世界が注目! サステナブルスニーカーVEJAのブランド哲学とは? 共同創業者セバスチャン・コップインタビュー
フランス発のサステナブルスニーカー、VEJA(ヴェジャ)。パリで履いているひとを見かけない日はない程、ストリートキッズからファッショニスタまで幅広い客層と年齢層に人気。その人気の秘密はどんなスタイルにも合うシンプルなデザインに加えて、地球、人に配慮したブランド哲学があった。
共同創業者のひとり、セバスチャン・コップにブランドの誕生経緯から、リック・オウエンスとのコラボ秘話、環境意識が高まる現在におけるブランドの存在意義(レゾンデートル)まで、包み隠さず熱く語ってもらった。
──VEJAというブランドの名前の由来からお伺いしても良いですか?
「VEJAはポルトガル語で「見る」という意味です。スニーカーがどのように作られているのか、スニーカーの裏にある背景を見る、というのが名前の由来です。まずブランドを立ち上げるときに思ったのが、スニーカーの生産背景をもう一度見直そうと。そうするとまず見なければならなかったのが、最初の原料であるコットンやゴムがどのように作られて、どのように取引されているかということでした。まずはブラジルの農業を知ることから始まりました」
──ファッションの始まりは農業である、という基本的な考えに立ち返ったのですね。
「常識的に考えて当たり前のことなのですが、みんな結構その事実を忘れている。スニーカーを買う際、そのイメージ、履いているスターの顔、広告などは思いつきますが、それがどのような背景で作られているのかは見ていないことが多い。ブランドを立ち上げた2005年当時、スニーカーの生産背景などあまり興味を持たれなかった。最近はエコ意識やフェアトレードの観点から見直されつつあるが、まだ徹底しているとは言えない。例えばオーガニックコットンの使用をうたった製品は多くあるが、そのコットンがどのように作られているかまで見て使用しているところはほとんどない。なおさらスニーカー業界では。VEJAはオーガニックコットンを生産している農家から直接買い付けることをしています。それらの農家は化学肥料の不使用はもちろんのこと、コットン以外の豆やとうもろこしなどを輪作することによって土壌を守っている。多くは家族経営の小規模農家ですが、彼らの生活を保証するためにも市場価格よりも2倍近く高くコットンを買い付け、また支払いも半分は前もって払っています。同じようにアマゾンのゴム、リサイクルポリエステルなどの原材料もその生産者から直接取引しています」
──ブランドの創設からもうすぐ20年経ちますが、世界中にお店を構え、従業員も5年で5倍に増え、VEJAは飛躍的な成長を遂げたと思うのですが、今までで一番良い思い出のようなものがあれば教えてください。
「うーん、なんだろう。多くありすぎてなかなか難しいですね。色々なデザイナーとのコラボ、新店舗のオープン、物流工場の建て替えなどどのプロジェクトも思い出深いです。ただ我々は過去に固執するタイプではない。絶えず未来を見ています。『もっと何ができるのだろうか?』ということを絶えず問いかけています。まずはアイデアを出し、それを現実化させる。それにつきます」
──直近ではパリでスニーカーの修理工房、VEJA General Storeをオープンされましたね。
「使えるものを修理して長く使う、これこそがエコの大切な考え方です。リサイクルのプロジェクトの一環として、店舗内にブランドに関係なくいらなくなったスニーカーを入れるボックスを設置したのですが、多くの人が修理すればまだ履けるスニーカーをそこに入れていて。そこからこの修理工房のアイデアが湧きました」
──VEJA GENERAL STOREではスニーカーは売られていません。修理することで新規で買う顧客が減り、スニーカーのマーケットも縮小する可能性もあると思うのですが。
「それはそれで良いと思います。現在、スニーカーが生産されすぎている。10〜20パーセントくらいマーケット規模が小さくなっても良いと思います。我々の全てのプロジェクトについて言えることなのですが、『今ある社会問題について一つの答えを出す』というのが根底にあります。大量に生産されて捨てられる、という現在の消費文化に一定の答えを求めた結果が修理するという考えです」
──リック・オウエンス、クリストフ・ルメール、マルニなど多くのデザイナーやブランドとコラボされていますが、どのような経緯でコラボは決まるのですか?
「まずは出会いを大切にします。例えばクリストフの場合はあるディナーの席で一緒になり意気投合して始めることに。リックは以前からVEJAが好きだったみたいで、お店でも購入していたし、我々の記事が出るたびにわざわざ送ってくれたりして。我々がコラボするときに重視するのは人と人との繋がりです。必ずデザイナー本人と直接コミュニケーションを取ります。リックの場合はこだわりも強く、今まで見たことのないものが欲しいという彼のリクエストのもと、新しい素材の開発まで手掛けました。コラボする魅力は新しい世界を発見して、学びがあるということ。時としてコラボするデザイナーは我々の先生になることも」
──例えばリック・オウエンスとはどのようなことを学びましたか?
「『クリエーションの限界点を広げる』ということを学びました。これはできないだろうと自分達で設定していた限界をまだまだいける、というようにリスクを負ってまでチャレンジしていく。例えばリックが茶色を所望した時のこと。今まで我々は茶色というと3色くらいしか展開していなかったが、彼はその何倍もの種類の茶色を求める。時として染めるのが難しい色も。それに対してリサーチを重ねました。リックのあく無きこだわりと探究心から多くのものを学びました。」
──VEJAのデザインのこだわりを教えてください。
「デザインしたものがどれだけ長く愛されるかということを重視しています。他のスニーカーブランドは毎シーズン多くのデザインを発表する。VEJAはそんなに多くの新作を発表しません。大切なのは最新の流行ではなく、スタイルです。ひとつのスタイルとなりうるような良いデザインとは、どれだけ長く使用されているかということではないでしょうか」
──最後にこれからの目標などあればお聞かせください。
「4月にロンドンのお店がオープンします。あと日本のデザイナーともコラボしたいです。よく知られたメゾンはもちろんのこと、新進気鋭の若手とかも。誰か良いデザイナーがいればぜひご紹介ください」
VEJA GENERAL STORE
11,rue de Marseille 75010 Paris
Tel :33 1 40 34 32 12
Instagram/@veja_general_store
EMME
TEL/03-6419-7712
URL/www.veja-store.com
Interview & Text:Hiroyuki Morita