奥浜レイラ厳選!『ナミビアの砂漠』ほか身体と性の多様な視点を描いた6つの映画
身体や性を多角的に描いた作品を数多くの映画舞台挨拶のMCなどを務める奥浜レイラさんが厳選。多様な視点で描かれた6つの映画を通じて、“普通”や“常識”からあなたの身体を解放しよう。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年10月号掲載)
『ナミビアの砂漠』
“生身の自分”で生きる主人公爆誕
美容脱毛サロンで働く21歳のカナ。不動産の仕事をする同棲相手のホンダは優しいが退屈で、クリエイターのハヤシとの仲を深めていく。泣いてすがる彼氏には半笑いで対応し、平気で噓をつくカナだが、“生身の自分”を生きる姿が眩しい。調和を重んじる日本社会で、まさに爆誕というにふさわしい野性的な主人公から目が離せない。
出演:河合優実 監督・脚本:山中瑶子
9/6(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
『チャイコフスキーの妻』
いないことにされてきた人々の苦悩
女性の自由と権利がなかった19世紀末のロシア帝国。同性愛者と噂されたチャイコフスキーは世間体からアントニーナと結婚する。彼の才能に惚れ込んだ妻は世間で語られるような“世紀の悪妻”だったのか。日記や文書を基に語り直される、社会からいないことにされてきた人々の苦悩と揺るぎない愛情に胸が締めつけられる。
出演:アリョーナ・ミハイロワ 監督・脚本:キリル・セレブレンニコフ
9/6(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
『HOW TO HAVE SEX』
性体験への焦り、性的同意の難しさ
試験結果を待つ卒業旅行。南ロンド ンから夏のクレタ島にやって来た3人組のうち、主人公のタラは自分だけバージンであることに焦りを感じていた。享楽的なリゾートを舞台に生々しく描かれる性体験における同調圧力や“性的同意”の難しさは個人差があるはずの私たちの経験に重なる。苦みの中から生まれる連帯の可能性に思いを巡らせた。
出演:ミア・マッケンナ=ブルース 監督・脚本:モリー・マニング・ウォーカー
全国公開中
『ポッド・ジェネレーション』
「母性神話」を解体するコメディ
胎児を育てられる人工子宮《ポッド》が開発された近未来。NYのハイテク企業で働くレイチェルと、植物学者のアルヴィーの夫婦は異なる意見を持ちながらも子どもを持つことを決意する。妊娠によって女性のみに生じる身体の負担、キャリア中断の問題はテクノロジーによって解決するのか。「母性神話」を解体するコメディ映画。
出演:エミリア・クラーク 監督・脚本:ソフィー・バーセス
U-NEXTで配信中
『セイント・フランシス』
経血や中絶を当たり前に描く
給仕として働く34歳のブリジットは、夏限定の子守りの仕事を得る。依頼主は2人目 の出産を控えるレズビアンカップル。お世話する6歳の長女フランシスとはソリが合 わないし、気ままな関係だった男性との間に妊娠が発覚。経血、中絶などタブーとし て隠蔽されてきた題材も当たり前に描く、親しみやすいヒューマンコメディ。
出演・脚本:ケリー・オサリヴァン 監督:アレックス・トンプソン
U-NEXTで配信中
『チタン』
画一的なジェンダー観を破壊する
幼少期の交通事故で頭蓋骨にチタ ンプレートが埋め込まれたアレク シア。その影響か車に対して異常 な執着心を抱く主人公の逃亡劇が、 愛の物語へと帰結するパルムドー ル受賞の怪作。他者から望まれる “女らしさ”、画一的なジェンダー観 を破壊していくさまは爽快。ジュ リア・デュクルノー監督はボディ・ホ ラー史を前進させた。
出演:ヴァンサン・ランドン 監督:ジュリア・デュクルノー
U-NEXTで配信中
Text: Layla Okuhama