ファッションブランドともコラボした、シチリアのプレミアムワイン「ドンナフガータ」を巡る旅 | Numero TOKYO
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ファッションブランドともコラボした、シチリアのプレミアムワイン「ドンナフガータ」を巡る旅

提供元:ドンナフガータ
提供元:ドンナフガータ

ワイン生産量、輸出総量ともに世界一(国際ブドウ・ワイン機構調べ)を誇るワイン大国のイタリア。中でもイタリア国内で最大の面積を誇るシチリアは、ワインの生産量もトップレベルで、ヴェネト州と並ぶ広大なブドウ畑を有する。そんなシチリアのプレミアムワインとして世界的に名声を得ているのが「Donnafugata(以下、ドンナフガータ)」だ。イタリア国内のワイン認知度調査で「フェラーリ」、「ベルッキ」と並んでトップ3の知名度を誇る「ドンナフガータ」の魅力を探るべく、晩夏のシチリア旅へ出かけてきた。

世界的知名度を誇るシチリア・マルサラのワイナリー「ドンナフガータ」

今回、地中海を一望できるマルサラのラグジュアリーワインリゾート「Baglio Oneto Resort」に宿泊
今回、地中海を一望できるマルサラのラグジュアリーワインリゾート「Baglio Oneto Resort」に宿泊

紀元前800年にフェニキア人が到着して以来、ヨーロッパにおけるワイン造りの玄関口となったシチリア。四方が海に囲まれている環境のため、魚介系と相性の良いミネラル豊富な白ワインが多く、生産量の6~7割を白ワインが占めている。

マルサラにある「Saline Ettore Infersa」と塩の博物館
マルサラにある「Saline Ettore Infersa」と塩の博物館

「ドンナフガータ」が本社を置くのは、シチリア島の西岸部にある塩の名産地としても知られるマルサラだ。マルサラというと酒精強化ワインの「マルサラワイン」で知られているが、一部の上質なマルサラワインを除いて、かつては安くて質の悪いワインという汚名を着せられていたという。そこで小規模でも高いクオリティのシチリア産ワインを、持続可能な生産方法で作ろうと立ち上がったのがジャコモ・ラッロさんと、ガブリエラ・アンカ・ラッロさん夫妻だ。

マルサラにある「ドンナフガータ」のワイナリー 提供元:ドンナフガータ
マルサラにある「ドンナフガータ」のワイナリー 提供元:ドンナフガータ

ジャコモさんは170年以上に渡り、マルサラにてワイン造りに携わってきた一族の4代目であった。一族が培ったワイン造りのノウハウを生かし、プレミアムワインメーカーとして1983年に夫妻が力を合わせて創業したのだ「ドンナフガータ」だ。

「ドンナフガータ(逃げた女)」という名は、19世紀初頭にブルボン朝の王フェルナンデス4世の妃マリア・カロリーナ王女にちなんで名づけられている。彼女がナポリで起きた革命を逃れて、ドンナフガータ社のコンテッサ・エンテリーナ農園があるシチリア中西部へ逃げてきたという歴史が由来だ。

現在「ドンナフガータ」は5代目のアントニオさんとジョゼさんが率い、6代目のガブリエラ・ファヴァーラさんも参画。そのネーミングを体現するかのように、3代の美しい女性たちが活躍するワイナリーでもある。

アルマーニ氏も別荘を持つ、ワイン天国・パンテレリア島へ

貴重な雨水を集めるために、白く丸いカーブの屋根が作られたダムーゾという家々が立ち並ぶパンテレリア島
貴重な雨水を集めるために、白く丸いカーブの屋根が作られたダムーゾという家々が立ち並ぶパンテレリア島

「ドンナフガータ」は、先述したコンテッサ・エンテリーナ、シチリア南東部のヴィットーリア、北東部のエトナ、そしてシチリア本島とアフリカ大陸の間の地中海に浮かぶパンテレリア島に農園を持つ。中でもシチリアの土着品種である「ジビッボ(モスカート・ディ・アレッサンドリア)」というブドウの栽培のみを行っているのが、パンテレリア島だ。

パンテレリア島はセレブに愛されるリゾートアイランドでもある。写真は「Pantelleria Dream Resort」
パンテレリア島はセレブに愛されるリゾートアイランドでもある。写真は「Pantelleria Dream Resort」

パンテレリアはあのジョルジオ・アルマーニ氏が別荘を持つ島でもある。晴れた日にはコバルトブルーの海の向こうに、アフリカ大陸のチュニジアまでも望むことができ、のどかな雰囲気が漂う。

周囲を地中海に囲まれたパンテレリアは、1年中強風が吹きつける土地で、ときに30度を超える熱風が吹く。そのため、パンテレリアの畑ではブドウの木を強風から守るため、くぼみを作ってブドウ房が地面に触れないよう低木に植樹する「アルベレッロ・パンテスコ」という独特の農法が取り入れられている。

また、火山島で傾斜の多いパンテレリアは、土砂災害を防ぐため溶岩石の壁で区切られた小さな段々畑でブドウの栽培を行う。この段々畑を区切るドンナフガータの全長40キロメートルの塀は、代々手作業で築かれてきたというのだからその労力は計り知れない。

段々畑になるブドウは、トラクターなどの大型機材が使用できないため、剪定から収穫までほぼすべて手作業で行っているのもこの地のブドウ栽培の特徴だ。このパンテレリアのブドウ栽培は、ユネスコ認定の無形文化財に登録されている。

パンテレリアにある「ドンナフガータ」のワイナリーでは、農園のガイドツアー(ガーデンの自由散策のみなら無料)や、さまざまなテイスティングプログラムが用意されている。

今回私が体験したテイスティングの一つが、ジビッボ100%で造られた「ドンナフガータ」のパッシート「ベン・リエ」の飲み比べだ。パッシートとは、ハウスで保護された状態で日光と風に当てて乾燥させ、糖度を高めたドライレーズンを使ったイタリアの甘口ワインのこと。食後酒として親しまれていて、また、風味豊かな料理との組み合わせも楽しめる。さらに瞑想(メディテーション)ワインとしても最適だ。

「ドンナフガータ」では、1リットルの「ベン・リエ」を作るのに、4キログラムものドライレーズンを使用しているという。テイスティングでは瓶内熟成の年数が異なる5種類の「ベン・リエ」をテイスティング。2021年のものはアプリコットのような味が強く感じられるのに対し、2008年ものは黒糖のような甘みや渋みに加え、香ばしさが増すように感じた。製造方法は同じにもかかわらず、瓶内で熟成するだけでこんなにも味わいが変化するのかと驚く。

活火山の恵みを活かしたワイン造りを行うエトナ

マルサラ、パンテレリアとあわせて訪れたのが、シチリア島の北東部に位置するエトナだ。活火山で知られるエトナ山の麓に広がる冷涼な気候と砂質土壌を活かしたブドウの産地で、1200ヘクタールのうち35ヘクタールが「ドンナフガータ」のブドウ農園だ。

栽培しているブドウの土着品種は、カリッカンテ、ネレッロ・マスカレーゼ、ネレッロ・カプッチョなど。エトナのブドウ栽培では、エトナ式アルベレッロ仕立てと、一部で垣根仕立てが取り入れられ、パンテレリアの収穫量を上回る生産量を誇る。

「Rosa Dolce&Gabbana Donnafugata 2023」 提供元:ドンナフガータ
「Rosa Dolce&Gabbana Donnafugata 2023」 提供元:ドンナフガータ

エトナで栽培されたネレッロ・マスカレーゼを使ったワインで、特に私が気に入ったのがドルチェ&ガッバーナとコラボレーションした「Rosa Dolce&Gabbana Donnafugata 2023」。コンテッサ・エンテリーナで栽培されたノセラをブレンドしたロゼワインで、ジャスミンやバラを思わせる上質な香りとミネラル感、ピーチのようなフルーティで爽やかな味わいが口に残る。甘すぎず、食中酒としても重宝する一本だ。

エトナには「ドンナフガータ」のワイナリー施設「ランダッツォ・ワイナリー」もあり、ビジター利用も可能だ。ブドウ畑、エトナ山を望むバリックセラーを見学するガイド付きツアーや、ワインテイスティングも体験できる。

エトナ訪問時には、シチリアの主要観光地の一つであるカターニアの5つ星ラグジュアリーホテル「Romano Palace Luxury Hotel」に宿泊したのだが、内装やサービスが素敵だったので少しだけご紹介。

地中海文化を思わせるモザイクが客室のバスルームをはじめ、さまざまな場所にあしらわれており、客室の各ドアにはフェニキア人の歴史をモチーフにした異なる絵が描かれていた。さまざまな文化が混ざり合う、シチリアの昔といまを感じられるラグジュアリーホテルだった。

シチリア&パンテレリアの名物料理とワインのベストペアリングをご紹介

最後に旅で出合ったシチリア及びパンテレリアの名物料理と、ワインのベストペアリングを紹介したい。海に囲まれたシチリアとパンテレリアは、海産物が豊富で魚介料理が日常的に食されている。特にエビやタコを使った料理は名物の一つ。「Pantelleria Dream Resort」のメインダイニングでいただいたランチでも、タコやエビを使ったシーフードのグリルが登場した。ペアリングしたのは、ヴィットーリアのネーロ・ダーヴォラを使った赤ワイン「Contesa dei Venti 2021」。ライトな味わいながら、キノコのような香りとうま味があり、魚介の潮の味わいにも寄り添う。

イタリアと言えばやはりパスタ。パンテレリアを含むシチリアでは自家製パスタのブジアーテを使った料理が多くみられる。パンテレリアの「Le 2 Cale」で食べたブジアーテは、天日干ししたドライトマトに島名物のケッパー、パインナッツとレーズン、パン粉を合わせていた。このブジアーテに合わせてもらったのが、エトナの赤ワイン「Sul Vulcano Etna Rosso DOC」。ラズベリーやチェリーのような香りに、スパイシーなニュアンスを持つワインが、パスタのケッパーやドライトマトと心地よく共鳴していた。

パンテレリア島の伝統料理を味わえる「Il Principe E Il Pirata」で印象的だったのが「パンテレリア島の伝統的なクスクス」。チュニジアが近いパンテレリアでは、地中海沿岸のアフリカ諸国で親しまれているクスクスも日常的に食べられている。魚介と野菜のうま味をたっぷり吸ったクスクスに合わせてもらったのが「Passiperduti 2023」。イタリアワインの格付けであるDOC(Denominazione di Origine Controllataの略で統制原産地呼称ワインという意味)の認定を受けたグリッロというブドウ品種を100%使用した白ワインだ。トロピカルな香りで、深みのあるシトラスに土っぽさが伴う味わいで、クスクスの優しい味わいを引き立ててくれた。

「Il Principe E Il Pirata」でもう一つ印象的だったのが、パンテレリア名物のスイーツ「パンテレリア・キス(Bacio Pantesco)」と「ベン・リエ2022」のペアリング。「パンテレリア・キス」は油で揚げた菊の花のような形をした生地で、リコッタチーズを使ったクリームをサンドしたスイーツ。サクサクと軽やかな食感の生地に、エアリーな優しい味わいのクリームが合わさった素朴なスイーツに、アプリコットや黄桃のような香りと、ハチミツのような甘いニュアンスを持つ「ベン・リエ2022」が花を添えていた。

エトナでは貴重なワインを数多く取りそろえ、世界各地からワインラバーが集う「Cave-Ox Osteria」に訪問。ここでは、前菜の盛り合わせと、エトナ産のカリッカンテを100%使用した白ワイン「Sul Vulcano Etna Bianco Doc 2021」が良いペアリングを見せていた。モルタデッラやパンチェッタ、ラルドなどイタリアならではのシャルキュトリーやチーズ、卵料理のフリッタータや焼き野菜に、長期熟成によるハチミツや柑橘のような香り、ミネラル感を伴うフレッシュで複雑な味わいの白ワインが良く合う。

イタリアと言えばスイーツも見逃せない。シチリアには「カンノーロ」という、ザクザクとした揚げた筒状の生地に、リコッタチーズで作ったクリームを詰めたスイーツがある。「Cave-Ox Osteria」でも食後のデザートとして「カンノーロ」が登場し、パッシートの「ベン・リエ2022」と一緒に味わった。このお店の「カンノーロ」には、シチリア名物の砕いたピスタチオもトッピングされており、ナッティな味わいが甘いクリームを引き締めてくれていた。このほかにもシチリアには「カッサータ」と呼ばれる名物アイスチーズケーキもあるので、訪れたらぜひチェックを。

パンテレリア島名産のケッパーとチョコレートを使った「Il Gelato di Ulisse」のジェラートも絶品だった
パンテレリア島名産のケッパーとチョコレートを使った「Il Gelato di Ulisse」のジェラートも絶品だった

「ドンナフガータ」は、ワールド・ベスト・ヴィンヤード・アカデミーが行う「ワールド ベスト ヴィンヤード 2022」にて世界で最も人気のワイナリー50に選出されたほど、いまアツいワインツーリズムのディスティネーションでもある。シチリアに訪れるならば、ワインを通じて歴史や文化を学べる「ワインツーリズム」という選択肢も視野に入れてみてはいかがだろうか。

取材協力:ドンナフガータ https://www.donnafugata.it/en/

Photos & Text:Riho Nakamori

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