旅に魅せられた6人の俳優たち。何が彼らをアクティブにさせるのか。カメラの向こうには未知なる冒険が広がっていた。第6回目は、初めての一人旅は中学2年生のときという小関裕太に話を聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年6月号掲載)

感覚に従って自由に歩く
初めて一人で旅に出たのは中学2年生のとき。「南に行こう」とだけ決めて、自転車やバスは使わずにひたすら歩き続けました。5日間の予定でしたが、先に体に限界がきてしまって、2日目で家に帰りました(笑)。旅に出た理由は、当時の僕は今以上に感覚で生きる“感覚人間”で、地図も見ず、自分の方向感覚やその土地の匂い、風景などの要素だけを頼りに旅に出たら、自分の感覚が養われて、もっと長所を伸ばせると思ったんです。足も痛むし、野宿もするしで、はたから見れば散々な旅だったかもしれません。でも自由に歩き回る楽しさが忘れられず、それ以来、旅が大好きになりました。

普段旅に出るときは、95%は無計画のまま出発します。現地に行ってみないと、やりたいことのイメージが湧かないので。特に海外旅行の場合は目的地に到着したら、宿の場所だけ把握して、まずは散歩をします。「歩いているだけで何が楽しいの?」と思われるかもしれませんが、街並みを散歩しながら、そこに住む人の生活を想像するのが好きなんです。

先日行ったフィンランドでは、自転車専用道路があるという話を聞いていました。実際に見に行ってみると、確かに自転車の量がすごく多い。自転車で通る人々を横目に、「彼らは遊びに行った帰り道なのかな。それともこれから遊びに行くのかな」などと考えながら歩いた記憶があります。そうやって生活を想像しているうちに「明日はこれをしよう」とやりたいことが浮かんでくるんですよね。
自分だけで作り上げる写真という作品
もともと写真を撮るのが大好きで、旅行中に限らず、日常的に「これは自分の中で残しておきたい瞬間だな」と思ったらシャッターを押すようにしています。もはや生活の一部みたいなものです。昔は旅と一緒で、写真を撮るのは自分探しの一環でした。今は雑誌で写真連載をさせていただくようになって、「写真=自分の作品」という気持ちが強くなったような気がします。俳優としての作品もどんどん世の中に残っていきますが、それは自分だけで作り上げられるものではないですよね。写真としての作品を自分だけで作り上げる。写真で自分の心情を伝えるのは難しいなとは思いつつ、「この思いを記録したい」と感じたら撮るようにしています。

最近の旅の目的は、「日常では体験できない面白いことを探すこと」。どこかでハプニングを求めている自分がいます。19歳で初の海外一人旅としてNYに行ったとき、乗る予定だった飛行機で火災が起きたり、ロストバゲージしたり、ホットドッグを1個注文したらとんでもない金額を請求されたりと、散々な目に遭いました。最初は「え、どうしよう!」と焦りましたが、想定外のことが重なると適応能力が上がるし、後日誰かに「こんなことがあってさ」とエピソードを語る楽しみもできる。あと、日常は選択の連続なので、何かの選択に迷ったとき、旅で養った感覚が助けてくれることも多いです。最近はより感覚が磨かれてきたのか、「この路地は雰囲気があるな」「こっちにおいしいものがありそうだ」などと、面白い場所へ自ら飛び込む余裕も出てきました。旅に出るたび、「次はどんな出来事が待っているんだろう」と楽しみです。
Photos:Yuta Koseki Interview & Text:Haruna Fujimura Edit:Miyu Kadota
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