デコラティブなアイテムがランウェイを彩った2025年秋冬コレクション。ビジューの煌めきやフリルのリズム、アクセサリーの遊び心――。そんな華やかな表現が、モードの世界に帰ってきた。田中杏子が、装飾の楽しさを呼び起こす。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年11月号掲載)

まるで風に導かれてきたように、柔らかな質感が空気と溶け合う贅沢なドレス。シフォンが巧みに重なり、時にフリルとして表情を変え、豊かなディテールを作り出す。ドリーミーな気分で、物語の始まりに想いを馳せて。

今季スポーツマックスが打ち出したのは、hyper-reinvention=過剰な再創造。シンプルでありながらも精緻な技術が息づき、現代的なラグジュアリーを体現した。ドレスとバッグにあしらわれたレザーのフリンジは、しなやかな躍動感を描き出す。纏うことで完成する、計算された装飾の美。

ヨーロッパ中世の装いを彷彿とさせるルックは、時代の象徴だった構築的なシルエットや装飾を、現代的な感性で再解釈した。マスキュリンなジャケットはウエストを絞り、女性らしいラインへと昇華。理想の体型を強いたコルセットはビスチェとして生まれ変わり、階級を象徴するフリルはフェミニンなスタイルを語るディテールとして息づいている。ジェンダーを超えた、新たなクラシシズムを。

アンダーカバーが創立35周年を機に挑んだのは、ベストコレクションとして振り返る2004年秋冬シーズンへのオマージュ。ぬいぐるみ作家アン・ヴァレリー・デュポンからインスピレーションを得た当時のアプローチを落とし込み、パファーのドレスを制作した。樹脂とLEDライトを用いたユニークなヘッドピースは、そのコンセプチュアルな世界観を鮮やかに浮かび上がらせる。

繊細な手刺繍を施したツイードに、さまざまな形状のビジューがちりばめられたドレス。装飾的でありながら、グリーンやイエロー、ブラウン、シルバーといった落ち着いたトーンのクリスタルを採用することで、気品ある佇まいへ仕上げてくれる。

無垢な白のルックに映えるのは、花をかたどったレザーネックレス。大胆なアクセサリーは、取り入れるだけでその人の個性を際立たせる。スカートにも花びらのようなドレープがあしらわれ、キネティックアートのような動きが目を奪う。

シャネルの永遠のアイコンであるツイードは、色や素材、パターンなどの多様な再解釈を経て常に新たな可能性を提示してきた。ふわりと柔らかな生地はクラシックな風格と現代の軽やかさを調和させ、ミニドレスにケープを羽織ることでシルエットに奥行きをもたらす。

大胆なパワーショルダーとタイトなヘムが生み出す、逆三角形のシルエット。服のフォルムこそが主役となり、華美な柄やディテールを必要としない。力強い女性の、揺るがぬ自己表現。

ラッフル襟のように、首元にフリルが重なるミニドレス。赤いリボンがチャーミングなアクセントとなり、レトロな空気感を漂わせる。甘さのあるディテールでも、ブラックのトーンで大人のムードへ引き寄せて。

マットのスパンコールが幾重にも取り付けられたホワイトドレスは、フィービー ファイロのサードコレクション、“C”から。リュクスなディテールに伸縮性のある生地がドッキングされ、ヘルシーな引き算を叶える。ウェアラブルでありながら、ユニークなデザインを得意とするフィービーらしい一着。

メゾンの猫、「ル シャ デ ラ メゾン」の顔が大胆にあしらわれた、ヴァレンティノのロングドレス。繊細なスパンコールとレースが巧みに組み合わさり、息をのむような芸術性が光る。アレッサンドロ・ミケーレによる装飾主義全開のアプローチは、いつの時代も心をときめかせるロマンティックな魔法。
Photos:Greg Kadel Fashion Director:Ako Tanaka Hair:Tomihiro Kono Makeup:Kouta Model:Kristin Drab Edit:Shomi Abe Edit & Text:Makoto Matsuoka
