WANDLER エルザ・ワンドラー インタビュー「⾃分の直感を信じることがいちばん大切」
この春から日本に本格上陸したオランダ発のブランド WANDLER(ワンドラー)。これまでも日本ではセレクトショップでバイイングされていたので、目にしたことがあるかもしれない。本国ではウェアも手がけており、ビヨンセも愛用。現在、日本ではバッグをメインにEC展開をスタートしている。ファウンダーであり、デザイナーでもあるエルザ・ワンドラーにクリエイションやプライベートのことなど話を聞いた。
──2017年にワンドラーを⽴ち上げる以前は、どのような仕事をされていたのでしょうか。
「ワンドラーを設⽴する前は、⼤⼿のコマーシャルファッションブランドの正社員で、トップス、ドレス、ジャケットを専⾨とするジュニアデザイナーとして働いていました。この経験からコレクションの管理や価格帯の設定など、ブランドを立ち上げるにあたっても貴重な洞察を得ることができたと思います」
──たった2カ月でワンドラーを⽴ち上げたと伺いました。当時どのような決意や発想があって、そういったアクションを起こしたのでしょうか。実現できた原動⼒は?
「このことはインタビューでもよく聞かれるんですよ。実際動き出してからは短期間でしたが、自分のビジネスを始めたいという願望はかなり前から温めていました。迅速な⾏動のきっかけとなったのは、エージェントのバートとの出会いですね。ファッションウィーク前に彼から『コレクション用にサンプルを準備できる?』と聞かれ、私は『OK、実現させよう!』と。そんなふうに彼が⽴ち上げの提案してくれたこともあって、ワンドラーが生まれたのです」
──ファウンダーであり、クリエイティブディレクター、デザイナーでもあると思います。現在どのように仕事をしていますか。
「私はクリエイティブ、デザイン、それからアートディレクターとしても、ワンドラーのすべてを監督しています。全体像だけでなく、プロセスの各ステップの細部に至るまで見届けているんですよ。私たちのチームは⽣産から財務まで、さまざまなスキルを持つ10人構成。特にデザインを担うキーメンバーと、ブランド構築とアートディレクション、マーケティング担当、その2人とは特に密接に協⼒しています」
──ワンドラーのデビュー作はラウンドバッグとか。それをつくろうと確信した理由はどのようなことでしょうか。
「最初からラウンドシェイプにしようと決めていたわけではなく、マーケットにスクエア型のバッグで溢れていたので、そこにチャンスがあると閃いたんです。当初はうまくいくかどうかと不安もありましたよ。でもユニークなラウンドフォルムの「ホルテンシア」は、実際ショップでの反応がとても良かったんです。このことで新しいことに挑戦する勇気、チャンスをつかむこと、そして⾃分の直感を信じることがいちばん大切だと気づかされました」
──ワンドラーのバッグはどれも現代のファッションに合っていて、持つ⼈が洗練されて⾒えるデザインだと思います。バッグをつくるときに、最もこだわっていることはどんなことでしょうか。
「初めてつくったバッグ同様、ワンドラーのデザインはまず直感から。目指しているのは着る⼈を⾃然とカッコよく、でも簡単に、そしてラグジュアリーに⾒せること。そのためにクオリティや高級感、エフォートレスかどうかにこだわっています。製作過程にいろいろと試すなかで、ふと「これだ!」って見つけることがあるんです。それは使い勝⼿の良さだったり、ただただ身に着けていてラクだけどおしゃれに⾒えることだったり……こういった感覚的な贅沢さは、私たちが今どんな気分か、⾃分の⼈⽣のどんな場⾯にいるかが影響します。なぜなら、ワンドラーをつくっている私たち自身が最初の顧客だと思うので」
──どのバッグもミニマルでありながら、フォルムやテクスチャー、カラーに柔らかな印象があります。そのような視覚から触感が感じられることは、⼥性にとって相棒のような存在であるバッグには⼤切な要素だと思います。そういったことはデザインするときに意識していますか︖
「そうですね、デザインをするときに自然と取り⼊れています。⾃分自身やチームのためにデザインすることで、⽣き⽣きとしたアイテムが生まれてくると思っています。なぜなら私たちチームは常に動き続け、フレッシュで最新の状態を保つようにアップデートし、世界のあらゆるクリエイティブな側⾯に興味を持ち続けているので。最初に作ったバッグと今のバッグを⾒⽐べると、自分自身の成⻑が感じられます。より上質なレザーを使いたいと考え、シンプルでありながら⼤胆で強いフォルムや⾊のアイテムを生み出すようになりました。ブランドのDNAを保ちつつ、デザインの洗練と上品さを追求し続けています」
──昨今ますますバッグが高価格になっていますが、ワンドラーのバッグは価格と質の関係をどのように考えていますか?
「イタリア製の環境にやさしい方法でつくられたレザーを用い、倫理的な生産を心がけています。クラフツマンシップに根付いた本物の価値を、できる限り良⼼的な価格で提供しようと努⼒しています。長く愛せる質の良いものを手に入れて、ファッションを無駄に消費せずにお⾦を貯めるほうがずっといいと思います」
──2024年プレスプリングではアーティストのデヴィット・サーマン(David Surman)とコラボレーションしていますね。彼の作品のどこに惹かれましたか。今、気になっているアーティストはほかにいますか?
「デヴィットはロンドン出身で動物をモチーフにしたアーティストですが、独特のスタイルと遊び⼼のあるアプローチに惹かれました。今回のコラボレーションでいいシナジーが生まれたと思っています。彼をはじめ、アーティストとの協業は私たちのブランドDNAに合っています。こういった取り組みはワンドラーにとって⾃然な流れで、誰かに押し付けられたものではなく、私たちのアイデンティティの⼀部として⼼から⾏っているんです。現在進行中のプロジェクトで協業するオランダのアーティスト、ロッテ・ヴィーリンガ(Lotte Wieringa)もこれからがとても楽しみなアーティスト。私たちは彼⼥の作品を本当に気に入っているんです」
──突然ですが、今⽇の朝⾷は何を⾷べましたか? というのもオランダはオーガニックやサステナブルの先進国なので、どのようなライフスタイルなのかを知りたいと思いました。⾷以外にもルーティンにしていることなど、プライベートな好みを教えてください。
「朝⾷は⼀⽇のなかでもお気に⼊りの時間です。食べることが大好きなんです! 今朝のメニューはシードとナッツ入りゴートミルクのヨーグルトと、オーツミルクのカプチーノ。ランチはほうれん草を加えた手づくりのパンプキンスープだったので、今夜はメキシカンラップでも⾷べようかな、と。毎⽇⼗分な脂肪とタンパク質、フルーツを取り⼊れることを⼼がけています。そんなふうに私の⽇常はバランスの取れた⾷事とマインドフルネスの実践が中⼼。⻑引くCOVIDにも気をつけながらね。パートナーや⽝のドリースとビリーとの時間を⼤切にし、ビーチウォークや外⾷、休暇を楽しみ、新しい場所を発⾒することでシンプルな喜びを⾒出しています」
──今後の展望を教えてください。
「世界が不確かなときでも、ブランドを知ってもらうことと今までの成功を⼤切にすることに集中しています。⾃分たちの夢を形にし、⼼からクリエイションをすることが大事。私たちは⾃分たちの価値観を守りながら、変わりゆく世界に対応していきたいと思っています」
「最後にワンドラーが生まれたオランダ・アムステルダムにぜひ旅してほしいので、Numero.jpの読者には特別にとっておきのアドレスもお知らせしますね!」
【My Favorite Places in Amsterdam】
Culture
Rijksmuseum(アムステルダム国立美術館)/Stedelijk Museum(アムステルダム市立美術館)Huis Marseille(ハイス・マルセイユ写真美術館) /Voorlinden museum(フォールリンデン美術館)
Shopping
Moise(ブティック)/de Bijenkorf(デパート)/Athenaeum(書店)/Salon Heleen Hulsmann、Nho Girl(デザイナーズヴィンテージ)/Carmen Amsterdam(ショップ兼ゲストハウス)
Restaurants
Dignita/Toki/Officina(朝食&ランチ) La Fiorita/Hotel Goudfazant/Cafe Beurre/Bar Parry/Nnea Pizzeria/Binnenvisser(ディナー)
Wellness & Beauty
Koan Float/Renessence (アイスバス・酸素療法)/Jolien Skincare/Skins cosmetics(最⾼のビューティースキンケアストア)
ブルーベル・ジャパン
TEL/03-5413-1050
URL/wandler.jp
Edit & Text:Hiroko Koizumi