エネルギーが満ちる東京の街は、訪れるたびに異なる表情を見せてくれる。今、注目が集まるスポットを舞台に岸本佳子が軽やかでノーブルなスタイルを映し出した。秋の気配を纏いながら、新たな発見が待つ場所へ。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年9月号掲載)
Ginza Sony Park

1966年の誕生以来、銀座のランドマークとして親しまれてきたソニービルが、今年Ginza Sony Parkとして新たな物語を歩み出した。“街に開かれた施設”という創業時の設計思想を受け継ぎ、親しみやすい「銀座の公園」としてその場所を拡張。建物の中にいながら外の光や風を感じられる、開放的な吹き抜け空間が広がる。
無機質なコンクリートの建築に存在感を放つのは、漆黒に包まれたレザーコート。しなやかに身体に沿うシルエットが、洗練された構造美に呼応する。
銀座ソニーパーク
東京都中央区銀座5-3-1
Nanzuka Taken

入口の小さな覗き穴に目を当てると、その先にはまるで宇宙のような空間が広がっていた。ここは、アートギャラリーNANZUKAが2024年7月に渋谷にオープンしたアートバー、NANZUKA TAKEN。近未来的な作品に囲まれながら、種類豊富なウィスキーやワインを楽しむことができる。
ミニマリスティックなニットドレスは、「スタンダード」をテーマにしたバレンシアガの2025年秋冬コレクションから。ビッグシルエットのニットにはピンが留められ、ギャザーが中央に寄せられることでユニークなフォルムを作り出す。

店内はオーナーの南塚真史が自らアートディレクションを手がけ、中村哲也による家具や空山基らによる作品が暗闇の中に光を浮かべる。隠し扉の奥には、会員制バーも。
非日常を体感できる空間では、コンテンポラリーなシルエットを纏って。前後を反転させたようなジャケットに、胸元まで切り込んだフロントとタイトに絞り込まれたウエストが加わり、身体の輪郭に鋭さと緊張感を与える。
ナンヅカ テイクン
東京都渋谷区渋谷2-17-1 渋谷アクシュ2F
Hibiya Okuroji


JR有楽町駅と新橋駅を繋ぐ高架下にひっそりと佇むのは、全長約300メートルにわたりこだわりの飲食店や専門店が並ぶ日比谷OKUROJI。明治時代から残る煉瓦アーチを活かしたその空間は、何かを探し求めたくなるような静かな高揚感と、隠れ家のようなムードが漂っている。
深いブルーのドレスにはロングフリンジが付いたグローブを添え、エッジを効かせて。オールホワイトを選ぶなら、ホースビットで繋がれたストラップでミニマルな中に遊び心を。
日比谷オクロジ
東京都千代田区内幸町1-7-1
Takanawa Gateway City

100年先の未来を見据えた新たな都市空間、TAKANAWA GATEWAY CITYが、2025年3月27日にまちびらきした。最先端の技術と豊かな自然が融合したこの街は、高輪ゲートウェイ駅周辺の広大な敷地に、オフィス、商業施設、ホテル、住宅など多様な都市機能が集約する。
風をまとうような軽やかなルックが、そんな新しい街の躍動と調和した。フローラルモチーフとポルカドットの二つの柄が、ロマンティックかつアーティなドレス。
※背景のアート作品100 colors no.53「100色の道」は、現在展示を終了しています。

最新のテクノロジーを体感することができるのも、この街の魅力。駅前には自動走行モビリティ「iino」が回遊し、誰でも自由に乗り降りすることができる。スピードは歩行者に合わせた時速5km以下で、ふとした景色や小さな発見に出会えるように設計された。
上品な赤のドレスは、日本の衣服から着想を得たディオールのフォール コレクションからの一着で、着物の袖を思わせる優美なシルエットが印象的。動きに合わせて、生地が静かに空気を纏う。
※写真は演出上の表現です。手すりや天板の上にはお乗りにならないようご協力をお願いいたします。
高輪ゲートウェイシティ
東京都港区高輪2-21-2
Home/Work Village

懐かしい学校の記憶が宿るこの場所は、旧池尻中学校跡地をリノベーションした複合施設、HOME/WORK VILLAGE。今年7月にグランドオープンを迎え、「働く」「遊ぶ」「学ぶ」という3つの機能を軸に、飲食店やオフィス、シェアキッチンやブックラウンジなど、今らしくユニークな施設が入る。手洗い場など、当時の面影を残す場所も随所に。
シャネルのシグネチャーであるツイードジャケット。その上からチュールのドレスを重ねた現代らしい装いが、懐かしさと新しさを融合したこの場所に響き合う。

屋上のエリアには、仲間とともに野菜や果物を育てることができるコミュニティ型農園「ART FARM IKEJIRI」が広がる。施設各所ではワークショップやマルシェ、アートイベントが開かれ、人と自然、文化の循環がゆるやかに育まれていく。
そんな開かれた空の下、レトロなムードを纏ったルイ・ヴィトンのワンピースが軽やかに揺れた。アイコニックなモノグラム・モチーフが細かく配され、ウエストラインを引き締める細身のベルトがアクセントを添える。
ホーム/ワーク ヴィレッジ
東京都世田谷区池尻2-4-5
Akai Bar

渋沢栄一が設立した第一国立銀行の別館がリノベーションされ、2020年に誕生したHOTEL K5。今年開業5周年を迎え、施設内にAKAI BARが新たにオープンした。ここは、架空のキャラクター「アカイさん」がオーナーを務めるというユニークなコンセプトのバー。店内には、希代の蒐集家だという「アカイさん」がキュレーションしたオブジェや雑貨が並び、幻想的な空間が広がる。
赤に染まった店内には、ホワイトのドレスがひときわ目を引く。レースのグローブやボリュームのあるファーストールを合わせて、リッチな気分に浸りたい。
アカイ バー
東京都中央区日本橋兜町3-5 K5 1F
Photos:Takaki Kumada Fashion Director:Yoshiko Kishimoto Hair:Koichi Nishimura Makeup:Shinobu Abe Edit&Text:Makoto Matsuoka
