生活の道具としての器、アートとしての器。ガラス、陶磁、七宝焼…それぞれの技法で表現する作家たちの作品から奥深い創作哲学を読み解く。vol.3は、陶芸家 須藤圭太。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年10月号掲載)

「dress / torso」身体の動き、重心をトレースした形状にセットアップのような衣装を纏わせた。
陶芸家 須藤圭太|Keita Suto
器にファッションの自由さを吹き込み
陶芸の可能性を拡張する
陶器を身体に見立て、衣服やアクセサリー、タトゥーからインスピレーションを得て装飾を施す陶芸家、須藤圭太。「dress」シリーズは、まさに「装う」がテーマ。陶磁器の修繕技法の金継ぎをヒントに、黒い楽焼の器をあえて破損し、割れによって生じた傷を「不完全・コンプレックス」と読み替え、釘と糸で“ドレス”を纏わせることで、ポジティブなものへと昇華する。

「dress /vase」割れ、破損をより魅力的に見せるためどう糸を纏わせるかを考えながら制作。

「dress / tea bowl」傷口を縫合する糸のリズムをそのまま美しい装飾へと解釈。
「MYO」シリーズは、黒土をキャンバスに幾何学模様を刻み込み、モノトーンゆえの“白と黒どちらを見るか”という視覚の揺らぎを狙う。彫刻刀の刃が生むシャープな断面の強弱、緩急の連続は、まるでミニマルミュージックの反復のようなパターンを形成し、彫り痕の凹凸は触覚をも呼び覚ます。
須藤は、陶芸にファッションの概念を重ね、器とオブジェ、完全と不完全、強さと儚さ、相反する要素を共存させながら、その〈間〉に潜む美と自由を探る。

水平器で正確なグリッドを描いてから模様を下書きし、3種類の彫刻刀を使い分けて手彫りした「MYO / vase」
Photos:Ai Miwa Edit & Text:Masumi Sasaki
Profile
須藤圭太
Keita Suto
1982年、茨城県生まれ。2008年に東北芸術工科大学卒業、10年 京都芸術大学大学院修了後、スイスに渡り、Geneva University of Art and Design 修了。ヨーロッパの陶芸、アートについて知見を深める。帰国後、19年に茨城を拠点に工房を構え、ファッション、漫画、音楽などさまざまなカルチャーからの影響を反映させて作品制作を行う。
Instagram:@kata_suto
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