「ひとり」から「だれかと」──日比野克彦の60年以上を辿る個展@水戸芸術館 | Numero TOKYO
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「ひとり」から「だれかと」──日比野克彦の60年以上を辿る個展@水戸芸術館

水戸芸術館現代美術ギャラリーでは日比野克彦の20年ぶりとなる個展「ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで」が開催されている。少年時代から現在まで、60年以上にわたる日比野の活動を、170点以上の作品と日比野とつながるエピソードとともに辿る。2025年10月5日(日)まで。

「わたしはちきゅうのこだま」(2020)より 写真提供:HIBINO SPECIAL
「わたしはちきゅうのこだま」(2020)より 写真提供:HIBINO SPECIAL

日比野克彦は、5歳の頃、予期せずひとりぼっちになり、橋の上ではじめて「ひとり」を実感したという。そして絵を描くのは「だれかと」会いたい、コミュニケーションしたいからとだと語る。本展は「ひとり」から「だれかと」へ、つながりをもとめる日比野の活動を、生い立ちから現在まで俯瞰する。

「オートバイ」(1984)撮影:竹内裕二
「オートバイ」(1984)撮影:竹内裕二

1980年代前半、ダンボールを素材にした作品でイラストレーションの概念を拡張し、注目を集めた日比野克彦。2000年代は関係性を探求するアートプロジェクトに取り組み、2010年代は美術館館長、2021年には東京藝術大学長に就任。美術を福祉、医療などと掛け合わせたり、行政や企業と連携して社会に結びつける実践を、さまざまな形で行ってきた。

「明後日新聞社文化事業部」(2003-)  2003年の様子 写真提供:HIBINO SPECIAL 
「明後日新聞社文化事業部」(2003-) 2003年の様子 写真提供:HIBINO SPECIAL 

本展では、そんな多岐にわたる作品や活動を辿りながら、関係者のインタビューやエピソードでも掘り下げていく。例えば、代表的なアートプロジェクトのひとつ新潟・莇平での「明後日朝顔プロジェクト」と、岐阜・長良川の「こよみのよぶね」を絵本作家でイラストレーターの大橋慶子が絵本化。さらには、漫画家・宇佐江みつこによる美術館における日比野のエピソードの描き下ろし漫画も。
そのほかにも、日比野が幼い頃に遊んでいた積木の色と自身の作品との考察、母親と作品との関わりなど、興味深いエピソードも紹介される。

「こよみのよぶね」(2006-)  2021年の様子 撮影:日比野克彦
「こよみのよぶね」(2006-) 2021年の様子 撮影:日比野克彦

「社会との連携、世界との関わりというものが、アートの一番生々しい、いきいきとしたところ」と日比野はコメントを寄せている。そして「観に来るというより体験しに来る、そんな展覧会になっていますので、楽しんでもらえたらと思います」。

《種は船・明後日丸》(2007/2025)
《種は船・明後日丸》(2007/2025)

水戸芸術館でも、市民とともに20年にわたって続けてきた「明後日朝顔プロジェクト」や、ダンボールなどでゴールとボールをつくり、ミニサッカーを楽しむワークショップ「HIBINO CUP」が開催される。

描くことで、だれかとつながる。その、シンプルな振る舞いが生み出してきたもの。60年以上の軌跡と、広がっていく道のり、そして現在地。ぜひ訪れて楽しんでほしい。

「私が初めて立ち止まったのは萱場の橋の上でした」(2002) 写真提供:HIBINO SPECIAL
「私が初めて立ち止まったのは萱場の橋の上でした」(2002) 写真提供:HIBINO SPECIAL

日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで
期間/2025年7月19日(土)~10月5日(日)
会場/水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所/茨城県水戸市五軒町 1-6-8
開場時間/10:00~18:00 ※入場は17:30まで 
休館日/月曜日(8月11日、9月15日は開館)、8月12日(火)、9月16日(火)
入場料/一般 900円、高校生以下・70 歳以上・障害者手帳などをお持ちの方と付き添いの方1名は無料
※学生とシニアのための特別割引デー「First Friday」学生証をお持ちの方と65歳~69歳の方は、毎月第一金曜日(9月5日、10月3日)100円
URL/www.arttowermito.or.jp
※詳細は公式ウェブサイトをご確認ください。

Text:Hiromi Mikuni

 

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