Omoinotake インタビュー「3億回再生突破の『幾億光年』で紅白に初出場、3人の夢が始まる」
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Omoinotake インタビュー「3億回再生突破の『幾億光年』で紅白に初出場、3人の夢が始まる」

「デイバイデイ/どんなスピードで 追いかけたら/また君と 巡り逢えるだろう」という印象的なフレーズは、テレビやラジオ、街の中からも何度も聴こえてきた。2024年を象徴する曲『幾億光年』を手がけたOmoinotakeは、島根県松江市出身の藤井怜央(レオ/Vo.&Key.)、福島智朗(エモアキ/Ba.)、冨田洋之進(ドラゲ/Dr.)による3ピースバンドだ。今年大躍進を遂げたOmoinotakeは12月31日、目標としていた「NHK紅白歌合戦に出場し続けること」の第一歩を踏み出す。そこで、彼らにとって紅白の意味、3人が駆け抜けた2024年、そして新年1月にリリースされるアルバム『Pieces』について聞いた。

左から、 冨田洋之進(ドラゲ)/Dr、藤井怜央(レオ)/Vo.& Key、福島智朗(エモアキ)/Ba
左から、 冨田洋之進(ドラゲ)/Dr、藤井怜央(レオ)/Vo.& Key、福島智朗(エモアキ)/Ba

「紅白に出続けること」で、昔からの友達にも刺激を与えたい

——今回、紅白初出場になりますが、以前から「紅白に出続けること」を目標にしてきた3人にとって、紅白とはどのような存在なのでしょうか。

ドラゲ「ストリートライブをしていたときに感じていた、たくさんの人に届いてほしいという気持ちの延長線上に紅白がありました。たくさんの人に届けるためには、この上ない場所だと思っていました」

エモアキ「僕らは幅広い人に届けたいという想いが念頭にありながらバンドを続けていたので、1年の総決算として、毎年、紅白の舞台に立ち続けたいと公言してきました」

——バンド結成からどのくらいで紅白を目標に定めたんですか?

エモアキ「結成して3、4年ぐらいの頃だと思います。その時は取材を受けることもなかったんですけど、5、6年ぐらいから取材を受けるようになって最初の頃のインタビューでは、すでに紅白に出続けることが目標だと話しています」

レオ「二人に付け加えると、学生時代の同級生、いろんな場所にいる友達に『レオたちはまだ頑張ってるんだな。俺も頑張ろう』と思ってもらえる最高の場が紅白歌合戦だと思うんです。僕らが紅白に出続ける姿を見せることで、頑張っている友達に刺激を与えられたら嬉しいです」

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——今年はテレビやラジオ、街を歩いていても「デイバイデイ」というフレーズを何度も耳にしました。ドラマ『Eye Love You』の主題歌『幾億光年』の大ヒットで変わったこと、それでも変わらなかったことを教えてください。

エモアキ「メジャー1stアルバムの『Ammolite』という曲に、『夢は/幾つ叶えば/満ちた心で/生きられるだろう』という歌詞を書いたんですね。紅白初出場が目の前にある今、その歌詞がまた自分の中で響いています。来年やその先も出場し続けるためにはどんな曲を作ればいいのか、以前とは違う気持ちで考えるようになりました」

レオ「今年はテレビ出演の機会が増えて、シンガーとしてはこれまでとはまた違うところに意識が向いてきたと感じます。ライブで直接、僕らの熱量を伝えることと、テレビの画面越しで、僕たちのことをご存知ない方にも聴いていただくのは、やっぱり別のことだと思うんですね。テレビの画面越しでも、いかに美しく響かせることができるかを考えるようになりました。それは今年、新たに得た視点です」

ドラゲ「今までより圧倒的に、我々のライブパフォーマンスを見てもらえることが増えて、SNSやDMでも、『ドラムプレイに勇気をもらった』とか、『最高のドラムです』という褒め言葉をいただくようになったんです。これまでわりと『俺なんて』と自虐的なスタンスだったんですけど、自信をもってもいいのかなと思えるようになりました。それから、レコーディングで素晴らしいミュージシャンの方々とご一緒して、とんでもなく研ぎ澄まされた世界に触れる機会が増えたことで、自分でもまだまだ磨かなきゃという気持ちになりました」

——3人の地元である島根の方々からの反響はいかがでしたか?

ドラゲ「ライブで松江に帰ったとき、信じられないぐらい歓迎してくれました。3人とも松江出身で松江を大切に思っているので、地元のみなさんにもそれがしっかり伝わっているという実感がありました。ファンの方たちがライブハウスに横断幕を掲げてくれていたんです。嬉しかったですね」

エモアキ「松江B1というライブハウスや、ずっと通ってた楽器屋さんにも掲げてくれて。松江市も市内のデジタルサイネージに応援広告を出してくれたんです。本当にありがたいことです」

——『幾億光年』が主題歌のドラマ『Eye Love You』は韓国からも反響がありました。今年のツアーでは、台湾や韓国のライブも経験しましたが、いかがでしたか。

レオ「台湾や韓国のみなさんは、日本とはまた違った方法で、エネルギーを放出してくれるんですね。一緒に日本語で歌を歌ってくれて、感動しっぱなしでした」

エモアキ「わかりやすく感情を伝えてくれるんですよね。それから、韓国ライブの前日に、『Eye Love You』のロケ地巡りをしたんです。歌詞を書くときにも台本を読んだりしていたので、ドラマとして映像になったときにも感動していたんですが、実際にロケ地に立つと、より感慨深いものがありました。そこで吸収したものを次の日にステージで見せることができたかなと思います」

ドラゲ「日本ではじっくり聴き込んでくれる人が多いですよね。僕もライブを見るときはそうなんですけど、台湾や韓国では、観客のみなさんがストレートに感情をぶつけてくれるんですよ。最初に台湾で大きな歓声を浴びた時は、誰かと間違えてるんじゃないかと思ったくらいです。韓国もすごく大きな歓声で迎えてくれて。初めての海外でのライブでしたが、とても気持ちよく演奏することができました」

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ひとつの “Piece”が3つが集まったからこそ意味をもつ『Pieces』

——2023年にリリースしたメジャー1stアルバム『Ammolite』は、インディーズ時代の『So Far』から6年ぶりでした。自分たちの名刺になるようなものができたとお話しされていましたが、25年1月に発売となるメジャー2ndアルバム『Pieces』にはどのような思いが込められていますか。

エモアキ「今年、サポートメンバーを入れずに3人だけのワンマンツアーをしたんですが、改めて3人で立つステージはいいなと思いました。僕たちの誰か1人でも欠けたらOmoinotakeじゃない。1人ひとりの“Piece”が集まって複数形の“Pieces”になることで、Omoinotakeというバンドになるし、3人集まることでひとつの“Piece”が意味をもつんだと実感しました」

——「Pieces」と似ている「P.S.」という曲も収録されていますが。

エモアキ「これは1番最後に書いた曲で、“追記”の意味合いが大きかったんですが、タイトルに悩んでいた時に、“Pieces”の最初と最後のアルファベットで『P.S.』っていうのもいいなと」

レオ「1つひとつの“Piece”が集まってやっと形をなすという考え方でいうと、“P”と“S”というひとつずつのアルファベットからはじまって、“Pieces”にたどり着くという意味もあると思います」

エモアキ「美しくまとまったね(笑)」

——シングルですでに発表されていた曲に加えて新たにレコーディングした曲が加わっていたり、サプライズもあるとのことですが、リスナーのみなさんに楽しみにしていてほしいことは?

レオ「シングルでリリースした曲が出揃った上で、『Pieces』というアルバムタイトルを決めて、そこから新しい曲を作っていったんですね。いつもアルバムを作るときには、バラエティに富んだものにしたいと意識しているんですが、新曲もそれぞれが違う色味をもった曲になりました。バラエティの豊かさを楽しみにしていてください」

ドラゲ「個人的に一曲目から最後までを通して聴いて、なんて素晴らしい曲順なんだと感動したので、一曲目から順番に聴くとさらに楽しめるかもしれません」

すべてスタイリスト私物
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——曲順は誰が決めたんですか。

ドラゲ「大枠はレオが提案してくれて、僕たち2人がそれいいねって。そのときはまだ全曲揃っていなかったんですが、全曲完成したときにバチっとハマって、さすがですねと思いました」

エモアキ「(笑)。1枚通して感情のジェットコースターを体験していただけたら。曲のつなぎが美しいので、ガタガタしない乗り心地のいいジェットコースターになっていると思います。これまでのアルバムより深いとこまで掘り下げているし、ハッピーな感情も上限まで行ける。Omoinotakeの伸び代が増えたと思います」

——3月からは松江でスタートして東京で終わる『Omoinotake One Man Tour “Pieces”』が始まります。このツアーで楽しみにしていることは?

レオ「今年の秋やったツアーは、お客さんと近い距離で一体感を楽しもうという裏コンセプトがあったんですね。それを経て、来年のツアーは島根、大阪、東京でホール公演を行います。島根ではホールライブを経験したことがあるんですが、会場が大きくなった時に、どんなふうに響かせられるか、どうやってお客さんと空気を作れるかを考えると、今からワクワクしてます」

エモアキ「今年はフェスやテレビにも出演して、新しい景色をたくさん見ることができたんですね。ホールツアー含め他の会場でも、メンバーやお客さんと一緒に、新しい景色を見ることができるんじゃないかというのが楽しみです」

ドラゲ「今年のツアーの東京、名古屋、大阪の会場には照明さんがついてくれたんです。Zepp DiverCityの映像を見ると、すごく照明が美しくて演出が華々しかったので、来年のツアーではさらにボリュームアップできるかもしれません。今回のアルバムは、これで照明がつくとどうなっちゃうの?と楽しみな楽曲たちだらけなんです。会場も大きくなるし、バンドの人数も、もしかしたらちょっとばかり増えたりして?  まだ断言はしませんけど(笑)、僕自身も楽しみです」

同じときに同じものを見て聴いて育った3人だからこそ、Omoinotakeの音が奏でられる

——松江の同級生である3人ですが、同級生だからこその良さは?

エモアキ「今回の紅白出場に関しても、島根からお祝いしてくれたときに一緒に喜べたり、そこで一丸となる気持ちが生まれるのは、地元が一緒だからこそで、それはすごく大きなことだと思います」

ドラゲ「エモアキとレオは学校が一緒なんですけど、僕は他校なんですね。他校の僕からすると、エモアキが作詞を、レオが作曲をするというのは、とんでもなく難しい関係性だと思うんですよ。詞を拾ってメロディーを書く、メロディーを聴いて詞を書く。この難しい作業ができるのは、同じ中学で、元々一緒にバンドをやっていた、2人だからこそできる技なのかなと思うことはあります」

レオ「多感な時期に同じ場所にいて、音楽やそれ以外のことも共有してたというのは相当なアドバンテージかもしれません」

ドラゲ「それをすごく感じたのが今回のアルバムの曲『Pieces』です。これは歌詞が先なんですけど、本当に詞先かよってぐらいレオが綺麗にメロディーを紡いでいるんですよ。すごく感動しました」

レオ「『Pieces』というタイトルにも表れているけれど、自分ができることに集中することで、みんなで集まったときにひとつのものが生まれるから、エモアキが全集中して0から1を生んだものに対して、それを一番活かせる形、Omoinotakeが輝けるようにするにはどうしたらいいかを考える。最初のピースを大事にして、次のピースを作りたいという気持ちはずっと大事にしていることでもありますね」

——ちなみに今回、イスを組み上げて撮影しましたが、それはいかがでしたか。

ドラゲ「普通の大人がやったら怒られますよね。俺はとうとうこんなことも許されるようになったんだと思いました」

エモアキ「確かにイスに立ってくださいと言われたときに、すごく罪悪感が湧いたんですよ。俺は育ちがいいのかもしれないと思いました」

ドラゲ「自分で言うのか(笑)」

レオ「(笑)」

——2024年は忙しく駆け抜けた1年でしたが、リラックス方法は?

レオ「ワンちゃんとの触れ合いですね。チワワとダックスフンドのミックスのチワックスと一緒に暮らしています」

エモアキ「服の爆買いです。それしか心を埋めてくれない(笑)」

ドラゲ「僕は昔から釣りとキャンプが大好きなので、時間を見つけて絶対に行くようにしています。行かないと生きていけない」

——三者三様ですね。最後に紅白出場前の心境を教えてください(取材は2024年12月中旬)

レオ「ずっと目標としていたステージにどんな衣装で立つのか、他では感じたことがないくらいとてもワクワクしています」

エモアキ「緊張というよりも、とにかく楽しみです」

ドラゲ「紅白出場決定の発表があったとき、昔、ずっと怒られていた、エアコン取り付けのバイトの先輩から『頑張ってるね。楽しんでおいでよ』とメッセージをもらったんです。それがすごく心を軽くしてくれました。家族もすごく喜んでくれて、両親のところにも知り合いからたくさん連絡が来ているみたいです」

——夢への第一歩を踏み出し、これからの目標を教えてください。

レオ「バンドとしての第一の目標は変わらず、紅白に出続けること。それを叶えられた先に何を思うかを楽しみにしているところです」

ドラゲ「レオがこの前、『紅白にもフジロックにも出演するバンドってカッコいいよな』と言っていたけど、シンプルに俺もそれはいいなと思って。観客としては何度か行ったことがあってすごく楽しかった記憶があるので、フジロックにもぜひ出演したいです」

エモアキ「それに加えて、今年初めて海外でライブをして、こんなに待っていてくれた人がいたんだと感じたので、海外にもどんどん行ってみたいと思います」

Photos : Maciej Kucia Stylist : Takuma Kano Hair & Makeup : Toshihiro Takaki(SEED&beauty) Interview & Text : Miho Matsuda Edit : Naho Sasaki

Profile

Omoinotakeオモイノタケ 島根県出身の中学からの同級生同士が、2012年に東京で結成した、藤井怜央/レオ(Vo./Key.)、福島智朗/エモアキ(Ba.)、冨田洋之進/ドラゲ(Dr.)の3人からなるピアノ・トリオバンド。2024年リリースの「幾億光年」はストリーミング累計3億回再生を突破。同年10月リリースの「ラストノート」が日本テレビ系土ドラ10『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』主題歌を担当するなど、ヒット曲を連発。第75回NHK紅白歌合戦に初出場決定。

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