パントビスコの不都合研究所 vol.17 詩羽(水曜日のカンパネラ)
世の中に渦巻くありとあらゆる“不都合”な出来事や日常の些細な気づき、気になることなどをテーマに、人気クリエイターのパントビスコがゲストを迎えてゆる〜くトークを繰り広げる連載「パントビスコの不都合研究所」。第17回目は、水曜日のカンパネラの詩羽が登場!
パントビスコ「今日は夢が叶ってうれしいです。よろしくお願いいたします」
詩羽「こちらこそありがとうございます!」
パントビスコ「まずお互いの似顔絵を描くコーナーがありまして。こういうの大丈夫ですか?」
詩羽「はい、もちろん大丈夫です!」
パントビスコ「よかったです。詩羽さんは特徴がいっぱいあって助かります」
詩羽「本当ですか(笑)。人の顔を描くのは久しぶりです」
似顔絵完成〜!
(左)パントビスコが描いた詩羽 (右)詩羽が描いたパントビスコ
「わぁ、ありがとうございます! めちゃくちゃ可愛いです。うれしいなぁ。ぺろちもお上手です」
「可愛く描けました。ぺろちは、なんかこんな感じじゃなかったかなっていうイメージで(笑)」
「バッチリです。こういうクリームパン食べたい」
「苦手な食べ物ありますか?」にどう答えるか
「まもなく水曜日のカンパネラとして日本武道館でのライブを控えていますが、直前の気持ちはいかがですか?」(※対談は3月上旬に実施)
「そんなに気負ってはいないですね。私はあんまりそういうタイプじゃないので。いつも通りのライブをするために、地道にちゃんと練習して、いつも通りを身につけられたらなって思いながらやってますね」
「いろいろなキャパの会場でライブをされてきたと思いますが、会場の規模も関係なく、常に平常心なんですか?」
「そうですね。私、(会場が)ちっちゃい方がミスりやすくて(笑)」
「それはなぜですか?」
「やっぱりイベントとかフェスとかに出させていただくときに会場が一番大きいので、他のアーティストさんを観に来てる人たちがたまたま観てくれることがすごい多くて。大きいステージだと、『どんだけ自分のことを好きにさせてやろうか』みたいな気持ちでステージに立つので、割と失敗はしにくいし、多分アドレナリンがすごく出るので。小さいと安心感だったり、ファンが多いと、ちょっと余裕を持ってしまってる部分があって、失敗しやすかったりとかしますね」
「それはお客様からもわかるような失敗だったりするんですか?」
「はい、全然。歌詞飛ばしたりとか」
「でも、ファンからするとちょっとうれしいですよね。それがライブの良さでもありますから。生ものなので」
「私は『やっちゃった!』くらいの気持ちで乗り切ってますね」
「日本だけでなく、海外でも公演をされていますよね。昨年はアジアでツアーをされましたが、どうでしたか」
「本当にノリが良かったですね。日本とまた音楽に対する楽しみ方の姿勢が違っていて。言語の壁はあるんですけど、それを超えて音楽を楽しんでくれる人がたくさんいるっていうイメージでしたね」
「じゃあ、そんな海外で感じる不都合って何かありましたか? これ困ったなという」
「もう食は大変でしたね。私、めっちゃ偏食なんですよ。食べられないものが多いタイプなので。あと、ずっと中華圏にいると、油が多くてすんごい胃にくる。2-3週間半くらい北京、上海、杭州、広州に行って、インドネシアに行って、台北に行って……割とアジア圏にいて、やっぱり胃にくるし、食べられないものも多いしで、食はすごい大変ではありましたね」
「僕もって言うとあれですけど、好き嫌い割とあるんですよ。人から聞かれたとき用にスマホのメモに書き込んでます」
「メモに入れているんですね。わかりやすくていいですね」
「よくご飯に誘ってくださる方から好き嫌いを聞かれて、全部伝えるべきか、大人だから3つぐらいにしとくか、いつも迷って、3つだけ伝えてます。人から好みを聞かれたら何て答えてますか?」
「いつも聞かれたら、玉ねぎと、健康すぎるものと、理解ができない食べ物って答えています」
「わかります」
「おしゃれな食べ物もあるじゃないですか。コースとかで、お前の役割はなんだ、みたいなのがお皿に乗ってると、とりあえずつつくだけで食べれなかったりもするので(笑)」
「僕、詩羽さんの好きなところは、SNSでちゃんと思ったことを言うところです。言わない方がベターという選択肢を渋々選び泣き寝入りをするタレントさんたちが多い中で、詩羽さんが言うことによって、『タレント側はこれってそういう風に思ってたんだ』ってみんなが気付く機会を与えられてると思うんです。だから画期的なことをされているなと思って。それは絶対に言ったほうがいい! この間もわーっとなってましたけど」
「はい、わーってなってましたね(笑)。盗撮のことで」
「逆の立場だったら絶対嫌でしょっていう。いや、それはタレントだからとか、有名人だからとか、あれはね、ダメです」
「でも、なんか言ってみると、いい学びが悪い学びかは置いておいて、学ぶことがすごく多くて。やっぱり他者って理解ができないっていう当たり前のことを実感するというか。そんな大したことないでしょって思ってる人たちって、言いくるめたいわけじゃなくて、ほんとにわかんないんですよ。盗撮されるってことがどれだけ大変なことか、嫌なことか、本当に想像ができない人たちって多分世の中にたくさんいて、だから誰かが誰かを否定するっていう循環って、そもそも想像力のなさから起きてるんじゃないかなって」
「ほんとそうですよね」
「そういうことに気づいたりは最近しますね。表に出る仕事って、本当にいいことも悪いこともたくさんあって、言えない人たちがいて当たり前だなとやっぱり思ってしまうので。その分、自分が割とミュージシャンだったりアーティストって言いやすいじゃないですか。主張しやすいというか、ミュージシャンとか歌にもしやすいですし。そういう人たちが言わないと、やっぱり何も変わらない、何もわかってもらえないんだなっていうのは思うので、私は自己主張はするようには意識してますね」
「言い方も、ちゃんと受け取り手がちょっと考えてみようかなっていう感じの言い方なんですよね。それがいいなと思うんですよ。思いが乗っているというか」
「私の言ってることが正解だなんて、本当に何も思ってないので。ただ私の一意見であって、それを受け手がどう受け取るかっていう、自分でちゃんと咀嚼して考えるって行為を、私はみんなと一緒にしていきたいなと思ってるんですよね。それを頑張ってはいますけど、やっぱ難しい人はたくさんいるんだなと思います」
「母数もね、とんでもなくいらっしゃるので。そのなかで、考えが改まったって人もいっぱいいるでしょうし、全然意味わかんないっていう人もいるでしょうし。だからそこはもう人間と人間の合う合わないになってくるんでしょうね」
便利すぎるゆえの日常での不都合とは
「僕も不都合なことを1個考えてきました。出張で地方に飛ぶことが月1〜2回あるんですけど、いつも早めに空港に着いて、早めに荷物を預けるんですね。で、いいクラスの人たちは多分帰りの目的地ですぐに荷物を受け取れると思うんですけども、僕は普通の席に乗るので、早く荷物を預けた人って、1番最後に荷物が戻ってくるんですね。それが嫌です。こっちは定時運航に大協力してめちゃくちゃ早く行くのに、直前でバタバタ乗ってきた人がなぜか目的地に着いて1番早く受け取るというジレンマ」
「手前に多分載せてるから。そうですね」
「だから、荷物を早く預けた人が目的地で早く受け取れるような、夢のような未来が来てほしいです。詩羽さんはそんな日常での不都合ありますか?」
「不都合……なんだろう? 最近、便利すぎますよね。だから不都合をあまり感じなくなっているというか。私インドアなんですけど、仕事以外であんまり外に出ない。それこそご飯とかも。ほんとにUberなんですよ。なんでも頼める。最近って花粉症の薬もUberで頼めるんですよ」
「ほんとですか!?」
「店舗で売り切れでも、Uberなら買えるっていう。便利になりすぎてて逆に怖いなって思うくらいですかね」
「動かなくても完結できますもんね。外が苦痛というわけではないんですか?」
「外は苦痛ですね(笑)。今日もこれが私服なんですけど、この感じで外に出るので、やっぱ目立ちますし、そうなってきちゃうと、人に見られたり、盗撮されたりとか、休みの日を休みになかなかできなくなってしまうっていうのがすごいネックで。楽しく遊ぶために外に出たのに、そこで体力を使うことになっちゃうのがきついんですよね」
「さっきの話にも繋がりますけど、余計なことが起きる可能性がありますもんね」
「そうなんですよね。あとは、私はもう家が大好きなんで、家もう帰りたいとか、仕事終わったら帰るみたいな感じのタイプではあるんですけど」
好きなものを自由に“好き”と言える世の中に
「じゃあ、不都合じゃなくて、これがこうなったらいいのに、とかそういうのあります? 僕だったら、さっきの飛行機内のカーゴをひっくり返してほしいっていうのとか」
「私がよく言うことだと、なんだろう、自分の好きなものを好きと主張できる世の中になったらいいなとは、本当に思っています」
「それは、ご自分だけじゃなくて」
「そうですね、私だけじゃなくて。最近はイエベ・ブルベとか、MBTI診断が始まって、自分に合うものはこれと決められることに動かされやすいことがあるなってのは思ってて。不特定多数の人が好きじゃないものを好きだと主張すると、叩かれちゃったりとか。音楽もそうだし、ビジュアルとかももちろんそうですね。私は、音楽的にもすごくストレートに進んではいない音楽ですし、ビジュアル的にもすごい好き嫌いが分かれやすいビジュアルをしているので。もっと自由でいいんだよっていうのを主張するためにも、私はこの格好をして活動しているので、そういう意味でみんながもっと自分の“好き”に自由になれたらいいなとは思いますね」
「そうですね。なんか慎重になってる人も多いですよね」
「なかなか難しい挑戦がしにくくなってきてるなとは思います。挑戦しやすい人はほんと極端にしやすくなってますし。みんながいいと言うものがいいとなりすぎてる社会だなって思ってるので、私みたいに好きなものがみんなと違うタイプはやっぱ不自由なんじゃないかなと思うので、そういうのはもっと自由になるべきだよなとは思いますね。多様性って言葉がなくなって、それが普通である社会の方がいいなって」
「詩羽さんは昔からそうだったんですか? ちゃんと自己主張をした分、うまくいくというか」
「私は割と、学生生活をうまく生きられなかったので、それは自分の力で変えていかなきゃっていうタイプでしたね」
「華やかな世界にいて、たくさんの成功も掴み続けていらしゃっると思ってたので意外ですね。大谷選手とかもそうだと思いますが、きっとめちゃくちゃ失敗してると思うんですよね。いろんな課題を毎回乗り越えてるから、成功されているんだなと」
「そうですね。私はほとんど失敗しかしてこなかったみたいな人生だったので(笑)。だからこそ挑戦できるところはありますね。自分がほんとに失敗しかしてこなかったからこそ、若い子には失敗することも大事だと言いたいですね。失敗をしなきゃ成功どころか挑戦ができないっていうのは結構ネックだなと思うので」
「好きなものを好きって言いにくいのにもちょっと繋がりますよね。それって」
「成功すれば自信がつきますし。そのためにはまず挑戦しなきゃいけないから。失敗してもいいんだって思いやすいのって、私は本来なら若いうちだなとは思ってはいるので。もう年を重ねれば重ねるほど失敗ってやっぱりしにくくなってきちゃいますし」
「詩羽さんは、学生さんの前で、歌じゃなくて講演したりとかってこれまでにあるんですか」
「いや、全然ないんですよ。でもやってみたいなとは思いますね。18歳以下の高校生や中学生って、すごい1番難しい世界なんじゃないかなって思ってるので、学生社会ってめちゃめちゃ社会だなって。なんかその社会を少しでも良くしていくために、自分ができることはなんだろうってよく考えますね」
「こういう方にお会いするたびにいつも思うんですよ。いつ休んでるんだろうって」
「私は全然寝てます。めちゃめちゃ寝てます。やる時間をぎゅっと決めてるので、それで調整してもらったりとかしていますね」
「だからきっと集中力があるんでしょうね。アウトプットをちゃんと集中してできるっていうのは。今後挑戦したいことはありますか?」
「そうですね。水曜日のカンパネラの音楽でみんなにハッピーを届けつつ、演技だったりまた新しいことにも挑戦していきたいなと思ってますし。武道館を経て、もっともっといろんなことができるんじゃないかなと思っているので、今は言えないことばっかりなんですけど、でもなんか楽しませられたらいいなって思いますね。自分のことを見てくれたりとか、応援してくれてる人たちを」
「いいですね。みんなが幸せになっていく図式ってやっぱりいいですよね」
「幸せにしたいですからね、みんなのことを」
「素晴らしい。僕も作家の意見として、やっぱり自分の思いが乗ってたり、好きっていうものの方が、皆さんが動いてくれるっていうのがすごくあるので、やっぱり手を抜いたらそれも全然伝わってしまいますし。だから、詩羽さんを見て思うってことは、きっと気持ちがすごく乗ってるから人に伝わるんだろうなっていうのを、今日改めて感じました。あと、花粉症の薬もUberで頼んでみます」
Photos: kisimari at W Edit & Text: Yukiko Shinto