
金銀彩の幾何学模様で詩情漂う心象風景をうつわに表現する、陶芸家 高橋朋子の個展「Moon Pavilion」が、2025年12月25日(木)まで奈良県生駒市・緑ヶ丘美術館にて開催している。

陶芸家の高橋朋子は、千葉県の自宅横に構えた小さな窯で、独自の世界観の陶芸作品を作り続けている。北海道に生まれ、沖縄で作陶を学んだ高橋。自分なりの表現方法を模索していた大学院で磁器の先生に出会い、金箔銀箔を器に落とし込みながら焼き付けていくという『釉裏金彩』という技法を研究し始めた。幾何学的な金属箔に彩られた作品からは、夜の雲間に挿す月の光や、異国情緒溢れるサーカスのテントのような様々な物語が想起される。


「幾何学模様ですが、記号のようなものだと捉えています。曲線や直線が作る模様は、楽譜の音符という記号の連なりが生むリズムのように、集合体として自然の波長と重なるのではないかと。月の光にも揺らぎがあり、リズムを感じます。ひとところに留まらず移ろう光を、金属箔の直線や曲線の連なりによって表現できたらと」と、高橋は以前のNumero.jpのインタビューでこう語っていた。

生まれ育った北海道の原風景や、移ろう四季の美しさと厳しさを感じさせてくれた自然への畏敬の念がインスピレーションソースとなるグラフィカルな模様を纏う作品は、モダンさとともにどこかノスタルジックな温もりを感じさせる。彩度や厚みの異なる箔の重ね方や焼成の研究、さらに金属箔が釉薬と反応して黒や緑に発色する特性を活かすなど、独自の技法を追求し、自らの世界観を再現する表現力を磨いてきた。独創性あふれる「金銀彩」を開花させ、日本伝統工芸展、現代茶陶展での受賞など、近年、さらなる注目を集める高橋朋子のまさに「今」を凝縮した展覧会となっている。

高橋朋子「Moon Pavilion」
会期/開催中〜2025年12月25日(木)
開館時間/11:00〜16:00(入館は15:30まで)
休館日/月・火・金
会場/緑ヶ丘美術館
住所/奈良県生駒市緑ヶ丘2731-10
URL/http://mam-museum.com/
Photos:Yoshimasa Kubo(KOYA WORKS)Text:Masumi Sasaki

