「性の話題は恥ずかしいことでもタブーでもない」そう語るのは、モデルとして活躍しながら、性教育の普及活動にも取り組む鈴木えみ。自身が代表を務める団体「Family Heart Talks」では、親子向けに性教育イベントを行い、誰もが“性を自然に語れる環境づくり”を目指している。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年1・2月合併号掲載)

──性教育の発信を始めようと思ったきっかけは何でしたか?
「来年、中学生になる娘がいるのですが、彼女が小さい頃から自然な会話の中で体の仕組みやプライベートゾーンのルールなどの話をしていて。というのも私自身、女性の体や生理の話をすることに抵抗がなく、自分の子どもにきちんと伝えておきたいと思っていたから。娘が小学生になったとき、学校で本格的な性教育が始まるかなと思っていたのですが、実際はほとんど触れられていないとわかって。学校に任せていたらあっという間に彼女は大人になってしまう。それで『これは家庭でしっかりやるしかない』と。
ただ、彼女の成長に合わせてどういう話をしていくべきか、性交渉についてどう説明したらいいか迷うこともあって、本屋に行ったんです。そこで選んだ絵本をSNSに投稿したらすごい反響があって。『こんな本があるなんて知らなかった!』『人に聞けなかったから助かる』という声が届いたんですね。私のように困っている人がたくさんいると知って、“自分にできることをやろう”と今の活動を始めました」
──お子さんに体のことや性にまつわる話をするときに意識していることはありますか?
「あくまで知識として説明しています。例えば、セックスについて聞かれたら『精子が確実に卵子に届くように、お母さんとお父さんの体をくっつけるんだよ』というふうに。こう話すと、子どもも特別なことではなく自然なこととして受け止められる。伝え方に困ったら、ユネスコが編集を手がけた性教育の国際標準を学べる入門書 『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』や中学校の教材にも使われている『コロカラBOOK』などの本を参考にしながら、フラットに話すようにしています。親が恥ずかしがったり、躊躇ったりすると、子どもが『いけないことを聞いたのかな?』と感じてしまう。でも、誰かを好きになる気持ちや、触れたいと思う気持ちは素敵なこと。だから、性の話をタブー視しない雰囲気を大事にしています」

──鈴木さんが主宰する「Family Heart Talks」ではどんな活動をしていますか?
「2024年から定期的にイベントを開催していて、3歳から8歳のお子さんと保護者を対象に、講演とワークショップの二部構成にしています。前半では産婦人科医や助産師さんなど専門家を招き、『性教育は何歳から?』『どう伝える?』といった質問に答えるトークを行っています。後半では、子どもたちと一緒に“NO・GO・TELL”の練習をします。NO=嫌なときはちゃんと声に出して言う。GO=怖いと思ったらすぐ逃げる。TELL=信頼できる大人に話す。この3つを覚えることで、『自分の体を守る力』を身に付けてほしいと思っています」
──活動を続けて、感じた課題は?
「イベントに来てくださるのは、もともと関心の高い方。けれど、性教育は特定の家庭だけが進んでいても意味がありません。社会全体で意識を上げていかないと現状は変わらない。だから、今後はハードルをいかに下げ、関心のない人に興味を持ってもらえるかが課題です。大きな公園で行われているフェスのように、日常の延長線上で性教育に出合える場所が増えたらと思うのですが、『子どもが性に興味を持ってしまい、性体験が早まるのではないか』とネガティブに感じる方がいたり、宗教によって性教育をタブー視する家庭もあり、クレームが来ることを懸念する施設や行政の都合で実現には高いハードルがあります。
また、男女を分けて性教育を行う風潮にも違和感があって。私は『全てのジェンダーで一緒に学ぶこと』が何より大切だと思っています。自分と違う性や体について知ることが、思いやりや理解につながるから」
──親世代が十分な性教育を受けていないことも課題に感じます。
「そうですね。性教育は子どものためだけでなく、大人にとっても心と体の健康を守るための知識だと思います。アップデートしないままだと、自分の中の“当たり前”で行動してしまい、意図せず誰かを傷つけてしまう可能性もある。だから『相手が何を感じ、どう考えているか』を知ろうとする姿勢を子どもと育んでいくことが大事なのかなと。性教育の輪が広がれば、自分の子どもが危ない場面に遭遇したとき、友達や周りの人が正しい知識を持って助けてくれるかもしれない。
なので、家庭内だけでなく、日常会話の延長で周りの人と少しずつ言葉にできるといいのかなと思います。ただ、無理に押しつけて、『もう聞きたくない』と思われたら意味がないので、何げない会話でできることからでいいのかなと。さじ加減が難しいところではあるのですが、やっぱりそれが安心して生きられる社会への一歩になると思います」
──鈴木さんが目指す社会は?
「『性教育』という言葉がなくなること。義務教育に自然に組み込まれ、誰もが当たり前に心と体のことを知っている社会になればと思います」
Edit & Text:Mariko Uramoto
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