各分野のプロフェッショナルたちに、自身のクリエイションを完成するのになくてはならない大切なこだわりの道具を見せてもらった。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年7・8月合併号掲載)
Natsuko Shoji|庄司夏子(été オーナーシェフ)
高村刃物製作所のペティナイフ

「切り口の滑らかさがケーキの美しさに直結する」
一日1組の完全紹介制フレンチレストラン「été(エテ)」のオーナーシェフ、料理人・庄司夏子が、数ある調理道具の中で筆頭に挙げた高村刃物製作所の包丁。世界的に日本製の包丁は人気だが、高村作の包丁は最高峰と称され、nomaのレネ・レゼピをはじめ、名だたる一流シェフが愛用し、ウェイティングリストができるほど料理人なら誰もが憧れる特別な存在。職人が使い手を見極めた上で、それぞれの用途に合わせた包丁をすべて手作りしている。庄司も初めて手にしたとき「料理人として認めてもらえた」と達成感を得たという。

その最初の一本は、庄司を有名にしたシグネチャー、「フルール・ド・エテ マンゴータルト」をはじめとしたフルーツケーキを作る上で欠かせないペティナイフ。圧倒的な切れ味の良さは、ケーキの仕上がりの美しさに直結する。果物の細かい繊維まで一気に切れる滑らかでみずみずしい断面は、美しい見た目を長く維持する上に、舌触りも良く、おいしさを一層引き立ててくれる。
また、「マンゴーなど柔らかい果物は手で押さえると傷むので、片手でスムーズにカットしなければなりません。それが可能なのもこの包丁の大きな魅力」と語る。

多くの料理の現場では個々にマイ包丁を持つのが一般的だが、étéではスタッフでシェアしている。そこには道具にまつわる上下関係や余計な気遣いを排除したいという庄司の思いがある。「包丁一つでケーキの仕上がりが変わってしまう。共有することで作品のクオリティを最大限に引き上げ、お客さまに提供することが一番大事です」
Photos:Ai Miwa Edit&Text:Masumi Sasaki

