広瀬すず、杉咲花、清原果耶インタビュー「ふっと吸い付くような距離感の3人でいられた」
旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.121は俳優の広瀬すず、杉咲花、清原果耶にインタビュー。

4月4日に公開した映画『片思い世界』。社会現象を巻き起こした『花束みたいな恋をした』の脚本・坂元裕二と監督・土井裕泰が再びタッグを組んだこと、あらゆる作品で引っ張りだこの3人がトリプル主演を務めることで大きな話題を呼んでいる。主演の広瀬すず、杉咲花、清原果耶に、仲睦まじい姉妹のような3人を演じたことへの思いや舞台裏を聞いた。
自然と3人の12年間を埋められた
──豪華な共演となりました。本作は脚本家の坂元裕二さんが、広瀬すずさん、杉咲花さん、清原果耶さんの3人で映画を作りたいと思われたことが発端です。作品のオファーを受けたときの率直な感想から教えてください。
広瀬すず(以下、広瀬)「私は10代の頃に坂元さんの『anone』という作品に出演させていただいたことがあります。もともと好きな脚本家さんだったので、年齢を重ねてまたご一緒できることが素直に嬉しかったです。当時は同世代がほぼいなく、大先輩に囲まれる現場だったので甘えながらお芝居ができる環境でしたが、今回は同世代の2人との撮影だったので、また別の感覚で臨めた気がします」
杉咲花(以下、杉咲)「坂元さんと、監督の土井さんと、すずちゃん、果耶ちゃんとご一緒できる可能性を聞いたときに、お受けしないという選択肢はないと思いました。坂元さんの作品は小さい頃からたくさん拝見していました。身近な暮らしの中にある引っ掛かりや、クスッと笑えるようなことがたくさん描かれながら、自分の視点にはなかったドキッとするようなメッセージも込められている。だからこそ、どんな脚本になるのかとても楽しみでした」
清原果耶(以下、清原)「本当になんて贅沢な企画なんだろうと思いました。参加できるのであれば、飛び乗るほかに選択肢はなかったです。こういったお話をいただけるという事実がものすごく嬉しかったですし、自分にとっては挑戦になると感じていたので、嬉しさ半分、緊張半分だったと思います」

──撮影の現場はどんな様子でしたか?
広瀬「ずっと3人でいました」
杉咲「ずっとしゃべっていたよね。本作の出演が決まったころ、果耶ちゃんが『ご飯に行きませんか』と声をかけてくれて。3人は12年間一緒に過ごしてきた役柄ということもあり、その時間をどうにかして埋められないかという気持ちは、きっとそれぞれにあったのではないかと思います」
清原「自然と仲良くなって、その後も何度かご飯に行きましたね」
──映画で3人は本物の姉妹のようでした。演じる上で意識はされたのでしょうか。
杉咲「何より2人のことを屈託なく愛したいという思いでした。ただ、それぞれの佇まいが、最初から役柄にリンクしていた部分があったようにも感じます」
広瀬「そうかも。意識はしているけど、すごく頑張る感じでもなく、すんなり受け入れられました」
清原「面倒見がいいのが美咲(広瀬)」
杉咲「リーダーシップを取ってくれる美咲。包み込んでくれるような」
清原「意外と奇想天外な優花(杉咲)」
広瀬「そうだね。ユニークで、ちょっとオタク気質で、自分の世界をちゃんと持っている優花」
杉咲「さくら(清原)はザッツ末っ子だよね。のびのびしてて」
広瀬「だからこそ、さくらに反抗されても『アイツ可愛いな〜!』って思えちゃう」
──とても素敵な関係性です!
広瀬「それこそクランクインの前に清原ちゃんが誘ってくれたご飯の会でわりといろいろなことを話せたのがよかったです。お仕事のこともそうだし、自分自身のことも。若干センシティブな部分をちゃんと共有できる者同士になってから撮影に入っているので、自然と3人の12年間を埋められていったように思います。ただ、家族のようであっても、距離が近すぎるのも違うと思うので、そこは気にかけながら」
──清原さんは、お2人をご飯に誘うのは最初緊張されたのでは?
清原「緊張していたとは思いますが、何より作品が始まる前に2人と会いたいという私欲が勝ってしまいました(笑)。2人の顔をとりあえず見ておきたいなと思って連絡したら、いいよ、いいよって言ってくれたので、優しさに甘えました」
広瀬「全員が、緊張する、緊張するって言いながらスタートしたよね(笑)」
杉咲「手が震えるぐらい緊張しました。ですが2人のことを知りたいという思いや、どうしたら信頼してもらえるだろうという気持ちが大きかったこともあり、そのときはパーソナルな話もたくさんした気がします。会話の中で、今作で3人が見つめるものはそう遠くはないのではないかと感じることができたことも嬉しかったです」
──本来は違った個性を持った3人なのに、映画を観ていると一つの共同体として3人が似た者同士にも見えて不思議でした。それこそ長年連れ添った間柄のようでした。
広瀬「それぞれ役としてキャラクター性はあるものの、意外にみんな角がないというか、柔らかいままで現場にいたんです。近づいたら、ふっと吸い付くような距離感や温度感で常にいられたので、私たちも楽しかったです」

3人がいま“片思い”しているもの
──恋愛だけでなく、いろいろなものに対して“片思い”が存在します。ご自身が一方的に好きでハマっているものについて教えてください。
清原「今すっごいハマってるアニメがあって、『イナズマイレブン』ってご存知ですか?」
杉咲「昔からあるよね?」
清原「そうです。私が小学生の時にテレビでやっていたサッカーアニメで。キャプテンが円堂守っていう……」
広瀬「いた! 懐かしい!」
清原「急にハマっちゃって。最近ずっと観ています」
杉咲「私はガールズグループのHANAです。オーディションの時から拝見していたのですが、プロデューサーのちゃんみなさんが、ひとりひとりの人生や過去に寄り添って肯定する姿や、そこから凄まじいスキルアップを果たされていくみなさんの姿に感動してしまいました。もう本当に素晴らしいの。そして最高にキュート! ライブも圧巻でした」
広瀬「私は車かな。10代で免許を取ってから、夜中の23時に帰ってこようが、一時間だけ、30分だけでもいいからドライブしたいと思って、1人でずっと都内を運転していました。慣れてきてから自分の車を買ったのですが、最近ちょうど新しく買い替えたので、また運転が楽しくなっています。運転中は無になれるところが好きなんです」
──オフのときはどんな過ごし方をされていますか?
杉咲「食に関わる時間が全て好きで、ご飯を食べに行ったり、自分で作る時間が楽しいです。料理本も大好きで、付箋がたくさん貼ってあります。今日は何にしようかなと本の中から探して、つくっています」
清原「最近はレコードで音楽を聞いています。レコードショップに行くと無限に探してしまうので『今日は何枚』と決めるようにしていて。レコードでは坂本龍一さん、尾崎豊さんなどをよく聞きます」
広瀬「家にずっといるのも好きなんですが、アクティブな日はスポーツ観戦に出かけています。最近もバスケと野球の試合をはしごして、3日後にサッカーを観に行っていました。仕事があるときは生配信でチェックしますが、会場に行って観戦するのが好きですね」
映画『片思い世界』
美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)の3人は、東京の片隅に建つ古い一軒家で一緒に暮らしている。それぞれ仕事、学校、アルバイトへ毎日出かけていき、帰ってきたら3人で一緒に晩ごはんを食べる。リビングでおしゃべりをして、同じ寝室で眠り、朝になったら一緒に歯磨きをする。家族でも同級生でもない彼女たちだったが、お互いのことを思いあいながら、楽しく気ままな3人だけの日々を過ごしている。もう12年、ある理由によって強い絆で結ばれてきた3人には、それぞれが抱える“片思い”があった……。
監督/土井裕泰
脚本/坂元裕二
出演/ 広瀬すず、杉咲花、清原果耶、横浜流星、小野花梨、伊島空、moonriders、田口トモロヲ、西田尚美
配給/東京テアトル、リトルモア
公開中
Profile
広瀬すず Suzu Hirose
1998年生まれ、静岡県出身。2013年、ドラマ「幽かな彼女」(KTV)で女優としての活動を開始。映画『海街diary』(15/是枝裕和監督)で第39回日本アカデミー賞新人俳優賞ほか、数多くの新人賞を総なめにする。翌16年、『ちはやふる』シリーズで映画単独初主演を務める。第40回日本アカデミー賞において、『ちはやふる−上の句−』(16/小泉徳宏監督)で優秀主演女優賞、『怒り』(16/李相日監督)で優秀助演女優賞をダブル受賞した。19年には100作目となるNHK連続テレビ小説「なつぞら」でヒロインを熱演。『ラストレター』(20)では一人二役を演じ、抜群の存在感を放つ。近年の主な映画出演作に『いのちの停車場』(21/成島出監督)、『流浪の月』(22/李相日監督)、『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』(23/入江悠監督)、『水は海に向かって流れる』(23/前田哲監督)、『キリエのうた』(23/岩井俊二監督)など。公開待機作に『ゆきてかへらぬ』(25/根岸吉太郎監督)、『遠い山なみの光』(25/石川慶監督)、『宝島』(25/大友啓史監督)がある 。
杉咲花 Hana Sugisaki
1997年生まれ、東京都出身。映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(16/中野量太監督)で第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞・新人俳優賞はじめ、多くの映画賞を受賞。2018年、「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」(TBS)で連続ドラマ初主演を果たす。その後、主役を務めたNHK連続テレビ小説「おちょやん」(20~21)と「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(21/NTV)で橋田賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に『大名倒産』(23/前田哲監督)、『法廷遊戯』(23/深川栄作監督)、『市子』(23/戸田彬弘監督)、『52ヘルツのクジラたち』(24/成島出監督)、『朽ちないサクラ』(24/原廣利監督)、連続ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(24/KTV)などがある。
清原果耶 Kaya Kiyohara
2002年生まれ、大阪府出身。2015年、NHK連続テレビ小説「あさが来た」で俳優デビュー。映画『護られなかった者たちへ』(21/瀬々敬久監督)で第45回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。21年には、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で主演を務めた。23年、「ジャンヌ・ダルク」(演出・白井晃)で舞台初出演にして初主演を務め、第31回読売演劇大賞・杉村春子賞を受賞した。近年の主な映画出演作に『まともじゃないのは君も一緒』(21/前田弘二監督)、『夏への扉−キミのいる未来へ−』(21/三木孝浩監督)、『線は、僕を描く』(22/小泉徳宏監督)、『1秒先の彼』(23/山下敦弘監督)、『青春18×2 君へと続く道』(24/藤井道人監督)、『碁盤斬り』(24/白石和彌監督)など
Photos:Takao Iwsawa Hair & Makeup: Masayoshi Okudaira(Suzu Hirose), Yudai Makino at vierge(Kaya Kiyohara) Hair: Asashi at ota office(Hana Sugisaki) Makeup:Suzuki(Hana Sugisaki) Styling:Akira Maruyama, Saki Nakazawa (Hana sugisaki), Megumi Isaka at dynamic(Kaya Kiyohara)Interview & Text:Daisuke Watanuki Edit:Mariko Kimbara