【独占インタビュー】中川翔子×安部まさき「双子を妊娠。すべての妊婦さんと母に、ギザ感動!」

かねてから「子孫を残したい」と宣言していた中川翔子さん。今年5月に自身のバースデーライブでファンに妊娠を報告し、新事務所を立ち上げるなどさらにパワフルに活躍している。だが、30代後半での妊娠は決して簡単なことではないし、妊娠してからも不安や疑問は尽きない。そんな中川さんの相談に、Numero.jpの連載でおなじみの産婦人科医・安部まさき先生が答えてくれた。体の変化や出産、今後のキャリアについて悩むひとりの女性としてのしょこたんトークをお届けする。
不妊治療、そして2度の流産を経て妊娠へ
安部「まずは中川さん、ご懐妊おめでとうございます」
中川「ありがとうございます! 子どもが欲しい、会えなくなった家族の血も残したいなと思っていたので嬉しいです。でも、それはすごくハードルが高いことで、そもそも出会いがないと無理だと気づいて(笑)。いつかのためにと30代なかばに卵子凍結をしたこともあります」
安部「実際に、働く30代の女性で卵子凍結を希望される方は増えていますね。ただ、皆さんが想像されているよりも大変なことだし、凍結した卵子を使うチャンスがくるか、うまく妊娠するかはわからない部分があります」
中川「はい。痛い注射をしたり厳密にお薬を飲まなければならなかったり。病院で『卵子を20個くらいとれそうだよ』と言われていたのに、いざ採取したら1個でがっかりしたりと、物理的にも精神的にも大変でした。しかも未受精卵だと解凍した時に崩れてしまいやすいと聞いて」
安部「医療は日々進化していますが、やはり万能ではありません」
中川「卵子だけ採れば大丈夫じゃないんだなと気付かされて。このまま子どもには出会えないのかなとふわっと思っていた37歳の時に、奇跡的に結婚が決まったんですよ。相手の方も同い年だったので受精卵を採りましょうとなって、凍結はできたんですね。チャレンジしてすぐ着床したので、嬉しくて親友には話したんですよ。そうしたら、5週目くらいでそれがだめになってしまって。自分自身もショックでしたし、うまくいかなかった時に周囲にも気を使わせてしまうんだと思い知らされました」

妊活とキャリアの板挟みで、悩みっぱなし
中川「受精卵が6個採れたのでグレードの高いものからトライしましょうということになったのですが、空砲のまま育たなかったんです。ぎゅいん、とお腹が痛い瞬間があってだめかもと感じてはいたのですが、実際そうなった時はとてもショックでした」
安部「それはとてもお辛い経験でしたね。ただ、お母さんの過ごし方に原因があるわけではないことは心に留めておいてください。妊娠をされた方の約10回のうち、2〜3回は流産が起こるとされています。その多くは受精の時点で偶然に起きるもので、防ぐことも予測することもできません」
中川「そうなんですよね。よく聞いてはいたけれど、不妊治療は1000本ノックの世界なんだなと。病院の先生にも『難しいものだから、着床したからとすぐ喜ばないで』と言われたのですけれど、やはり落ち込みますね」
安部「そうですよね。特に働いている女性が不妊治療するとなると、お仕事との兼ね合いも大変です」

愛猫家で知られる中川さん。現在は8匹になる猫たちは、妊活やマタニティライフを支えてくれている大切な家族。くりくり目のピンクちゃんとパチリ。
中川「着床はしても5週、6週と続けて2回も化学流産をしてしまい、引き裂かれるような悲しみと、それでも通常通りお仕事をしながら、また次も繰り返してしまったらどうしよう、と不安に押し潰される。不育症検査もしました。ショックが大きかったため次のタイミングはどうしようと悩んでいたところ、全国をまわるキャンペーンのお話をいただきました。健康体でもかなり負担がかかるくらい飛行機や新幹線であちこち移動するため不妊治療をしながらは厳しい。39歳の半年間、不妊治療がストップしてしまうこと、それによって後悔してしまうのも怖い。だけどずっとやりたかった夢が叶うチャンスでもあった。働く女性にとってキャリアがストップする恐怖、妊娠というタイムリミットとの間で考えが揺れる難しさもありました。結果的には、心のキズを一旦癒やす意味でも切り替えてこの時期仕事に集中して後悔はないですが、ずっとどうしようか悩みは頭から離れなかったです。やはり、高齢の母体は半年でもだいぶ違ってくるんだと思います」
安部「妊活中や妊娠初期の飛行機での移動は、確かにあまりおすすめできません。妊娠していて移動先で何かトラブルがあっても対応できないことが多いですし」
中川「これは働いている妊活中の方全員に当てはまると思うのですが、どうなるかわからないのにお仕事をセーブするというのは難しい。しかも、妊娠の初期ってすごく疲れやすいですよね。卵を子宮に入れただけで全身が火照る感じがあるし、ちょっとした新幹線移動でもぐったりしてしまう。それでうまく着床しなかったりすると、働いている私が悪いのかなと自分を責めてしまったり。それに、着床してつわりが始まっても、誰にも言えない、先の予定は決まっていく、体も気持ちも辛い。そういった悩みを乗り越えて働いているママさんたちはみんなすごいと感動しました」
「このままだと入院だよ」と怒られた妊婦ライフ

安部「受精から着床、そして出産までには多くの大切な過程があり、無事に命が誕生するのは本当に素晴らしいこと。お母さんのもとにきてくれた小さな命は、たとえお腹の中だけの命だったとしても、その子はその子なりの寿命をきちんと全うしたのだと思います。流産はとても辛く、心にぽっかり穴があくような経験ですが、どうかご自身を責めることのないようにしてくださいね」
中川「通っている病院の先生もそうおっしゃっていたのですが、やはり気持ちの持って行き場はないんですよね。今年に入って着床はしたけれど、9週の壁、12週の壁…と、妊娠中に乗り越えなければいけない壁もたくさんある。着床してもすぐには喜べない気持ちで過ごしていました」
安部「そんな壁を乗り越えて、恒例のバースデーライブでファンに報告されてましたね」
中川「正直、妊娠を発表するのはすごく怖かったんですよ。でも、来てくれた方々がすごく優しくて。ライブでは椅子に座る場面もあったのですが、ファンの皆さんが『私たちも大人だから、座りながら観られるのは嬉しい』なんて言ってくれて、とても素敵な感覚を覚えました。それまでは妊娠や出産後のキャリアに不安があったのですが、乗り越えられるなという気持ちになったんですよ。それに、子どもがいて働いてるママさんたちがいろいろ教えてくれるのも嬉しい。先生も、なんと4人のお子さんがいらっしゃるママさんだと聞いて、うかがいたいことがいっぱい!」
安部「はい。中川さんのお腹にいるのは双子ちゃんだとうかがったのですが、うちにも双子がいます。双子だとつわりが出やすいし、お腹も重くなるし、妊婦ライフがさらに大変なのは医師としても母としてもよくわかります。体調はいかがですか?」
中川「びっくりするくらいむくみが酷かったんですよ。検診の時にたくさんの先生が診にいらしたほどで『このままでは入院だよ』と脅されました。ずっと美味しいもの大好き、好きなものを食べる人生だったのですが、食事に気をつけるようになりましたね」

ある日の朝食。バナナにグラノーラをかけて満足感を出しつつ、塩分はほぼゼロに。もともと大好物だったフルーツが日々の食卓に欠かせないものに。
メンタル最優先! 20年続けたエゴサもストップ
安部「確かに、高齢妊娠では妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症が起こりやすくなります」
中川「そうなんですよね。本来、塩分を管理しないといけないのに、5月が誕生日だったので『今のうちにラーメン!』なんて食べていたんですよ。病院の先生に怒られるまで、『食事は栄養になるからいいじゃん』と思っていて。そうしたら『高齢、ハイリスク、多胎をなめるな!』って。あんなに怒られたのは大人になってから初めてです(笑)」
安部「そこは命がかかっていますから、医者の側も遠慮せずお話しますよね。特に、むくみがひどい妊婦さんは血圧が上がりやすいのが心配」
中川「たまたませいろがブームだったこともあり、蒸し野菜中心の食事に切り替えたらむくみがかなり改善されて。久しぶりに足首がある自分を見ました(笑)。今はうどんやラーメンといった麺類、それにおせんべいなどにも注意しています」
減塩生活が功を奏してむくみがかなり改善。塩分を1日8g以内に抑えられるよう、ポン酢とせいろが大活躍。
安部「そのほかのマイナートラブルは大丈夫ですか?」
中川「胸にも背中にもニキビが出て、頭皮も皮脂が出てぺったり。それに、むくみのせいか指が動かない時があり、ゆっくりほぐすようにしています。ただ、嬉しい変化もあって。最高なのは、毎日の胎動とはちきれそうな胸! 若くて痩せているときにこの胸だったらグラビアいけたのにと思います(笑)」
安部「妊娠中は心も体も揺れ動きますが、そんな中で前向きに過ごせている中川さんは素晴らしいですよ」
中川「ブラが2カップ上がりましたからね。でも、胸の見た目や様子も変わってきた時はドキドキしました。先輩ママに元に戻ると言われてほっとしましたが、そういうことも含め、すべてにリミテッド感があるから楽しんでおかなくちゃと思います」

妊娠線予防ケアに活躍しているクリームとオイル。産後はベビーのボディケアにも使えるというナチュラル成分で、爽やかな香りがお気に入り。
安部「毎日の変化や小さな幸せを感じながら妊娠ライフを大切に楽しんでいる妊婦さんの姿を見ると、私も嬉しくなり温かい気持ちになります。そして、出産後は時間がなくなるから、今のうちにひとりの時間、旦那さんとの時間もぜひ楽しんで」
中川「ただ、ミニマリストの旦那とものを出しっぱなしにしがちな私で喧嘩になって、3日ほど実家にプチ家出したりしてましたよ(笑)。よくないなと思って帰宅したら、彼もすごく気を使って優しくしてくれて。それと、エゴサをやめたんですよ」
安部「それは素晴らしい! 妊娠中の精神的なダメージは産後うつにつながる、育児に影響するという報告もあるんですよ。著名人に限らず、SNSやネットの情報はあまり入れないほうがベターだと私は思います」
中川「Xがまだないような、ミクシィの頃から20年間やってきたエゴサをやめるのは大きな決断でした。でも、独立してからインスタを始めたのですが、インスタってめちゃめちゃ治安がいい。先輩お母さんがアドバイスしてくれたりして、これは心の平和にいいなと思ったんですよ。ヤフーのコメントで傷ついたりするのは絶対良くないなと思って切り替えました」

双子ということもあり、どんどん大きくなるお腹に日々驚かされてばかり。移動もしんどくなるけれど「胎動を感じるのはやっぱり最高!」
胎動に励まされ、強くならねばと決意
中川「一時期、ネガティブな意見をみて食欲が落ちてしまった時があり、旦那さんにデジタルデトックスを強制されたんですよ。現場にもスマホを持っていけなかったんですが、これが逆に良かった。スマホをだらだらみる時間を減らしたら、こんなに時間あるんだ!と(笑)。久々に紙の本を読む時間にあてたり、アニメ『進撃の巨人』にどっぷり浸ってすべて観切ったり。あと、温泉に行ったりもしたんですが、それは大丈夫なんですよね?」
安部「問題ありませんよ。赤ちゃんはママよりも体温が1℃高いので長湯はNGですが、温泉に入ること自体は大丈夫」
中川「そう聞いて安心しました! ちょっと前に読んでいた『メダリスト』という漫画で、レジリエンスという言葉を知って。嫌なことがあっても幸せに目を向けるあり方っていいねと、旦那と椿山荘に行って強制レジリエンスしました」
安部「遠方へのマタ旅はおすすめできませんが、近場でのホテルステイはいいですね」
中川「温水プールだと陸より軽いから歩けたりもするし、スパで妊婦さんのためのメニューもあるから、めちゃ生き返ったんですよ」

妊娠中は遠方への旅行が難しいから…と選んだのが都内ホテルでのリラックスステイ。見事な庭園を擁する『椿山荘』でのショートトリップで、煮詰まっていた気持ちがぐっとラクになったそう。
安部「高齢だったり合併症があったりとハイリスクな妊婦さんには家でゴロゴロをおすすめしているんですが、病院にすぐ行ける範囲でのリラックスはぜひ取り入れて」
中川「もし1人だったら、ストレスですごく追い詰められていたかもしれません。でも、私が落ち込んでいる時に赤ちゃんが動いたりすると「わお! ありがとう!」って思うじゃないですか。そして、血もつながっていない旦那さんも優しくしてくれる。家族ってすごいな、最大の味方であり、助けてくれる人なんだなと噛み締めました。もちろん、いろんな境遇の方がいて、1人で頑張る人も、立ちっぱなし仕事に耐える人も、不妊治療をずっとやっている人もいる。私の母などは、当時の母子手帳を見たら「私は今つわりで大変だけど、あなたは今どこで誰といるの」なんて書いていたり・・・。いろんな境遇の人がいますが、みんなよくやっているなと感動します」
ラプンツェルのドレスを着せるはずが、まさかの男子
安部「そういえば、双子ちゃんはともに男の子なんですよね」
中川「そうなんです。私は早くに父を亡くしたこともあって、家に男性がいたことがほとんどなかったんですよ。女家系だからなんとなく女の子だと思い込んでいて、ラプンツェルのドレスを着せようって思っていたら、まさかの男子でした(笑)」
安部「こればかりはなかなか選べないものですものね」
中川「私はずっと、母と友達のような関係性で。いまだに“ピーナッツ親子”と呼ばれるくらい仲良しなんですよ。だから自分の子どもも女の子と勝手に思い込んでいたんですね。娘が生まれたら、死ぬほど課金してきたマンガを読ませるぞと思っていたんですが、男の子とわかった瞬間、そんな気概がスッとなくなりました」

母であり親友でもある桂子さんも、マタニティライフを支えてくれる大切なひとり。
安部「赤ちゃんの性別がどちらであっても、その命がこの世に生まれてくること自体がとても尊く、素晴らしい奇跡ですものね。私自身も男の子が欲しいと思っていましたが結果として4人の娘に恵まれて。それが今はとても嬉しく幸せだなと思います」
中川「それに、性別がどちらだというよりもはるか手前に、命を守っていくことってどれだけ恐ろしいことなんだろうという気持ちはありますね。まだなんのセーブデータもないこの子たちにこの世の恐ろしさと嬉しさと楽しさを伝えていくって、すごいことじゃないですか」
安部「医師としていろいろな命や家族の形に触れていると、本当にその通りだなと思います」
中川「私は母が働いているから祖父が父の代わりだったのですが、マンガをいっぱい買ってくれたり、水族館やプラネタリウム、海などにたくさん連れていってくれた。そういうものすべてが自分の“好き”になって、いまの仕事にも役に立っている。小さい時に、そういう“楽しい”をたくさん教えたいし、自分ももう一周、楽しみたいですね!」
安部「中川さんに、そんな楽しい育児の世界をシェアしてもらうのを楽しみにしています!」

Photos:Kouki Hayashi Fashion Editor:Ako Tanaka Hair & Makeup:Mifune(Shoko Nakagawa),Kei Kouda(Masaki Abe) Interview & Text:Satoko Takamizawa Editorial Assistant:Saki Tanaka,Miyu Kadota Special Thanks:Maki Konikson,Masaki Abe,Nanohana Ladies Clinic
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