鶴屋南北戯曲賞と、第29回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。2021年には出版した戯曲が第72回読売文学賞を受賞している。

「未練の幽霊と怪物」は、岡田によれば「社会と歴史が生み出してきた犠牲者の未練と怪物を直視しない、ということに抗う」ために創作された音楽劇だ。第2弾となる今回も目に見えないものや霊的な存在がその思いを語る「夢幻能」の構造を借りた作品となる。

埋め立てが続く辺野古に生息していた「珊瑚」をシテ(能の中でメインとなる役)とする作品と、社会の獰猛な渦に翻弄された女性に主眼を置く「円山町」の2本立てで構成されていく。

「シテ」は、2020年の東京オリンピックでソロパフォーマンスを披露、多彩な活動を展開するアオイヤマダと、世界的ダンスパフォーマンスグループs**t kingzのメンバーとして活躍し、舞台や映像などでのソロ活動も行っている小栗基裕が演じる。「シテ」が彼岸の存在とすると此岸側の存在となる「ワキ」には、ブレイクダンスをメインとするダンスチーム「KOSÉ 8ROCKS」に所属する七瀬恋彩、沖縄出身で舞台CMなどでも活躍する清島千楓。シテについての謂れを語る「アイ」としては、第一弾にも出演した片桐はいりが唯一無二の存在感を見せてくれるという。

音楽は前作に引き続き、内橋和久が担当。沖縄音楽よりも一段哀愁を帯びた奄美島唄を出発点に、ミュージカル「レ・ミゼラブル」への出演などボーダーレスな活躍をする里アンナが、岡田の紡ぎだす繊細な「謡」を、内橋の演奏に合わせて表現していくのも楽しみのひとつだ。

KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」― 』
作・演出/岡田利規
音楽監督/内橋和久
出演/アオイヤマダ 小栗基裕(s**t kingz)石倉来輝 七瀬恋彩 清島千楓 片桐はいり
謡手/里アンナ
演奏/内橋和久
公演日程/2026年2月13日(金)〜3月1日(日)
会場/KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>
チケット料金(全席指定・税込)/一般7000円 神奈川県民割引(在住・在勤)6300円 U24チケット(24歳以下)3500円 高校生以下割引1000円 シルバー割引(満65歳以上)6500円
公式URL/https://kaat.jp/d/miren2026
主催・企画制作/KAAT 神奈川芸術劇場

<兵庫公演>
公演日程/2026年3月7日(土)15:00、8日(日)13:00
会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

<新潟公演>
公演日程/2026年3月15日(日)13:00
会場/りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

<京都公演>
公演日程/2026年3月21日(土)19:00、22日(日)14:00
会場/ロームシアター京都 サウスホール

Text:Reiko Nakamura

 

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