活況を呈する日本のアートシーンで、いま注目のアーティストを紹介する連載。第二回は、アイロンビーズをピクセルに見立て、独自の表現を追求する現代美術家の沼田侑香。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年10月号掲載)
現実世界に現れたバグのインパクト

これは仮想か現実か? 歪んだデジタル画像が実体を伴い、目の前に現れ出たかのよう。
「コンピューターのバグやグリッチなど、モニターの中でしか起こり得ない現象を現実世界に配置することで、デジタル社会に入り込むような感覚になるのではないかと考えています」

公園で遊んだ幼少期に始まり、身をもってデジタル社会への移行を実感してきたという沼田侑香。自らの体験をふまえ「時間の経過や、目で実物を見たり、物質に触れたりすることの重要性を軸に置き、アナログとデジタルを行き来する時代の流れを反映したい」と語る。その表現を問うなかで出合ったのが、おもちゃ売場のアイロンビーズだった。

「ピクセルの表現は画像の拡張子であるJPEGと同じ見え方のため、モニターから現実世界に取り出すことができる状態だと考えます。一粒ずつビーズを並べる工程も時間がとてつもなくかかる行為ですが、作品を見る側も、現実世界でのリアルな時の流れを感じることができるのでは」
その言葉どおり、風刺の効いたモチーフが緻密で膨大な手作業と結び付き、見る者を惹き込む。
「すべてが自動化した100年後の未来から、現代の時代性を振り返ってもらえるような作品になればいいなと思っています」
Select & Text:Keita Fukasawa Edit:Miyu Kadota
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