名建築の一室に古今東西の名作が集結するアトリエ「KIGENZEN」でアート鑑賞 | Numero TOKYO
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名建築の一室に古今東西の名作が集結するアトリエ「KIGENZEN」でアート鑑賞

東京・青山の名建築であるフロムファーストビルの一室に、今年2024年5月にオープンしたアトリエ「KIGENZEN(キゲンゼン)」。古今東西ジャンルを問わず集められた、プリミティブな民具からディーター・ラムスをはじめとする希少なインダストリアルデザインの名品まで展示販売している。

デンマークのデザイナーPeter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsenによるチークキャビネットには、作家や名匠の作品からアノニマスデザインまでが共存。壁には現代美術家、新城大地郎の書、中央には、現在では入手困難なデンマークの建築家Ib Kofod-Larsenによるブラジリアンローズウッドのバタフライテーブルが存在感を放つ。
デンマークのデザイナーPeter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsenによるチークキャビネットには、作家や名匠の作品からアノニマスデザインまでが共存。壁には現代美術家、新城大地郎の書、中央には、現在では入手困難なデンマークの建築家Ib Kofod-Larsenによるブラジリアンローズウッドのバタフライテーブルが存在感を放つ。

白を基調とした空間には、ポール・ケアホルムやアルネ・ヤコブセンによる上質な北欧家具を中心として集められたプロダクト、骨董、アートが調和する。プリミティブとモダンの融合をテーマに、アフリカの部族による工芸品や彫刻、日本の土器、韓国の伝統的な道具、北欧の名匠によるモダンデザインのプロダクト、現代作家のアート作品など、それぞれの造形を対比させながら作品を展示。

プリミティブな民具とモダンデザインによる組み合わせの妙。現代の木工作家、佃眞吾の日ノ丸盆の上に、李朝の「どかりと座った立派なお相撲さんみたいな佇まい」の鉄やかん。その横には、60年代のディーター・ラムスによるBRAUNのラジオ
プリミティブな民具とモダンデザインによる組み合わせの妙。現代の木工作家、佃眞吾の日ノ丸盆の上に、李朝の「どかりと座った立派なお相撲さんみたいな佇まい」の鉄やかん。その横には、60年代のディーター・ラムスによるBRAUNのラジオ

キュレーションをするのは、オーナーであるクリエイティブディレクターの大長将之とデンマーク家具「FRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)」やホームウエアブランド「TEKLA(テクラ)」のコンサルティングを手掛ける相澤真諭子夫妻。二人の審美眼で収集された貴重な品々には物への偏愛が溢れ、作品一つ一つに付けられた丁寧な解説にも、デザインに携わってきた経験値と物好きならではの独自の視点が垣間見られる。

ディーター・ラムスによるデザインの1965年BRAUN製オーディオプレイヤー<Wandanlage>。「直線と円の組み合わせ、余白の取り方が完璧であり、気持ちよく目を泳がせる。近づくと端正なタイポグラフィが泳いだ目を一点に集め、操作に集中できる。バランスという言葉がこれ以上なく似合うデザイン」(解説より抜粋)
ディーター・ラムスによるデザインの1965年BRAUN製オーディオプレイヤー<Wandanlage>。「直線と円の組み合わせ、余白の取り方が完璧であり、気持ちよく目を泳がせる。近づくと端正なタイポグラフィが泳いだ目を一点に集め、操作に集中できる。バランスという言葉がこれ以上なく似合うデザイン」(解説より抜粋)

また、なにげなくKIGENZENを包む音にも注目。サカナクションの山口一郎率いるNFの青山翔太郎がKIGENZENのコンセプトや空間からインスピレーションを得て制作したオリジナル楽曲なのだ。ディーター・ラムスによるBRAUN(ブラウン)の名作レコードプレイヤーとデジタルスピーカーが同時に奏でる音楽は、「文化を繋ぐ架け橋として、現代の感性で評価し今に受け継ぐ、時代を超えた美意識に浸れる空間。物語を共有し続ける場所」というコンセプトとまさに共鳴する。

中央に鎮座する黒田泰蔵作の美しい白磁の円錐。右下には、「造形は西洋でありながら、丁寧すぎる仕上がりとまろんとした印象はいかにも日本らしい」アノニマスデザインの白磁のゴブレット。
中央に鎮座する黒田泰蔵作の美しい白磁の円錐。右下には、「造形は西洋でありながら、丁寧すぎる仕上がりとまろんとした印象はいかにも日本らしい」アノニマスデザインの白磁のゴブレット。

壁に掛けられた「これほど線の伸びやかなフォルムは見たことがない」といううなぎ掻き。左から、マリ共和国・バンバラ族の「ジャコメッティのようであり、エヴァンゲリオンのプロポーションのようでもある」彫刻。11〜12世紀の高麗期の「美しすぎる緑青」の響銅鉢。太平洋戦争期に使用されていたと推定される水筒と火薬入れ。コンゴ・ムボレ族の一枚の銅板を叩き出して作られた貨幣。バンバラ族の扉に付けられている錠前。
壁に掛けられた「これほど線の伸びやかなフォルムは見たことがない」といううなぎ掻き。左から、マリ共和国・バンバラ族の「ジャコメッティのようであり、エヴァンゲリオンのプロポーションのようでもある」彫刻。11〜12世紀の高麗期の「美しすぎる緑青」の響銅鉢。太平洋戦争期に使用されていたと推定される水筒と火薬入れ。コンゴ・ムボレ族の一枚の銅板を叩き出して作られた貨幣。バンバラ族の扉に付けられている錠前。

オーナー夫妻の感性で収集された美意識の詰まったプライベートなアトリエで、素晴らしい名品の数々を手に取り、間近に眺めながら、偏愛を語らう時間を過ごしてみてはどうだろう。新たな出会い、発見とともに感性を刺激してくれるに違いない。

KIGENZEN
住所/東京都港区南青山5-3-10 フロムファーストビル301
営業時間/金 13:00~17:00、土・日 12:00~18:00
休館日/月~木、不定休
※完全予約制(抽選)
URL/www.kigenzen.com/
Instagram/@kigenzen_atelier

Text:Masumi Sasaki

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