SKY-HI、SHUNTO(BE:FIRST)、Aile The Shota、RYUKI(MAZZEL)が語る、BMSGの5年間と未来
SKY-HI率いるマネジメント/レーベル「BMSG」が創立5周年を迎えた。その大きな節目に合わせ、BMSG ALLSTARSとして『GRAND CHAMP』をリリース。そこで、BMSGのアーティストであるSHUNTO(BE:FIRST)、Aile The Shota、RYUKI(MAZZEL)、そしてSKY-HI本人に、この5年間の歩みと未来について語ってもらった。

加速度を上げて疾走してきた、BMSGの5年
──5周年おめでとうございます。まずは、SHUNTOさん、Aile The Shotaさん、RYUKIさんがBMSGに参加する前のイメージと、実際に入ってみての感想を教えてください。Aile The ShotaさんとSHUNTOさんは、会社の輪郭が見えない中でオーディションに参加していますよね。
Aile The Shota「僕とSHUNTOはそうですね。当時は、どうにか音楽で生きていきたいと模索していた時期で、よくボーイズグループのオーディション番組を見ていました。ただ投票システムには違和感もあって。その中で、日髙さんが会社を設立してオーディションを開催すると知ったんです。AAAの日髙光啓もヒップホップアーティストのSKY-HIも好きだったので、これだと思いました。配信での『ありのままの状態で来てほしい』という言葉が胸に刺さったのを覚えています。
──ソロアーティストとしてデビューしてからは?
Aile The Shota「BE:FIRSTを始め、次々とアーティストたちが始動して、その中で徐々に会社のアイデンティティが確立されていったと感じました。入社してしばらくすると、何気ない会話の中で『BMSGっぽいよね』というワードが出てくるようになったんです。それだけBMSGの美学のようなものをみんなで共有しながら、会社が成長しているんだなと。ソロとしてグループを客観的に眺めながら、じゃあ自分はどうしていこうと考えて、Aile The Shotaの活動にフォーカスしていくなかで、自然にBMSGらしさを見いだせたんじゃないかなと思います」

──SHUNTOさんは?
SHUNTO「自分も『THE FIRST』に応募したときは、どんな会社になるのか全く見えない状態でした。それ以前は、ずっと練習生だったので、デビューのきっかけを探していた時期に、SKY-HIさんの配信を見て、『これは本気の人の目だ』と感じました。その頃は、音楽のことを第一に考えるというより、どうすればデビューできるかに必死だったんですね。BE:FIRSTのメンバーになってから、より深く音楽を追求することの楽しさや、仲間と共有する喜びを知りました」
──BE:FIRSTは、BMSG発のボーイズグループ第一弾でしたが、プレッシャーはありましたか。
SHUNTO「正直、プレッシャーはありました。デビュー後しばらくは、現場に社長もチーフマネージャーとして帯同していたけれど、どこへ行っても緊張感があって。僕らも気を張っていたし、とにかく何か吸収しなきゃという気持ちでいっぱいでした」
──RYUKIさんが参加したオーディション『MISSIONx2』の時には、すでにBMSGは有名でしたよね。
RYUKI「僕は『THE FIRST』を観ていて、音楽に対して熱い想いをもつ会社だと知ったので、ここに自分が入ったらどうなるんだろうとワクワクしながら応募しました。実際には、想像以上に熱い会社で、音楽やパフォーマンスに対してまっすぐに向き合っていて。でも、みんな優しいんですよ」

──これまでにSKY-HIさんからもらった言葉の中で、印象に残っているものは?
RYUKI「8月にMAZZELのツアーの最後にアリーナ公演を行ったんですが、『MAZZELは本番に強いから大丈夫だよ』と言っていただいたことが印象に残っています。すごく緊張していたけど、ずっと見てくれている人からの言葉だったので、そこで肩の力が抜けました」
Aile The Shota「深い話をするときに、よく『みんなで一緒に幸せになろうぜ』という言葉が出るんですね。日髙さんが僕らを幸せにするんじゃなくて、自分も日髙さんを幸せにする存在だと自覚させてくれるし、BMSGでの存在意義を認めてくれているようで、本当に嬉しいです」
SHUNTO「僕は、オーディションの初期に社長が言った『世界を獲るぞ』という言葉です。当時、デビューすること自体が目標だったので、その先のことは、日本を拠点に活動していくんだろうなくらいしか考えていなかったんですね。自分の中で勝手に思い込んでいた“天井”を突き破ってくれた、音楽人生に大きな刺激を与えてくれた言葉です」
SKY-HI「……目の前でそういう話を聞くと、さすがに照れるね(笑)」
──すいません、まずは3人に話を聞いて、社長に締めていただこうと。続いて、この5周年で“飛躍した”と感じた瞬間を教えてください。
RYUKI「MAZZELのファーストワンマンツアー “Join us in the PARADE”です。このツアーを通して、自分たちのカラーや音楽性を掴むことができたし、これがこれからの土台になると感じました。メンバー同士の絆も深まった大事な出来事だったと思います」
Aile The Shota「僕はBMSG MARINEの『Memoria』です。自分の音楽性やプロデュース能力を評価してもらった実感がありました。この曲が三代目J SOUL BROTHERSの作詞参加に繋がったりと、活動範囲を広げてくれた曲になりました。日髙さんが『誠実に音楽と向き合うと、神様がたまにギフトをくれるんだ』と言ってくれて。この曲はまさに僕にとってのギフトでした」
SHUNTO「グループとしてもう一段階、団結を強めたという意味では、バンドを導入したタイミングです。『BE:FIRST ARENA TOUR 2023-2024 “Mainstream”』から生バンドになり、ライブパフォーマンスがさらに進化しました。よりBE:FIRSTらしさを表現できるようになったと思います」

──バンド特有のグルーヴ感にダンスを合わせるのは難しいのでは?
SHUNTO「そこが面白いんですよ。パフォーマンスにライブ感が出るし、バンド特有のアレンジが加わってすごく楽しい。僕はずっとバンドと一緒にパフォーマンスしたかったので、ただ嬉しかったです」
──最後にSKY-HIさん、この5年の飛躍のポイントは?
SKY-HI「毎年のBMSGフェスです。毎年『エンターテインメントの更新』を掲げていて、22年と今年は、BMSG全員で3〜4時間のショーケースを作ります。やっぱり、ひとつのグループが2、3曲パフォーマンスして次、だと演者も観客も疲れちゃうし、ヒップホップカルチャー育ちとしては、音が止まらない空間を作りたかったんですね。設備面では、毎年トイレの数を少しずつ増やしています。いずれ、いずれ、ナイトイベントも開催できたらと考えています。主催側の都合になるんですけど、公演が20時に終わったとして、一度に数万人が帰ると、混雑が発生するんですね。夜にDJイベントを設けて、5,000人くらい残ってくれたら運営側としてはすごく助かる。そういうエンターテインメントに『あったらいいな』というアイデアを、BMSGフェスでひとつずつ実現していこうと。とはいえ、毎回試行錯誤です。24年は、3日間2回公演だったんですけど、同じラインナップで6回公演はなかなか難しいと感じました。バンドのドラマーが腰痛になったり、物理的に厳しいものがありました。ただ、みんなが1回1回、決しておざなりにせず、真剣に向き合えていたのは良かった。『Memoria』もそうだけど、BMSGフェスがあるから頑張って作ったものが、それぞれの実力やキャリアを推し進めたりもするので、これは頑張って続けていきたいと思います」

SKY-HI「やるべきことをやり続けないと、神様からのギフトはもらえない」
──SKY-HIさんは5周年を迎えてどのような心境ですか。
SKY-HI「想像していたような感慨はなく、5年は一瞬でしたね。毎日、何かしら嬉しいことがあって、嫌なことがあって、やるべき課題があって。これはしんどいなと思うと、誰かが嬉しいニュースをもってきたり、サウナに入りながら水風呂に入っているような状態です」
──この5年で急成長を遂げましたが、これは計画通りですか?
SKY-HI「想像の幅の中間くらいですね。これを必要としている人がいることはわかっていたので、最低でもこれくらいの規模にはなりそうだなと見込んでいたところもあるし、予想以上のものももちろんあった。思い描いていたことの75%くらいは達成しているんじゃないかなと思います」
──4月にBullmoose Recordsが、Sunnyをジェネラルプロデューサーに迎え、独自の契約システム「FlexDeal」を通してラッパーのSALUとプロデューサー兼アーティストのBANVOXと契約したと発表がありました。今後は、BMSGの精神に共鳴してくれる外部のアーティストと連携していく流れも?
SKY-HI「BMSGはボーイズグループのための会社ではなく、“いい音楽を作る会社”でありたいんですよ。それを前提に、ボーイズグループやソロアーティストを輩出しているという姿勢は大事にしたい。ただ、これからは音楽シーンのどこを見ても、BMSGの人がいるという状態にする必要があると思っていて。『今、アジアで面白いもの』にBMSGの名前が挙がるようにしたいので、まずは日本の各シーンに本質的なプレゼンスを示す必要があるし、そのためにもリスペクトを表明して、一緒にやっていけたら嬉しい。日本の音楽を世界に輸出することにこだわりたいんですね。今、日本の音楽シーンは、世界から隔絶されていて、例えば、ストリーミングサービスで日本の音楽をたくさん聴くと、“おすすめ”に日本の音楽しかサジェストされないんです。『日本の音楽が好きな人は、日本の音楽しか聴きませんよね』というアルゴリズムの善意の判断なんですけど、その状況を壊したいんですよ。そうじゃないと、日本の音楽シーンが弱体化する一方です。今、音楽サブスクにおけるアジアのエリア分けが「東南アジア、東アジア、日本」となぜか日本だけ独立しているんですよ。それだけ日本は特殊なんですね。でも、日本の音楽シーンを『世界の中のアジア、その中の日本』にしたい。ただ、一番大きな岩は、もうすでに動いている気がしますね。BMSGだけの実績ではなくて、マーケット全体の潮目が変わったと感じています」
──経営者としての経験が、ご自身のクリエーションにも影響を与えましたか。
SKY-HI「旧『タイトル未定』という曲が大きかったですね。ソロアーティストたちに『絶対にマトは絞った方がいい、これで行くとなったらしばらくそこに集中したほうがいい』とよく話すんですね。そこには自分の反省もあって。中学でバンドを始めて、ダンスをやって、ラップをやって。AAAになって、アンダーグラウンドでラップして。多動気味な性格のせいで、器用だけどどういう人なのかを確立するまでに時間がかかってしまった。今でも、新曲を作ろうとすると、やりたいことが広がりすぎて大変なことになっちゃうんですよ。でも、自分にしかできないことと、自分がやるべきことが繋がった瞬間があって、それが旧『タイトル未定』でした。いかんせん自分の制作に集中できる時間は限られているんですけど、年に1回くらいそういう曲が書けると、神様に『まだやれ』と言われている気がします」
──『No Flexin’』は経営者としての生き様を感じました。
SKY-HI「あの曲は、逆にそれしか書くことがなくて、危なかったんですよ。そんなことを思っていたら、Aile The Shotaが、Taka Perryとか10人くらいのミュージシャンをうちに連れてきてくれて。すごく助かりました。そういう場を強制的に作ってもらわないと、見る景色が同じになっていくんですよ。これも、よく話しているんですけど、やるべきこと、やりたいこと、世の中に必要なものが合致したときにヒットする。でも、ちゃんと打席に立ち続けてないとタイミングが巡ってこない。前提として、やるべきことをやり続けることは必要だけど、それだけでは同じ景色しか見ないから、ほどよく“雑念”を入れていろんなことに興味をもつのも大切。バランスだと思いました」
20年後も音楽に夢が見られるような世界を作る
──5周年を記念したBMSG ALLSTARSの新曲『GRAND CHAMP』に込めた想いを教えてください。
RYUKI「自分のパートが『引き下がれない/引き下がらない/ナシをアリに変えてきた物語』という歌詞なんですが、無理だと言われ続けた自分の過去を、MAZZELでアリに変えていっている自信はあるので、すごく感情が入りました。大好きな歌詞です」
SHUNTO「僕はこの曲に命を込めています」
Aile The Shota「(笑)。SHUNTOのバースが『命すら賭けるんだ/この誇り以外いらない』なんですよ。日髙さん、この歌詞を書いて良かったですね」
SKY-HI「SHUNTOのこの1行のために、20行ぐらい書いて、50パターンくらい出してるから。楽しかったけど」
Aile The Shota「BMSG POSSEのメンバーは、自分のバースを書いたんですね。NovelCoreと一緒にご飯に行って、僕たちは今、何を歌うべきかすごく話しました。個人としてだけじゃなくてBMSGとしても」
SKY-HI「『自責と実績を重ねたその先で』ってすごくいいよね」
Aile The Shota「この歌詞を書けた時点で僕のBMSGフェスは成功です」
──最後に、BMSGの6周年、さらにその先の10周年、もっと先の未来に向けての抱負を、新年の書き初め風に一言で表現してください。
Aile The Shota「ずっと掲げている『本質を大衆へ』です」
RYUKI「僕は『輪』です。BMSG、そしてアーティストとファンのみなさんの輪をどんどん広げて、10周年になる頃には、世界で『BMSGヤバイ』と言わせたい。そのためにしっかりとみんなで輪を広げていきたいです」
SHUNTO「書き初めには収まらないかもしれないけど、『制作のクオリティを上げる』。少しずつ経験を積んできて、発言に対する責任や、言葉に説得力をもたせるための知識が必要なフェーズに入ってきているので、メンバーそれぞれが力をつけて、クオリティを上げていきたいと思います」
SKY-HI「10周年にやりたいことがあるので、そのための1年目が始まったと考えると、もう大詰め感があるし、特に今年と来年は重要な局面だと思います。これからデビューする3つ目のグループは、10代のメンバーが多いんですね。10年後はまだ20代。例えば一人例を挙げるなら、KANONと僕は20歳離れているんですが、KANONは確実に20年後も音楽をやっていると思うんですね。そのときに、バイトをしないと音楽が続けられない世界にしたくない。このままでは、特に莫大な経費がかかるダンス&ボーカルは、20年後には日本では成り立たないものになってしまう。だから、ここ5年で、もう2、3つパラダイムシフトを起こさないといけないと危機感を持っています。そのためにも、やるべきことをやる。メンバーであるSHUNTOだって『BE:FIRSTが歴史を変えた』と言われてもピンとこないだろうけど、BE:FIRSTの出現によってダンス&ボーカルには実力が必要だという、当たり前だったはずの常識をみんなが再認識できましたよね。『そこで時代が変わった』というポイントは、後から振り返って初めてわかるものですが、そういう瞬間をこの10年で更に積み重ねて当たり前を更新することができたら、2035年にも日本で音楽を今以上に楽しめる未来があるはずです。だから、書き初めにすると『頑張ります』」
Photos:Courtesy of BMSG Interview & Text : Miho Matsuda Edit : Naomi Sakai
