世界のベストレストラン1位「Maido」を目的地にした美味なるペルー旅 | Numero TOKYO
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世界のベストレストラン1位「Maido」を目的地にした美味なるペルー旅

2025年6月、「世界のベストレストラン50」において、世界第1位に輝いたペルー・リマの「Maido」。2年前に同じくリマにある「Central(セントラル)」が受賞して以来の快挙であり、ペルーガストロノミーのレベルの高さを改めて世界に証明した出来事であった。この美食の頂点を体験すべく、魅惑の国ペルーへと飛んだ。

世界でブームのニッケイ料理をけん引する、No.1レストラン「Maido」

「Maido」が提供するのは、「ニッケイ料理」。19世紀末以降にペルーへ渡った日本人移民、いわゆる日系人たちが、日本の調理技術と現地で手に入る食材を融合させ、独自に発展させてきた食文化だ。現在、世界各国でニッケイ料理がブームだが、「Maido」はその代表格でもある。

シェフの津村光晴(ミツハル・”ミチャ”・ツムラ)氏は、まさにその歴史を体現する日系人2世だ。日本の繊細な感性とペルーのダイナミックな食材を見事に調和させ、ニッケイ料理を新たな芸術の域へと昇華させた。

今回、幸運にもこの世界最高峰のレストランを訪れる機会を得た。お店はリマの新市街、治安の良いミラフローレス地区にあり、ユーカリの木が林立するファサードが目印だ。

縄のれんをイメージしたエントランスを抜けると、そこにはペルーの豊かな自然と日本の文化が共存する世界が広がっていた。これから始まる約3時間半、全13品のコース「MAIDO EXPERIENCE」(コースのみ1,295ソル、ペアリング付き1,985ソル)への期待に胸が高鳴る。

アマゾンから始まるペルー横断の食紀行

Maidoのコースは、一皿一皿がペルーの多様な風土を巡る旅だ。旅の起点は、ペルーの国土の約6割を占める広大な熱帯雨林、アマゾン。「MADRE DE DIOS」と名付けられたアミューズは、豚のハム「セシナ」とチョリソーを乗せたタルトレットだ。サボテンの実「アイランポ」の鮮烈な酸味を伴うソースと、多様なジャガイモの原産国であるペルーならではのクリーミーなソースが、スモーキーなハムの風味と絡み合う。

同時にサーブされた「Butifarra」は、アマゾンの巨大な淡水魚「パイチェ」のハムを使った小さなサンドイッチ。ボタニカルな香りとチリマヨネーズが、未知なるジャングルの奥深くへと味覚をいざなう。

続いて、リマに代表される、太平洋岸の恵みへと舞台は移る。ペルー料理の代名詞「CEBICHE」は、「Maido」の手にかかると全く新しい表情を見せる。新鮮な白身魚に合わせるのは、なんとピスタチオのクリームとセビーチェ風味のジュレ。伝統的なレシピに革新的なアイデアを加えながらも、その本質は失われていない。さらに、アンデス地方の伝統的な発酵トウモロコシ飲料「チチャ」やハーブ「ワカタイ」が、爽やかさと複雑な奥行きを与えている。

この美食の旅をさらに奥深いものにするのが、珠玉のペアリング「MARIDAJE PAIRING」だ。序盤の料理には、アルゼンチン・パタゴニア産の「Trapi del Bueno Chardonnay 2020」や、ニュージーランド・マルボロ産の「Astrolabe Taihoa Sauvignon Blanc 2021」が供され、それぞれの料理の風味を最大限に引き立てる。

チリの「Villalobos Lobo Carmenere 2020」やウルグアイの「Cerro Chapeau Nebbiolo 2021」など、南米各国の個性豊かなワインが、ニッケイ料理の多様な味わいと見事なマリアージュを奏でていた。今回我々はワインでのペアリングをお願いしたが、日本酒やそのほかのお酒を使ったペアリングもリクエストできる。

スシや炉端焼きも、伝統と革新が交差する新たなプレゼンテーションで

中盤では、ペルー第2の都市であるアレキパの郷土料理から着想を得た料理が続く。「SARZA AREQUIPEÑA」は、川エビとリムペットと呼ばれる貝類を合わせてタルタルに。そこにチチャ・デ・マイスと呼ばれる、アレキパの伝統的なピカンテリア(食堂)で飲まれている黒トウモロコシを発酵させた蒸留酒、ワカタイというペルー原産の葉をアクセントに合わせている。

「HUARAL – VISO Y CUCHILLO」も、アレキパ伝統の豚肉料理にインスパイアされた一皿だ。アンデス地方のマシュアと呼ばれる芋の塊茎で造ったトルティーヤの上に、揚げ焼きにした子豚、タマネギのピクルス、アスパラガスを合わせている。お好みでロコトと呼ばれるアンデス地方の唐辛子を使ったグリーンチリソースを加えて、タコスのようにいただく。

そして、この日のハイライトの一つが「SUSHI」だ。シェフが生ハムの原木をスライスするかのように、各テーブルの目の前でマグロを薄く削り取り、タレに絡ませ、丸く握った白米の上にのせていく。ネタはスペイン産のマグロのトロと、アレキパ産のウニ。シャリは日本のお米で、白ゴマ、小口ネギ、海苔が散らしてある。

驚くべきはそのタレ。ポン酢をベースに薄口醤油、アマゾン産のレモン、ニンニク、生姜、そして鰹出汁を合わせたもの。ワインにペアリングすることを前提にした、力強い味わいながら、口の中で旨味の多重奏を奏でる。ペルーと日本、二つの文化が幸福な出会いを果たした、シグネチャー的な一皿だ。

その後も、銀鱈を炉端焼き風の煮付けにした「COSTA SUR」と、ニッケイ料理の真髄が次々と繰り出された。

蟹の出汁が効いたサツマイモの和え麺「CANGREJO REVENTADO」など、ペルーの山と海の幸が織りなす驚きの一皿も忘れがたい。

メインの肉料理は、野生のカカオとして知られる、アマゾン原産のマカンボを使ったマーブル模様のせんべいが目を引く。中には50時間かけて低温調理された牛ショートリブとアマゾンのソーセージが潜んでいる。

ペルー原産のフルーツやスーパーフードを使った珠玉のデザート

「Maido」にはデザートだけのコースもあるほど、スイーツのレベルも高い。ペルー風かき氷「RASPADILLA」は、グアナバナやパパイヤといったトロピカルフルーツの爽やかな甘さで、別腹の扉を開いてくれる。

続くメインデザート「MADURO A LA BRASA」は、Maidoの真骨頂とも言える一皿。主役は、焼きプランテン(調理用バナナ)のアイスクリーム。そこへ醤油、ココナッツ、スーパーフードのカムカム、そして意外にもトビッコが組み合わされ、甘味、塩味、酸味、そして食感のコントラストが絶妙なハーモニーを奏でる。

最後の小菓子「OKASHI」は、ペルー産カカオ72%の濃厚なチョコレートと、クリスピーな食感のジャガイモ、そしてペルーを代表するフルーツ「ルクマ」を使った餅。アボカドのような甘さと濃厚さを持つルクマの良さを引き出した一品で、大変感動した。ペルーのプーノで栽培されている高品質コーヒー「Tunki」と共に味わえば、深く、そして心地よいコースの余韻にひたれるはずだ。

Maido
住所/Ca. San Martín No. 399, Miraflores, LIMA 15074
TEL/+51 1 3135100
URL/maido.pe/?lang=en

ペルーのテロワールを皿の上に再構築するイノベーティブフュージョン「Mayta」

「Maido」と同じく、2025年版「世界のベストレストラン50」で41位にランクインした、リマの「Mayta」に訪問する機会にも恵まれた。シェフのハイメ・ペサケ氏は、ペルーの忘れられた食材や伝統的な調理法に光を当てた、イノベーティブな料理で知られている。

店名の「Mayta」は、アイマラ語で「高貴な土地」という意味。その名の通り、生のアサリとトーストしたアーティチョークに、セビーチェで使われるマリネ液のレチェ・デ・ティグレや唐辛子ソースを合わせた前菜など、産地との繋がりを重視し、自社農園で栽培された食材も使用している。

アンデス地方で、お祝い事の際に丸焼きにして食される、クイ(テンジクネズミというモルモットの原種)も、「Mayta」では現代的にアップデート。クイを正方形に象り、皮目は揚げ焼きのようにしながらコンフィしてあり、デミグラスソースとローストした野菜のピューレが味に奥行きを生み出している。クイは英語で「Guinia pig」と表される通り、肉質はプルドポークのようだった。伝統的なペルー料理の枠組みを尊重しつつも、現代的なテクニックを駆使して再構築された一皿一皿は、驚きと発見に満ちている。

Mayta
住所/Av. La Mar 1285, Miraflores, Lima
TEL/+51 1 4224921
URL/www.maytalima.com/en

アートと歴史に抱かれる、リマ随一のブティックホテル「Hotel B」

美食の旅の拠点としてリマで滞在するなら、アートとファッションの中心地、バランコ地区に位置する5つ星ホテル「Hotel B」がおすすめだ。厳格な審査をクリアしたホテル、レストランのみが加盟できる、世界的な権威「ルレ・エ・シャトー」に加盟していることからも、そのレベルの高さがうかがえるだろう。

ベル・エポック様式の歴史的な邸宅を改装した館内は、さながら美術館のよう。ペルーの現代アートを中心としたコレクションが随所に飾られ、知的好奇心を刺激する。

客室はクラシックな趣とモダンな快適さが融合し、旅の疲れを優雅に癒してくれる。リマの喧騒から逃れ、文化的な香りに包まれて過ごせるはずだ。

Hotel B
住所/Sáenz Peña 204, Barranco, Lima
TEL/+51 1 2060800
URL/hotelb.pe/en/

世界遺産マチュピチュへも、美食三昧のラグジュアリー旅で

ペルーを旅するなら、世界遺産マチュピチュは外せない。標高約2,450メートルの断崖絶壁に忽然と現れる古代インカ帝国の遺跡は、「空中都市」とも称される神秘的な場所だ。 文字を持たない文明であったため、その多くは未だ謎に包まれているが、精巧な石組み技術は、インカの高度な文明を今に伝えている。この天空の遺跡への旅路も、シームレスで快適な、ラグジュアリーな選択肢が増えているので紹介したい。

インカ帝国の古都クスコで宮殿ホテルに滞在

マチュピチュ観光の玄関口となるのは、かつてインカ帝国の首都として栄えた古都クスコ。首都のリマからは飛行機で約1時間ほどだ。この街での滞在には、5つ星ホテル「パラシオ・デル・インカ, ラグジュアリーコレクションホテル」がふさわしい。

16世紀の宮殿を改装した建物は、インカ文化とスペイン植民地時代の文化が融合した、歴史的で豪華絢爛な空間だ。地元のアーティストによる手描きの装飾が残る壁など、細部に至るまでこだわりが感じられ、まるで歴史の中に滞在しているかのような特別な時間を過ごすことができる。

Palacio del Inka, a Luxury Collection Hotel, Cusco
住所/Plazoleta Santo Domingo 259, Cusco
TEL/+51 84 231961
URL/www.marriott.com/en-us/hotels/cuzlc-palacio-del-inka-a-luxury-collection-hotel-cusco/overview/

豪華列車「ハイラム・ビンガム号」でディナーコースと生演奏に酔いしれる

クスコからマチュピチュへは、ペルーレイルとシャトルバスを乗り継いでアクセスするのが一般的だ。このペルーレイルにはいくつかの選択肢があるのだが、せっかくならば最上級の観光列車「ハイラム・ビンガム号」(片道1人600USD)を選んでみてほしい。今回はマチュピチュ遺跡からの帰りに、この列車を利用してみた。

まず、遺跡の麓にある「サンクチュアリロッジ, ア・ベルモンド・ホテル」で、帰りのシャトルバスまでの時間、カクテルタイムを過ごすことから旅路が始まる。本来であれば、シャトルバスは行列に並ばないと乗車できないので、この待ち時間がカクテルタイムになるとは、かなり特権的だ。

その後、専用バスでマチュピチュ村へと下る。マチュピチュ駅のVIPラウンジでくつろいだ後、いよいよ「ハイラム・ビンガム号」へ乗車だ。

列車へと足を踏み入れると、ウェルカムシャンパンカクテルで歓待され、気分が一気に高揚する。そして1920年代のプルマン車両を彷彿とさせるクラシカルなインテリアが目に入り、さらに顔がほころぶ。

列車は夜の帳が下りたアンデスを、クスコ方面へ進む。車内で提供されるのは、シェフのホルヘ・ムニョス氏が監修する美食の旅「Journey of flavors」だ。

アンデスポテトとペルーの唐辛子を使った「ピカンテ・デ・パパ」に始まり、メインは聖なる谷で育ったマスのグリルか、アマゾンのフルーツ「トゥクピ」のソースでいただく鴨肉のチョイス。デザートは、なんとトウモロコシのチーズケーキ。ペルーの豊かな食文化が、一流のワインと共に供される。

嬉しいのが、乗車券代にコース料理、フリーフローのドリンクも含まれていること。しかもシャンパンのモエ・エ・シャンドンや、赤・白ワインだけでなく、アンデスやペルーにちなんだオリジナルのカクテルまでそろう。

そしてこの列車の白眉は、ラウンジ・バーに隣接する最後尾の展望車両だ。ここではラテン音楽のライブバンドが乗客のリクエストに応え、情熱的な演奏を繰り広げる。

移りゆくアンデスの車窓と、幸せそうな人々の顔を横目に、シャンパンのグラスを傾けながらライブ音楽に身を委ねる時間は、思わず涙がこぼれるほど感動的なひとときだった。

Belmond Hiram Bingham
URL/www.perurail.com/trains/train-services/belmond-hiram-bingham/

聖なる谷の自然に癒されるリゾートホテル「タンボ・デル・インカ」

マチュピチュ観光後は、インカの“聖なる谷”と呼ばれるウルバンバに位置する「タンボ・デル・インカ, ラグジュアリーコレクションリゾート&スパ」で心身を解放したい。

インカの文化と自然に調和したデザインが特徴の5つ星リゾートで、広大な敷地には川沿いの庭園が広がり、アンデスの雄大な自然に抱かれているかのような感覚を味わえる。

このリゾートでの朝食が素晴らしい。暖炉の薪がぱちぱちと爆ぜる音と、アルパ(ハープ)を中心としたフォルクローレの生演奏が、心地よく響き渡るダイニングで朝食をいただける。

朝食は、アラカルトメニューに加え、アンデスの恵みが詰まったセミビュッフェスタイルだ。ビュッフェ台には、敷地内の菜園や地元の農家から届いた新鮮な食材が並ぶ。

キヌアのサラダやスープ、アヒ(唐辛子)のクリーム、そしてスーパーフードとして知られるマカのパウダーや、インカ時代から珍重されるマラスの塩、高山病予防で知られるコカ茶など、ペルーならではの逸品が用意されている。

アラカルトでオーダーした「エッグベネディクト」は、ポーチドエッグの下にポロ葱のキッシュが隠れているユニークな一品。“聖なる谷”での朝にふさわしい、フレッシュなオーガニック食材を使ったピュアな料理に、体の隅々までおいしく栄養がいきわたるようだった。

Tambo del Inka, a Luxury Collection Resort & Spa, Valle Sagrado
住所/Avenida Ferrocarril S/N, Valle Sagrado, Urubamba
TEL/+51 84 581777
URL/www.marriott.com/es/hotels/cuztl-tambo-del-inka-a-luxury-collection-resort-and-spa-valle-sagrado/overview/

五感を満たす、発見と感動に満ちたペルーの旅へ

かつてインカ帝国の中心として栄え、今なお多くの謎と魅力を秘めた国、ペルー。その名は「マチュピチュ」や「ナスカの地上絵」といった古代文明の遺産と共に語られてきた。しかし、近年のペルーは「美食の国」としての評価を確固たるものにしている。

ペルーへの旅は、五感を満たす発見と感動に満ちあふれている。ただ観光地を巡るだけではない、その土地の文化と歴史を深く味わう旅へ。次のデスティネーションは、決まったも同然だ。

取材協力:ペルー貿易観光投資庁
※1ソル=42.33円(2025年9月18日時点)

Photos & Text:Riho Nakamori

 

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JANUARY / FEBRUARY 2026 N°193

2025.11.28 発売

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