セクシュアルウェルネスを発信する織田愛美インタビュー「“セルフプレジャー”という民主主義」
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セクシュアルウェルネスを発信する織田愛美インタビュー「“セルフプレジャー”という民主主義」

忙しさや他者の期待に追われる日々の中でいつしか見失ってしまう自分の「心地よさ」。音声コンテンツ『ハダカベヤ』をはじめ、セクシュアルウェルネス&ライツの発信を行う織田愛美は「セルフプレジャーは自分の心と体と再びつながれる行為」という。それは外からの評価や社会規範にとらわれず、快楽を自分の手に取り戻すための小さな革命だ。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年1・2月合併号掲載

──織田さんは、IMALUさん、なつこさんとの音声メディア『ハダカベヤ』で、セルフプレジャーやオーガズムなど、セクシュアルウェルネスについて語ることが多いですね。

「そうですね。さまざまなテーマで語っていますが、実はセルフプレジャーについては、3人ともスタンスが少しずつ違うんです。私はセルフプレジャーについてオープンに話すほうですが、なつこはこれまで深く掘り下げて考えてこなかったタイプ。IMALUは積極的には話したくないタイプ。この違いがいいと思っていて。3人がずっとノリノリでセルフプレジャーを語っていたら、リスナーさんを置いてけぼりにしていたかもしれない。語らない自由もあるし、いろんな人がいていい。それを示せる場所にしたいと思っています」

──織田さんは以前から性について話すことに抵抗はなかった?

「最初はあったと思います。でも中学生で初めて彼氏ができたとき、母が当たり前のように『性交渉は大人の行為であり、責任を持ってプロテクションすること』と淡々と教えてくれたんです。その体験が、性=恥ずかしいものではなく、自然なこととして受け止められるようになったきっかけでした。あと、本を読んだり、人の話を聞いたりするうちに、性欲は隠すものじゃないと思えるようになったのも大きいです。知識を得ることで自信がつき、パートナーに自分の意思を伝えることも怖くなくなったんですよね。セックスは二人でつくっていくもの。語り合うほどに関係が良くなったという経験もあり、性を語ることをポジティブに受け止めてきました」

──パートナーと性について話すときに大切にしていることは?

「正しさではなく、正直さに重点を置いて話すようにしています。性欲や性的嗜好に正解はないし、何に興奮を覚えるかも人それぞれ。だから『普通こうだよね』ではなく『私はこう感じているよ』と素直に伝える。そして『あなたはどう思う? どうしたい?』と尋ねながら、互いに発見を重ねていく感じです。あと、話す前は、あなたとのセックスが好きで、もっと良くしたいと思っていることを伝えます。まずは相手が安心して話せる空気をつくることもマナーかなと」

──少しずつタブー観が薄れているものの、いまだ多くの女性が「自分の快楽」について語ることに抵抗を感じやすいですよね。そのハードルはどこにあると思いますか。

「女性は慎ましくあるべきという社会的な物差しが、今も根強く残っているからかなと思います。性について積極的に話すことが、はしたないとされてきた風潮もありますし、そもそも女性に性欲があるという本能を否定して、社会的ジェンダーの枠に押し込めた結果、語りにくくなってしまったのかなと。

以前『ハダカベヤ』でリスナーの方から『セルフプレジャーのやり方がわからない』というメッセージが届いたことがあって。確かに保健体育では教わらないから、そういう人もいるよねとハッとして。ただ、国連が定義する『性的健康』は自分の性や身体を理解し、主体的に扱うことも含まれています。その意味で、セルフプレジャーは性的健康と密接に関わっている。する・しないの自由はあるにせよ、知ることが大事なのかなと思ったし、あらためて性教育の重要性を感じました」

──織田さんはセルフプレジャーをどのように捉えていますか。

「自分を取り戻す時間かな。儀式というと大げさですが、心と体を再確認する行為。自分を理解し、労わり、尊重する時間でもあります」

──「取り戻す」という感覚は、どういうところで感じますか?

「社会の中で女性が期待されることって、すごく多いですよね。働いて、自立して、子どもを産み、育て、いつまでも若々しくいるべき、とか。そんな理想を押し付けられながら生きていると、自分は本当は何が好きで、何が心地いいかがわからなくなる。セルフプレジャーは、誰にもじゃまされず、自分の感覚に集中できる時間。快楽を通して『私の体は私のもの』という、自分の体の自己決定権を再確認できる。最近ようやく、セルフプレジャーという言葉がポジティブに語られるようになってきたことは本当に大きな変化だと思います。快楽が女性の手に戻ってきたというか」

──織田さんの活動にもその考え方がつながっていますよね。

「はい。私はもともと、女性が自分のために下着を選ぶという感覚を広めたくてランジェリーブランドを立ち上げました。誰かを喜ばせるためではなく、自分の心と体を喜ばせるために下着を選ぶ。その先に女性の主体的な生き方があると思っています。性教育やジェンダーの話題って、どうしても難しくなったり、堅苦しく聞こえがちだけど、ファッションやアート、カルチャーの中に自然に溶け込めば、もっと日常的に考えられるようになると思うんです。性を知ることは特別なことじゃなくて、生き方そのものを見つめ直すこと。そんなメッセージをこれからもいろんな活動を通して伝えていきたいです」

 

『ハダカベヤ』
タレントのIMALU、マーケティングプロデューサーのなつこ、メグ(織田愛美)の同世代3人が発信する音声コンテンツ。「世の中の価値観をアップデートする」ことを目的に、女性のウェルビーイングとエンパワーメントにつながる話題をピックアップし、独自の視点でキュレーションされた音声コンテンツを週1回配信している。

配信はこちらから

Edit & Text:Mariko Uramoto

Profile

ブランディング・PR。カルチュラルマーケター。2015年「株式会社XY」創業。“下着で性教育”を標語にランジェリーブランド「Albâge Lingerie」設立。大阪・関西万博のヘルスケアパビリオンでのトークショーやフェムテック関連のイベントMCなどを通して、社会課題を日常の言葉で語る試みを続けるほか、企業から個人に至るまでブランディングやマーケティング、プロデュース業務なども行う。
 

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