
開館5周年を迎えた弘前れんが倉庫美術館にて「杉戸洋展:えりとへり / flyleaf and liner」が開催されている。2026年5月17日(日)まで。
杉戸洋は現代日本を代表する画家のひとり。1990年代から作品発表を続け、小さな家、船、果物、木々や雨粒など、身近なものや自然を描いてきた。本展では初期から最新作までの絵画を中心に作品が紹介され、弘前れんが倉庫美術館ならではの展示が行われている。

「えりとへり/ flyleaf and liner」と題された本展では、余白に目をむけているという。たとえば絵画の裏側、カンヴァスの周りや裏側に貼られた紙や木片。本の表紙と本文の間にある「あそび紙(flyleaf)」や、洋服の「裏地(liner)」なども。すぐには気がつかないけれど、どこにでもあるもの。身近な場所に、たくさんの「えりとへり」がある。
「”ライナー”というのは服の内側にあるもので、あれをつけるとつけないとで、ハリや形が違ってくるし、シワの形も調整できる。”襟(えり)”にもいろんな形と構造がある。絵を描くために紙を使うとき、1枚の紙だけだと強度が必要になるので、裏に別の紙を貼ったり挟んだりという⽀持体作りがある。そうした準備は服づくりと変わらなくて、絵を描くというよりも、テイラーの真似事をしているような感覚がある。」と杉戸は語っている。

さらに本展では、杉戸からの呼びかけで、グラフィックデザイナーの服部一成がコラボレーターとして参加。服部は弘前れんが倉庫美術館のロゴなどをデザインし、2000年代前半にはファッション雑誌『流行通信』のアートディレクションも行っている。この時代の『流行通信』には杉戸は影響をうけたという。

本展の会場には、小屋が配置されており、服部がデザインした壁紙が貼られ、そして杉戸の作品が展示。雑誌『流行通信』も展示紹介されている。さらに会場には、様々な素材が並び、制作の過程が垣間見えるインスタレーション『えりとへりのテーブル』が広がる。

「縁(へり)というのは絵の境界の部分で、外の風景を見ていても、そういう縁にあたるようなところに面白さがたくさんあるのに、夢中で絵を描いているとつい忘れてしまう。そういう時、襟(えり)とか、はみ出している縁(へり)の部分を大事にすると、制作が復活してくる。だったら”えりとへり”だけあれば良いかというとそうでもない。そのバランスをなんとかしたいと考えつづけている。」その思考の一端も感じられるはず。

そのほか、同時開催の「コレクション展 2025-2026」では、弘前出身の奈良美智と2004年に制作した共作なども特別に展示。奈良美智とは杉戸が高校生の頃、美術予備校の講師として出会った。杉戸が10代の頃からの長い付き合いの二人の作品が、弘前で共に展示されている。
近年、杉戸は1990年代の自らの作品に加筆し、過去の自分と対話するような創作を続けている。杉戸洋のこれまで、そして最新の作品を、弘前れんが倉庫美術館ならではの展示構成でぜひ体感してほしい。

開館5周年記念 杉戸洋展:えりとへり/ flyleaf and liner
期間/2025年12月5日(金)〜2026年5月17日(日)
会場/弘前れんが倉庫美術館
場所/⻘森県弘前市吉野町2-1
開館時間/9:30〜17:00(2月28日まで)、9:00〜17:00(3月1日以降)
※入館は閉館の30分前まで
休館日/火曜日(ただし4月14日(火)、21日(火)、28日(火)、5月5日(火・祝)は開館)、12月26日(金) 〜1月1日(木)、5月7日(木)
観覧料/一般 1,500 円、大学生・専門学校生 1,000 円、高校生以下 無料
URL/www.hirosaki-moca.jp
Text:Hiromi Mikuni
