YUTAが共鳴する、エスパス ルイ・ヴィトン大阪「INFINITY – SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」展 | Numero TOKYO
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YUTAが共鳴する、エスパス ルイ・ヴィトン大阪「INFINITY – SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」展PROMOTION

世界を舞台に活躍するアーティスト NCTYUTAが訪れたのは、エスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催中の草間彌生展。“水玉の女王”が紡ぐ果てしない想像の世界と、彼自身の表現者としての感性が交差する瞬間に生まれた、共鳴のエネルギー。書くこと、描くこと──そこから無限に広がる、草間彌生の宇宙に没入して。

《無限の鏡の間 ― ファルスの原野(またはフロアーショー)》(1965年/2013年)
《無限の鏡の間 ― ファルスの原野(またはフロアーショー)》(1965年/2013年)

草間彌生の無限に広がる創造の世界

フォンダシオン ルイ・ヴィトンは、現代アートやその源流となる20世紀の重要作品に特化した芸術機関。東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪の6都市に設けられたエスパス ルイ・ヴィトンでは、所蔵コレクションを紹介するプログラム「Hors-les-murs(壁を越えて)」を展開。そのアーティスティック・ディレクションを担っている。現在、エスパス ルイ・ヴィトン大阪では、日本人アーティストに初めて焦点を当てた展覧会として草間彌生展が開催中だ。「INFINITY – SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」では、独自のスタイルで前衛芸術の世界を切り拓き、日本のみならず国際的なアワードの受賞や大規模な展覧会が開催されるなど、世界中から愛される草間彌生の初期作品から代表的なインスタレーションや絵画など近年の作品までを展示している。

草間彌生は1929年、長野県松本市に生まれた。絵画、彫刻、インスタレーション、文学、パフォーマンス、ファッションなど多岐にわたる表現を通じて、一貫して独自の芸術世界を築いてきた彼女の実家は種苗業を営んでおり、花や植物に囲まれた環境の中で幼少期を過ごす。季節ごとに色とりどりの花々が育つ光景は、彼女の感性に大きな影響を与え、後の作品に繰り返し登場する植物や花のモチーフの源泉に。自然が織りなすリズムは彼女の心に“生命の連鎖”や“反復する模様”として刻み込まれ、これらは彼女が描く水玉や網目模様のイメージとも結びつき、独自の芸術世界を形成する原点となったとも言われている。幼い頃から幻視体験に悩まされながらも、自然や植物を観察し、絵を描き続けることで心を保ち続けた。彼女の幼少期は芸術家・草間彌生の根幹を育んだ重要な要素なのだ。

《無限の鏡の間 ― ファルスの原野(またはフロアーショー)》(1965年/2013年)
《無限の鏡の間 ― ファルスの原野(またはフロアーショー)》(1965年/2013年)

水玉の女王が描く、果てしなきアートの宇宙

展覧会の中心を飾るのは、“水玉の女王”と呼ばれる彼女の代表的なインスタレーション《無限の鏡の間 ― ファルスの原野(またはフロアーショー)》だ。鏡張りの空間には水玉、色鮮やかなきらめく光が空間を侵食し、一面に広がるかぼちゃや抽象的かつ示唆的な形状の突起物が覆い尽くす。この作品は、彼女が長年追求してきた“無限”と“反復”のテーマを体感的に示し、作品の中へ足を踏み入れた瞬間、幻想的な空間の中で無限に映し出される自分の姿に直面した観客は、現実と幻想が溶け合った世界の中で、自らが広大な宇宙の一部になったような感覚を呼び起こす。モチーフに埋め尽くされた空間への没入体験は、彼女が幼少期から悩まされてきた幻覚を再現し、彼女自身を苦しませてきた多数の恐怖症……とりわけセックスと食に対する恐怖感を払拭する手段として芸術を用いており、自伝で次のように語っている。

「(中略)恐怖の対象となるフォルムを、何千、何万と毎日作りつづけることによって、恐怖を克服していく。つまり、自療法としての制作であり、私はそれを『サイコソマティックアート』と名付けた」。自身の恐怖の元凶であるものを何百と融合し、それらが作り出す環境に身を置くことで、恐怖要素を取り除き、身近で愉快でさえあるオブジェへと昇華させる。《無限の鏡の間》は、鑑賞者に深い没入体験をもたらすと同時に、アートが持つ精神的な“解放の力”を鮮烈に伝えている。

“自分自身を解放しながら、同時に観る人も縛られていた
何かから解放されることもあるかもしれない”(YUTA)

 

パリにあるフォンダシオン ルイ・ヴィトンにも訪れた経験を持つYUTAさん。表現者としての感性を磨き続ける彼が、エスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催される草間彌生展に足を運び、どのような想いを抱いたのだろうか。

──《無限の鏡の間》では何を感じましたか?

「撮影中、僕だけが作品の中に入って、遠隔のコミュニケーションをとりながら写真を撮りました。『自由に動いてください』と言われて、いろんなポーズを試みたのですが、平衡感覚を失ったような不思議な感覚を受けて。宇宙みたいに無限に広がっていく、異世界に行ったような感覚がはじめは少し怖かった。この感覚を希望的な意味に捉える人もいるだろうし、怖いって思う人もいるのだろうなって」

──YUTAさんにとって、アートはどんな魅力や力を持つものですか。

「やっぱり、何か特別な力を持っていると僕は感じます。今回、草間さんの作品を観させていただき、作品に対するご本人の気持ちをすべて汲み取るのは難しいと思うのですが……そこには絶対、作り手がそのときに感じたことなど、いろいろな想いが込められている。そういうものに触れると、自然に自分もアーティストとして向上心が湧き、『なにかを伝えていきたいな』という気持ちになります」

──草間さんの作品からどんなことを感じましたか?

「おそらく、ほかの人には見えないものが見えていたり……そういう部分の葛藤も含めて、自分自身と深く向き合ってきた方なんだろうな、すごいなと感じました。同じものを描き続けるという行為も、苦手なものを克服したいという想いから来ているなど。たぶん、僕自身にもそういうものがあると思うんです。人前に立っているからこそ、何かを表現するからこその孤独感があったり。でも、そこから生まれる何かもあるので、表現するという意味では似ている部分もあるのかな……なんて思いながら、作品を観させていただきました」

《無限の鏡の間 ― ファルスの原野(またはフロアーショー)》(1965年/2013年)
《無限の鏡の間 ― ファルスの原野(またはフロアーショー)》(1965年/2013年)

──YUTAさんも絵を描くそうですが、自分が描いた忘れられない一枚は?

「鉛筆で沈んでいく人を描いたことがあります。でも、全然うまくもなくて納得いかずに、絵を一回水に沈めてみようとやってみたら、なんかすごくいい感じになり、『おっ、なるほど!』って。この体験はアーティスト業とも少しつながっている。歌う、踊る、バンドで魅せるだけではなく、そこに来た観客のみなさんの体温やエネルギーがプラスされて、はじめて完成されるものもあるんだという気づきが、そのときにありました」

──YUTAさんにとって、表現するとは?

「変化するものだし、ひとことで表すのは難しいけれど、怖がらずに突き詰めていくからこそ、何かを伝えられることができるのだと思います。挑戦や失敗、葛藤……そんな自分の中に欲や、いろんな想いが詰め込まれているものなのかと。それを、観た人たちが受け取ってくれたときに、はじめて完成するものがアートなのかな。パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンに行ったとき、圧倒されたんです。いろんな国からの、いろんな人の作品が展示されていて。ときには、『これが正解だから、これをやりなさい』と言われることもあるけれど、草間さんの作品の中にもありますが、服を脱いで裸になることが時に芸術になることもある。それは自分自身を解放しながら、同時に観る人も縛られていた何かから解放されることもあるかもしれない。挑戦したいと思っている人をアートが後押ししてくれるということもありますよね」

Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris © YAYOI KUSAMA Photo credits: © Primae / Louis Bourjac
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris © YAYOI KUSAMA Photo credits: © Primae / Louis Bourjac

《ドッツ》(1990年)。「ポルカドットは全世界と、生きとし生けるもののエネルギーの象徴である太陽の形である。(中略)ポルカドットは、コミュニケーションが必要な人の生命体同様、単体ではいられない。複数あってこそ動き出す。地球は、宇宙の無数の星のなかのひとつの水玉。(中略)ポルカドットで自然や身体を消すとき、己が存在する環境の一部となる」(草間彌生)

《無限の網(DHPP)》(2010年)
《無限の網(DHPP)》(2010年)

ルイジアナ美術館制作のインタビュー映像『草間彌生:一緒に大いに闘っていきましょう』(2015年)
ルイジアナ美術館制作のインタビュー映像『草間彌生:一緒に大いに闘っていきましょう』(2015年)

書くこと、描くこと、そして生きること。
草間彌生が示す無限の表現

細胞を想わせる小さな模様の集積。草間彌生の代表作《無限の網(DHPP)》は、単一のモチーフを強迫的かつ緻密に反復し描く創作手法がとられ、果てしない広がりを感じさせるその構図は観る者に無限の感覚を呼び覚ます。また、彼女が長期的に取り組んでいるシリーズ《毎日愛について祈っている》では、彼女が生涯を通じて追求してきた、“書くこと”と“描くこと”という2つをつなげた詩的な作品だ。インタビュー映像を映し出す大きなスクリーンでは、「私は無限の小説、そして無限のファッション、無限の美術……そういったものをたくさん作りましたが、それと同時に、人間の最高の欲望である生命感の美しさ、それから宇宙の神秘の素晴らしさ。そういったものを私は芸術の中に汲み取り、自分自身の人生を築いてまいりました」と語る芸術家・草間彌生。彼女が何を想い、なぜ表現を続けるのか──そこに向き合ってみると、「宇宙に生まれ、今ここに生きる意味とは?」を観る者に問いかけてくる。

《毎日愛について祈ってる》(2023年)
《毎日愛について祈ってる》(2023年)

  

NCT YUTAがナビゲートする、
エスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催中の草間彌生展
「INFINITY – SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」

「INFINITY – SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」
草間彌生のペインティング8点、インスタレーション1点、店舗1Fにかぼちゃの彫刻1点(10月15日まで)を展示。2026年1月12日まで開催。
会場/エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所/大阪市中央区心斎橋筋2-8-16
ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F
開館時間/12:00~20:00
入場料/無料
※休館日はルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準ずる
URL/https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/point-of-sale/japan/espace-louis-vuitton-osaka

Photos:Toki Video Director:Tsuji Takafumi Camera:Daiei Onoguch, C.Maverick Watanabe Styling:Yuta Kotani Hair & Makeup:Hyo Edit, Interview & Text : Hisako Yamazaki

Profile

ユウタ YUTA 1995年10月26日生まれ、大阪府出身。NCT 127唯一の日本人メンバー。ソロアーティスト、俳優としても活躍。10月26日に1stソロ・フルアルバム『PERSONA』をリリースし、日本国内10都市でソロアーティストとしての初のツアー「YUTA LIVE TOUR 2025 -PERSONA-」を開催中。2026年春には、プロの殺し屋たちがダンスに挑む話題の映画『スペシャルズ』にも出演。
 

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