笠松将インタビュー「今は自分と向き合う期間。迎合せずに、自分の哲学をしっかり持つことが大切」 | Numero TOKYO
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笠松将インタビュー「今は自分と向き合う期間。迎合せずに、自分の哲学をしっかり持つことが大切」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.111は笠松将にインタビュー。

1990年代の東京を舞台に、『ベイビー・ドライバー』やスティーヴン・スピルバーグ監督版『ウエスト・サイド・ストーリー』で知られるアンセル・エルゴートが大手新聞社の警察担当記者ジェイクを演じ、ヤクザがうごめく闇社会へと入り込んでいく様を描いたドラマシリーズ『TOKYO VICE』。世界120か国で放送&配信され、その重厚かつスリリングな世界観が反響を呼び、大ヒットした。本シリーズでジェイクと意気投合する若きヤクザのリーダー、佐藤を演じたのが笠松将だ。『TOKYO VICE』をきっかけにハリウッドの大手エージェント・CAAと契約し、世界へと大きく歩を進めた笠松に、「これまでに味わったことのない責任感を感じた」というSeason2への思いと、役者としてのヴィジョンとリンクするオフの過ごし方について聞いた。

自分の芝居だけでなく、作品ごと高い領域まで引っ張りたい

──『TOKYO VICE Season2』で再び佐藤を演じるにあたってどんな気持ちでしたか?

「Season1では英語を話すスタッフに囲まれ、言語が通じないからこその無敵感を演じながら感じていました。Season1を通し、スタッフの方々や『TOKYO VICE』ファンの方たちとの作品への愛に触れてしまったことで『期待に応えなきゃいけない』という責任感がSeason2では生まれました。また、この作品以前では自分のお芝居に責任を持つという意識で臨んできましたが、Season1で佐藤が人気キャラクターになったことで、作品ごと高い領域まで引っ張りたいという、これまで感じたことのない気持ちも生まれました。気合が入りましたね。2で雪山のシーンがあるんですが、自分的に踏み込んだことをしたくて、心底寒さを感じたくてカイロを付けずにずっと外にいて、結果体調が悪くなりました(笑)。そこまでしないと、視聴者の方に伝わるものがないんじゃないか。この世界の幸せの数が決まっているのであれば、僕が大変な思いをすればするほど僕の幸せが減って、見てくれる人が幸せになるのではないかと思っていたので、そういう極端な向き合い方をしていました(笑)。スタッフの方々とファンの方々、みんなで作ったSeason2だと思っています」

──Season2では佐藤はどのような変化をしたと捉えていますか?

「引き続き、僕自身と似ているところがあるなと思いました。Season1はよくわかっていない中で暴れていくキャラクターで、Season2は自分の求められているものを理解した上で、何をすればいいかわからないというキャラクター。そういうところがすごく僕と似てるんですよね。佐藤は悩んだ末に最終的に大きな果実を手に入れるんですが、僕が佐藤を引っ張って、佐藤が僕のことを引っ張ってくれるなら、僕も大きな果実を手にすることができると思っているので、2の公開が楽しみです」

──Season2は流暢な英語のセリフも印象的でした。

「Season1の撮影の時、僕は『Hello』くらいしか言えなくて満足に自己紹介もできない状態でした。英語を喋る気もなかったので、英語で話しかけられても日本語で喋っていました。ハリウッドのエージェント会社と契約してから英語を勉強し始めたので、今2年目です。数ヶ月間、英語圏の国に行って撮影をすることもある中で、成長しているとは思います。ただ、細かい文法とかはまだわかりません(笑)。『一生懸命やったらなんでもできるタイプなんだけどな』って思いながら毎日勉強しています。主演のアンセルとは、彼が日本語で喋ってきて、僕は英語で喋るっていう気の遣い合いが起きていますね(笑)。あと、エージェントとマネージメントのスタッフからの電話は英語です。朝6時とかに、『すごいオファーが来たから今喋れるか?』っていうような連絡が来て、よく理解できないまま話していることがあります。でも、できないことがあることは贅沢だなと思って楽しんでいます」

──エグゼクティブプロデューサーも務める渡辺謙さんとの再共演はいかがでしたか?

「謙さんのご自宅に招待していただいて、ご飯を食べさせてもらいながらいろいろな相談に乗ってもらったことがあります。渡辺謙さんのような方が僕みたいな若い俳優に対して期待をしてくれているのがすごく嬉しいです。自分が海外で仕事をする中で、謙さんが40代になってから海外に本格的に進出されたことは本当にすごいなと感じました。海外での仕事は楽しさと同時にキツさもあります。謙さんを越えられるように、より一層頑張らなきゃいけないと思っています」

──改めて、『TOKYO VICE』というドラマシリーズの意義をどう感じてらっしゃいますか?

「このエンタメ過多の時代にSeason1が評価されてSeason2が作れるほどの信頼を得られたことは大きいと思っています。Season1の製作費は100億円程度です。規模が大きすぎてよくわからないですよね(笑)。2では迫力をはじめ、あらゆるものがパワーアップしています。1は多くの人に『面白かった』と言っていただきましたが、2は1の回収に入るので、さらに面白くなっていると思います。2を観ると1が序章だったんだということがよくわかると思います。なので、まだ1を観ていない方は是非1から観ていただきたいですね」

──笠松さんはSeason1の出演がきっかけで、ハリウッドの大手エージェント・CAAと契約されました。他に1の反響を感じた出来事はありましたか?

「H&Mメンズのグローバルキャンペーンのモデルとして声がかかりました。日本人が誰でも知っているような作品のメインキャラクターのオファーが来たこともあったのですが、Season2の撮影とバッティングして参加できなかったんです。あと、フランスから『あなたのファンだから一緒に作品をやりたい』とメールをいただいて、経歴や作品について聞いたら、まだ何の経験もなくて短編映画を撮ってみたいから出てほしい、という話だったこともあります(笑)。そういえば、Season2は2022年の僕の誕生日の11月4日にクランクインしたんです。そして、撮影が終わった後に、ホリプロから独立したんですよね。新たな挑戦に踏み出す勇気をもらった作品です。独立して1年弱ぐらいの間、ずっと忙しくやってきたんですが、この後は何も決まってないんです。結構仕事を詰め込むタイプだったんですが、自分にとってとても良い作品と出会える予感がしているので、意識的にスケジュールを空けています。中途半端な気持ちで関わるのは、お話をくださった方にも作品を観てくださる方にも申し訳ない。それに、今の僕はベストアルバムを作ろうとしているような状態なので、不純物が混ざることが許せないんです。スリルを味わいながら、自分だけの謎の戦いをしているところです。でも、不安がないので逆に『俺、大丈夫かな?』とも思っています(笑)。でも、忙しいだけの役者には憧れはありませんし、ひとつひとつの作品に対して最大限の責任を持って臨んでいきたいです」

逃げずにやり続けることが、これからの財産になっていく

──最近のオフは何をすることが多いですか?

「筋トレ、英語の勉強、自炊、掃除といったやらなければいけないことは午前中に終わらせて、午後は昼寝をする時もあれば、友達と食事に行く時もあれば、本を読む時もあれば、YouTubeをぼーっと見ている時もあります。お笑いが好きなので、タイムマシーン3号さんのチャンネルとか好きなチャンネルはいっぱいあります。あと、飼っている猫とずっと会話をしています」

──猫を飼って良かったと思うのはどんな時ですか?

「猫の毛が落ちているのと、埃がたまるのが良くないので、頻繁に掃除をするようになりました。昔は家を出る10分前とかに起きていたんですが、今は結構前に起きて猫の餌をあげたり、水を変えてから家を出るようになりました。あと、1年ぐらい前から朝に日記を書くようになりました。それによって、自分の脳内が整理されて、『僕はここに向かっていきます』『そのためには今これをやります』ということが明確化されるんです。だから、それをやるか逃げるかの二択になる。逃げずにやり続けることで財産になっていくんじゃないかと思っています」

──その日記の向き合い方は今のお仕事への向き合い方とリンクしている気がしました。

「確かにそうですね。今の僕は丁寧に日々を生きることが大事だと思っています。破天荒な天才型にも憧れはありますが、僕が目指すべきもののための戦いに参加するためには、迎合せずに、自分の哲学をしっかり持つことがおそらく大切。そうなると、どんどん自分と向き合う作業に入っていくことになります。スケジュールを埋めることが大事なフェーズもありますが、今の僕は自分と向き合う期間だと思っています」

──ライフスタイルを変えようと意識したタイミングがあったんですか?

「昔の僕はちゃんと芝居をやっていればすべてがついてくると思っていました。でも、芝居のことだけを考えていると、例えば周りの人のことを大切にできていなかったりして、人が離れていきます。『TOKYO VICE Season2』の評価が良かったということを一緒に喜ぶ人がいなかったらつまらないですよね(笑)。お芝居に真剣に向き合いながら、人間のレベルを上げて、周りの人や応援してくれている人を大切にしていると、その人たちの顔が浮かぶので、色々な人に作品を見てもらって喜んでもらいたいという気持ちが生まれます。そうなると、宣伝する力を上げるために自分自身がもっと大きくなりたいと思う。そうやって欲しいものがどんどん増えていくことはいいことだと思っています。何か大きな変化をするのではなく、洗面台が汚れていたら綺麗に拭くとか、ゴミが落ちていたら拾うとか、口に入れるものに気を遣うとか、発言のひとつひとつにこだわるといった小さいことの連続が大事。そういう風に丁寧に積み重ねていかないと全部が長続きしないと思っています」

衣装/ジャケット ¥380,000 パンツ¥135,000 ブーツ¥187,000/DIOR (クリスチャン ディオール 0120-02-1947)

『TOKYO VICE Season2』

WOWOWとアメリカのMax(旧HBO Max)の日米共同制作で送る超大作ドラマシリーズ、待望のシーズン2を日本独占放送・配信する!ハリウッド最高のスタッフと日米のスター・キャスト陣によって、“世界で最も撮影が難しい都市”といわれる東京とその近郊で撮影する『TOKYO VICE』シリーズは、シーズン1が世界約120カ国で放送&配信されるなど大ヒットを記録。シーズン2も引き続き1990年代の東京アンダーグラウンドを舞台にリアルで凶暴な大都会の裏の姿を描き出す。

キャストは主演に『ベイビー・ドライバー』でゴールデングローブ賞にノミネート、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』の主役に抜擢されたアンセル・エルゴート。さらに渡辺謙、菊地凛子、笠松将ら日本が誇る実力派俳優陣に、新たにシーズン2から窪塚洋介、真矢ミキが加わる。

シーズン1は、登場人物それぞれがショッキングな展開を迎えて幕を閉じたが、シーズン2では主人公ジェイクが東京の裏社会により深く入り込み、自分自身や身近な人たちの命に危機が迫り……。さらにパワーアップしたスリリングな展開が待ち受ける!

2024年4月6日(土) 開始 毎週土曜午後9時放送・配信(全10話)〔第1話無料放送〕
※WOWOWオンデマンドにて、Season1全8話配信中
URL/https://www.wowow.co.jp/drama/original/tokyovice2/
公式Instagram/@wowow_tokyovice

Photos: Takao Iwasawa Hair & Makeup: Ryo Matsuda(Y’s C) Styling: Keisuke Shibahara Interview & Text: Kaori Komatsu Edit: Saki Tanaka

Profile

笠松 将Show Kasamatsu 1992年生まれ、愛知県出身。 2013年から本格的に俳優として活動する。 2020年『花と雨』で長編映画初主演を果たし、近作ではドラマ『君と世界が終わる日に(Hulu)』、配信作品『全裸監督2(Netflix)』、主演映画『リング・ワンダリング』、日米合作『TOKYO VICE(HBO max)』、『ガン二バル(Disney+)』などに出演。 2022年、CAAとの契約を発表し、国内外で活躍する。 2023年、個人事務所設立。国外へ活動の幅を広げ、原作がイギリスのブッカー賞を受賞した「The Narrow Road to the Deep North」(Amazon Australia)にも出演が決定している。 Instagram @show_kasamatsu_official

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