ソムリエ店長がそっと教える、世界一わかりやすいシャンパンの基本| Numero TOKYO
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ソムリエ店長がそっと教える、世界一わかりやすいシャンパンの基本

みなさんこんにちは、ワインブロガーのヒマワインです! さて、夏になると飲みたくなるワインといえばスパークリングワイン。そしてスパークリングワインの代名詞ともいえるのが、なんといっても「シャンパン」です。

でも、「シャンパンってどんなワイン?」と聞かれてもうまく答えられないという人も多いはず。そこで、ソムリエ店長こと東京・恵比寿の大型ショップ「ワインマーケットパーティー」の沼田英之店長に、「世界一わかりやすいシャンパンの基本」を教えてもらいました。

以下、沼田店長と私・ヒマワインの対談形式でお届けします!

【目次】
シャンパンとはどんなワインなのか?
シャンパンについて知っておきたい3つの基本
【甘くないシャンパン】ビルカール・サルモン ブリュット・ナチュールNV
【白ぶどうだけで造るシャンパン】トリボー・シュロッサー ブラン・ド・シャルドネ NV
【年号入りのシャンパン】ボーモン・デ・クレイエール フルール・ノワール ブラン・ド・ノワール 2015
【ロゼのシャンパン】ペリエ・ジュエ ブラゾン・ロゼ NV
【甘いシャンパン】ミッシェル・ジュネ MG BB シュガー・ヴィジョン・ブラン・ド・ブランNV

シャンパンとはどんなワインなのか?

ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回は、『世界一わかりやすいシャンパンの基本』がテーマです」

沼田店長(以下、沼田)「うーん、ハードルの高いテーマですね(笑)」

ヒマ「まず、シャンパンとはなにかから教えていただきましょうか」

沼田「そうですね、まず世界一有名なスパークリングワインですよね。フランスのシャンパーニュ地方で造られるワインで、フランス国外ではアメリカ、イギリス、そして日本の順に売れています」

ヒマ「おお、日本は3位なんですね」

沼田「そうなんですよ。実は日本人はシャンパンが大好きなんです。イギリスやイタリア、その他世界のいろいろな場所でおいしいスパークリングワインは造られているのですが、特別な日に飲みたいのはやっぱりシャンパンという方は多いです」

ヒマ「わかります。シャンパンには開けるだけでその時間を特別にする力がある……!」

沼田「シャンパンと呼ぶ人もシャンパーニュと呼ぶ人もいますが、これはどちらも同じもの。日本では『シャンパン』のほうが馴染みが深いので、この記事ではシャンパンと呼びましょうか。もちろん、シャンパーニュと呼んでもまったく問題ありません」

ヒマ「どちらでも、好きなように呼んだらいいということですね」

シャンパンについて知っておきたい3つの基本

沼田「そのうえで、シャンパンの本当の基本の基本のところを3つだけお伝えしたいと思います。まずは品種です」

ヒマ「『シャンパン』というぶどう品種があるわけではないですもんね」

沼田「そうですね、シャンパンに使える品種はいくつかあるんですが、知っておくべきはたったの3種類です。すなわち、シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエです」

ヒマ「はい。シャルドネは白ぶどう、残りのふたつは黒ぶどうですね」

沼田「もうひとつ、覚えておきたいのが甘辛度です。シャンパンの非常に大きな特徴なんですが、最後に栓をするときに甘いシロップを足すんです」

ヒマ「これはもうめっちゃくちゃ大きな特徴ですよね」

沼田「当然、シロップをたくさん足せば甘くなりますし、まったく足さなければドライな味わいになります。これによって味わいは大きく変わるので、もし甘いシャンパンが欲しいなら、その旨を店員さんに伝えるといいと思います」

ヒマ「シャンパンには甘いのもある。これは覚えておいていただきたいですね。お酒が苦手な方でも飲みやすいですから」

沼田「そして特徴3つめとして、年号が入っているものと、入っていないものがあることも覚えておくといいですね」

ヒマ「多くのワインは『2022』とか『2018』とか年号が入っているけれど、シャンパーニュの場合、多くは年号がないですよね。その理由は……」

沼田「割愛しましょう(笑)なぜこの話をしたかといえば、贈り物をする際に年号入りは便利だからです。たとえば2015年に結婚したのなら、その年号入りのシャンパンを奥さんにプレゼントするとか」

ヒマ「そういう気の利いたことをできるようになりたいです(笑)」

沼田「さて、シャンパーニュには5,000生産者くらいがいます。そのうち300弱くらいが『大手』と呼ばれる生産者です。大手メゾンのトップ30社が言えたら、十分シャンパン通と言えます」

ヒマ「モエ・エ・シャンドンに、マム、パイパー・エドシック、テタンジェにボランジェ……ってな具合ですね」

沼田「でも、それも知らなくて大丈夫です」

ヒマ「シャンパンは基本、なにを飲んでもおいしいですから」

沼田「詳しく知りたいな~と思ったら、まずはこの“大手メゾン”のシャンパンを飲むのがおすすめ。そうしているうちにマニアックな小規模生産者も気になってくる、というのが正しいシャンパンのハマり方です」

ヒマ「私も飲み始めのころは、大手生産者のシャンパンを順番に飲んだりしていました、そういえば」

沼田「以上の話を踏まえて、実際のワインを飲みながらもうちょっと詳しくシャンパンについて解説していきましょう」

【甘くないシャンパン】ビルカール・サルモン ブリュット・ナチュールNV

ヒマ「まずこれは、シロップを足さないタイプのシャンパンですね。最近ちょっと流行りですよね」

沼田「砂糖を加えないことをフランス語でノン・ドザージュと言いますが、それを略して『ノン・ドゼ』なんて言ったりもしますね。これはビルカール・サルモンという大手生産者の造るシャンパンです」

ヒマ「普通は1リットルあたり8グラムとか、それくらいの糖分を添加するんですよね」

沼田「1リットルあたり何グラム入れるかっていうのが味の決め手ですし、シャンパン独特な個性ですよね。発泡性のないワインのことをスティルワインと言いますが、スティルワインで仕上げに糖分を添加するというものはほぼないと言っていいですから」

ヒマ「いわば『味付け』を行う。その点も、シャンパンの特異性ですよね。世界各地のスパークリングワインも同様の手法で造られていますが、そのお手本となっているのはシャンパンですもんね」

沼田「その通りだと思います。そんななかで、このワインはドザージュを行わない。よほど原酒に自信があるんだと思いますし、実際に飲んでみてもおいしいですよね」

ヒマ「とてもおいしいですね。以上のようなウンチクを頭に入れて飲むと、より一層おいしいと思います(笑)」

【白ぶどうだけで造るシャンパン】トリボー・シュロッサー ブラン・ド・シャルドネ NV

沼田「最初にシャンパンには主に3種類の品種が使われると言いました。そのうち白ぶどうは1種類だけ。その1種類『シャルドネ』だけを使ったシャンパンです」

ヒマ「白ぶどうだけで作ったものを『ブラン・ド・ブラン』、黒ぶどうだけで作ったものを『ブラン・ド・ノワール』と呼ぶんですよね。私はブラン・ド・ブランが大好物です」

沼田「シャルドネはシャンパンで一番高く取引される品種なんです。そのシャルドネだけで造るのがブラン・ド・ブランと思えばいいと思います」

ヒマ「なるほど」

沼田「シャンパンは買ってからしばらく自宅で寝かせるとまた味わいが深まっておいしいのですが、ブラン・ド・ブランは熟成させても最高においしい」

ヒマ「ブラン・ド・ブランの特徴を説明するならばどんな感じでしょうね」

沼田「黄色い果実のイメージですね。レモン、グレープフルーツ、そこに焼きたてのパンのようなニュアンスが加わるのが特徴です」

【年号入りのシャンパン】ボーモン・デ・クレイエール フルール・ノワール ブラン・ド・ノワール 2015

ヒマ「これは黒ぶどうだけで造る『ブラン・ド・ノワール』ですね。しかも2015年の年号入り。つまり、2015年に収穫したぶどうだけで造られているということですね」

沼田「ですね。シャンパンは、色々な年のブレンドで造ることが多いんです。そして、年号入り=『いい年』であることがほとんどなんです」

ヒマ「気候が良くて、質の良いぶどうがたくさん収穫できた年に造られるイメージがあります」

沼田「シャンパンで年号入りになるとちょっと高いのが難点なのですが、その分おいしいんです。シャンパンのボトルに年号が入っていたら、それは『いいシャンパン』だと思っていただいていいと思います」

ヒマ「これはひとつ前に飲んだブラン・ド・ブランとは異なる、『ブラン・ド・ノワール』ですね」

沼田「その通り。シャンパンに使われる3品種のうち黒ぶどうは『ピノ・ノワール』と『ムニエ』の2種類ですが、これはピノ・ノワールだけを使っています。通常の赤ワインと異なり、醸造時に皮を取り除くことで白ぶどうのような色合いになっています」

ヒマ「黒ぶどうも皮を剥けば果実の色は白ぶどうと変わらないですからね。そしてこのワインもおいしいなあ」

沼田「ブラン・ド・ノワールならではの厚みのある味わいですよね。2015年収穫で96カ月熟成させていることも、味の深みを生んでいます」

ヒマ「黒ぶどうだけで造ると『ブラン・ド・ノワール』と呼ばれること、そして熟成したシャンパンはおいしいってことを覚えていただきたいですね!」

【ロゼのシャンパン】ペリエ・ジュエ ブラゾン・ロゼ NV

ヒマ「おっ、続いてはロゼですね。シャンパンにはロゼもあるということですね」

沼田「その通りです。そして、通常のロゼワインと異なり、多くの場合、ロゼシャンパンはシャンパンと赤ワインを混ぜて造ります」

ヒマ「これも実は衝撃的なんですよね。考えてみると変なワインですね、シャンパンって(笑)」

沼田「このワインにも10%くらい、シャンパーニュ地方で造られた赤ワインが入れられています」

ヒマ「ロゼシャンパンって、どう楽しむものなんでしょう?」

沼田「やっぱり、シンプルに色ですよね。グラスに注ぐと気持ちが華やぎますから、お祝いの席なんかにはぴったりです。そして実はエスニック系の料理に合うんです」

ヒマ「へー、そうなんですね」

沼田「ベトナム料理やタイ料理によく合いますし、これはよく言われることなのですが、ロゼっていうカテゴリー自体がフードフレンドリー。個人的には先日『そぼろごはん』に合わせたんですが、よく合いました」

ヒマ「そぼろごはん! 急に庶民的ですね(笑)」

沼田「和でも合う、ということですね。食事を問わないっていうのもロゼシャンパンの特徴でしょうか。ロゼシャンパンは、とくに女性へのプレゼントにも最適だと思います」

【甘いシャンパン】ミッシェル・ジュネ MG BB シュガー・ヴィジョン・ブラン・ド・ブランNV

ヒマ「最後は甘口シャンパンですね」

沼田「はい、1リットルあたり35gの糖分を添加されています」

ヒマ「料理で大さじ1が15グラムですから大さじ2杯。なかなかの量ですが、いざ飲んでみるとこれが全然甘ったるくない」

沼田「シャンパンには糖分の添加量によって呼び名が微妙に変わるのですが、それも今回は割愛しましょう。ともかく、甘いのもあれば甘くないのもあるということを知ってもらいたくて、選んでみました」

ヒマ「甘いんだけど、シャンパン特有の酸味もあるから飲んだ印象はさわやか。ワインちょっと苦手かもっていう人がシャンパンに挑戦するとしたら、こういう甘いものを選ぶのがいいかもしれませんね」

沼田「間違いなく飲みやすいですからね。フレッシュなフルーツと合わせたら最高においしいですし、お寿司とも合いますよ。とくに、玉子やかんぴょう巻きとの相性は最高」

ヒマ「最初の1本で青魚、2本目のブラン・ド・ブランで白身、3本目のブラン・ド・ノワールや4本目のロゼでマグロ……同じシャンパンでも、特徴によって合う寿司が変わりそうですね。無理に寿司でたとえる必要はないかもしれませんが(笑)」

沼田「一言でシャンパンといってもそれくらい個性が違うっていうことです。品種の違い、甘辛度の違い、年号があるかないか。それによって大きな違いがあるんです」

ヒマ「いやー、こうして飲み比べてみると、改めてシャンパンと一言でいってもいろいろあるってことがよくわかりました」

沼田「そうなんですよ。今日お話ししたのは本当に『基本のキ』の部分。シャンパンは知れば知るほど楽しめますから、興味を持たれたらぜひいろいろ調べたり、ワインショップの店員さんに聞いてみたりするといいと思います。そしてぜひ、シャンパンならではの味わいと香りを楽しんでくださいね」

ワインマーケット パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
winemart.jp

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Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之 Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット パーティの店長を務める。
ヒマワイン Hima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawine
Twitter:@hima_wine
 

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