2025年も、素晴らしい音楽が次々と生み出された。Numéro TOKYO注目のクリエイターに、その人が超・個人的に思い入れのあった音楽アルバムBEST3と、その注目ポイントを聞いてみた。新たなお気に入りの一枚を見つけて。

第5回目は、振付演出家であり、エンタメ産業カウンセラー、Podcast番組『我々は安心してリアリティーショーが観たい』のMCなどでも活動中の竹中夏海。
1.lyrical school『LIFE GOES ON e.p.』
時代に応じてアップデートされ続けてきたアイドルユニット
竹中が1枚目に挙げたのは、日本のヒップホップアイドルユニット、リリスクことlyrical schoolが2025年7月にリリースした『LIFE GOES ON e.p.』。
「私が唯一10年以上『推し続けている』と胸を張って言えるグループなので当然新曲は毎回チェックしてるのですが、イントロを聴いた瞬間に『待ってたやつ!』とうれしくて目がくらみました。
この10年でフェミニズムを学び、自身の倫理観が大きく変化したにもかかわらず、今もなおリリスクを推し続けられているのは、グループそのものが時代に応じてアップデートされ続けてきたからだと思います。それは奇跡のようなことです。
アイドル業界では『大人すぎる』と言われがちな年代のメンバーたちが活躍の幅を広げ、恋愛的な眼差しが前提とされがちな風潮の中で、ごく自然に男女混成グループへと転換する選択をしたリリスクを、誇りに思っています。
楽曲『朝の光』は、誰もが経験したことのある『夜の終わり朝の光』を思い出させてくれる一曲。8人もいるメンバーの多様な声質が、まるで最初からそこに置かれる運命だったかのように『ここしかありえない』場所に収まっているところが好きです」
2.KPop Demon Hunters Cast『KPop Demon Hunters』
実は、排外主義や差別による分断を描いた意欲作
次にピックアップするのは、Netflixのアニメーション映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のサウンドトラック。
「子どもがやたらと『けぽっぷながして』と言うので、なにかと思ったらNetflixのこれでした。はじめは、子どもが夢中になっている間に仕事や家事が進む、ただただありがたい存在でした。
けれどもよく観てみると、排外主義や差別による分断を描いた意欲作であることに気づき、私自身もすっかり引き込まれました。
楽曲一つひとつの強度が高く、単なる映画のサウンドトラックとしてではなく、K-POPアーティストのアルバムとして成立している点も大きな魅力です。
なかでも『Soda Pop』は映画の中では敵役が歌う曲ですが、ヴィランのキャラソンの系譜の中でも、群を抜いて爽やかでポップな一曲。人心掌握力に長け、人々を惹きつけながら惑わせていくという物語設定に、音楽そのものが確かな説得力を与えていると思いました」
3.ohayoumadayarou『そこにないもの』
“他者とのバウンダリー”の視点を持ったリリックに感嘆
最後に紹介するのは、竹中の友人であり、Podcast『我々は恋愛リアリティーショーが観たい』でタッグを組むchelmico・レイチェルのソロプロジェクト、ohayoumadayarouの1st EP『そこにないもの』。
「友人のちぇる(レイチェル)が『新曲できた!』と送ってくれた『惑星』はフックがキャッチーですぐ口ずさめてしまうところなどはもちろんなのですが、<そっか僕らは惑星だからしょうがないよね 焦らないさ 追っかけてたんだっけ逃げていたんだっけ わかんなくなったな どっちだっていいか>というリリックが、ものすごく、他者とのバウンダリー引けていてすごいな、超彼女らしいな、と思います。(感想が友人すぎる)
インスタのストーリーで『どう考えてもNHKの良質なドラマのEDじゃなきゃおかしい』と投稿したら、『実はメロディのラインは天てれ感を意識したのでけっこう当たってる』と言われました。けっこう当たっていた。
ちぇるは水面はごく穏やかなのに水深がものすごく深い、駿河湾のようなアーティストです(桜エビを採りにいこう)」
TBS Podcast『我々は安心してリアリティーショーが観たい』

振付演出家の竹中夏海とラップユニットchelmicoのレイチェルが新たにお送りするポッドキャスト番組『我々は安心してリアリティーショーが観たい』。
「リアリティショーをはじめ、あらゆるエンタメを『安心して観たい』『ヒヤヒヤしながら観たくない』という視点で話している。想像以上に作り手の方々も聴いてくださっているので、日本のエンタメの風向きにほんの少しでも貢献できたら良いなと思います。女性やセクシュアルマイノリティの方など、日常で声をあげることに勇気が必要な人たち、声をあげても掻き消されやすい人たちのセーフティゾーンのような場所を作りたい、と思ったのがきっかけです。25年末に初めて行ったトークイベントは優しくあたたかい連帯感に包まれ、私にとっても一年間のご褒美のような空間になりました。2月21日には大阪で二回目のトークイベントがありますので、会場でも配信でも気が向いたらぜひご参加ください。連帯してこ〜」
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Text:Natsumi Takenaka Edit:Mariko Kimbara
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