Snow ManのラウールやTWICEのジヒョも来場。エレガンスと洗練さを体現した「AMI」2024秋冬コレクション
アミ (AMI)は、1月19日(金)パリのテニスクラブ・ドゥ・パリで、2024秋冬メンズ/ウィメンズコレクションを発表。故ジェーン・バーキンの娘で、マルチアーティストのルー・ドワイヨンや俳優のレティシア・カスタ、さらにドイツ人俳優 ダイアン・クルーガーがモデルとしてランウェイを歩くなか、ブランドアンバサダーを務めるチェ・ウシクを始め、Snow ManのラウールやTWICEのジヒョ、ヴァンサン・カッセルなど多数のセレブリティがゲストとして来場し、ショーを大いに盛り上げた。
ブランドの創設者であり、クリエイティブディレクターを務めるアレクサンドル・マテュッシは、60年代から70年代にかけて活躍したフランスのシンガー/俳優 ジャック・デュトロンの名曲『Il est cinq heures, Paris s’éveille”(午前5時に、パリは目覚める)』を引用して“新しい始まり”になぞらえ、今回のコレクションをブランドの変革を示すものと位置付けた。アレクサンドル・マテュッシの言葉を借りるなら「(ブランドの)エレガンスと洗練さをどのように表現するかを再確認」すると共に、13年目を迎えるアミの“新しい始まり”を高らかに印象付けるものとなった。
伝統的なオスマン様式のパリ建築からインスピレーションを得たセットデザインは、今回のコレクションの精神とインスピレーションを反映させたもの。ファーストルックは、3つボタンのジャケットと膝丈のショーツにレースアップブーツを合わせたウィメンズのセットアップ。華奢なショルダーラインにショールカラーのようなワイドラペル、ウエストをぐっとシェイプさせた構築的なシルエットが上品なエレガンスを演出する。コレクションを通して多用されていた大きなゴールドボタンもアイキャッチーなアクセントとして一役買っていた。
続くメンズのファーストルックは、ダブルブレストのジャケットとゆったりとしたパンツのセットアップ。こちらもコンパクトなショルダーラインこそ変わらないが、ピークドラペルがさり気ない華やかさを加味している。その後も、ジャケットやコートを使った端正なルックが続くが、どれも卓越したテーラリング テクニックを軸にしつつ、上質な素材使いとブラウンやベージュなどのワントーンでシックに魅せていたのが印象的だった。ウィメンズでは、コンケープドショルダーや鋭角なピークドラペルなどクラシカルなディテールを取り入れたジャケットや、チョークストライプ柄のセットアップなどが目を惹いた。きちんとタイドアップしたり胸元を大きく開けたりと、マニッシュな装いをバリエーションで巧みに表現している。控え目なライティングや映画の劇伴を数多く手掛けるアレクサンドル・デスプラによる音楽も手伝って、あえて抑制を効かせることで洗練さが浮かび上がるような前半のルックはとくに出色であった。
個別のディテールで印象的だったのは、分量感のあるファーの使い方。トレンチコートのスリーブやウィメンズのトップス、メンズのフーディなどに用いられており、柔和なテクスチャーが凛としたムードに軽やかなタッチをもたらしていた。派手なロゴやグラフィックなどは皆無で、チョークストライプやアーガイル、刺繍とプリントで表現したギンガムチェックなどオーセンティックな柄行きが品格を担保する。
ショーの後半は、パリの昼と夜の対比を表すように前半とは趣をガラリと変え、ラメやスパンコールを散りばめたスカートやボディコンシャスなミニ丈のワンピース、ヘルシーな透け感のあるトップスなどが登場。コレクションに通底するキーワードとして“多様性への包容”を謳っているように、バイアスにとった格子の隙間をシースルーで埋めたトップスは、メンズとウィメンズの双方で披露された。メンズは露出の多いセンシュアスなスタイル、逆にウィメンズはハイウエストのスラックスに革靴を合わせたマスキュリンな装いに。従来のジェンダー規範とは異なる自由な装いで対比させるなど、見せ方にも工夫と配慮が伺える。
小物で目立っていたのは、メンズモデルがクラッチバッグのように抱えて持っていたマキシサイズのトート。クタッとした柔らかなテクスチャーは、小柄な女性がラフに持っても様になりそうだ。ジャケットやコートなどに使われたチャンキーゴールドボタンは、大振りなピアスにも流用されている。ブラックとウッドを交互に配したストライプヒールや、ハートと“A”のイニシャルがアイコンとなった「Paris Paris」バッグといったシグネチャーピースも健在。とくに後者は、ファーをあしらった秋冬らしいデザインやボーリングバッグにバケットバッグなどのニューモデルも追加される。
最後に、『A Bewildering and Bedazzling Celestrial Mystery』や『Emergency Assembly』など、ずべてアレクサンドル・デスプラの楽曲で統一した音楽の素晴らしさにも触れておきたい。余白までも計算された牧歌的で美しいサウンドスケープは、主役であるルックを引き立て、鑑賞者のイマジネーションを拡張させるような相乗効果を産んでいた。抑えた演出も含めて派手さこそないが、ブランドの特徴でもあるエレガンス、洗練さ、シンプリシティを余すことなく体現した見事なコレクションだったと言えよう。
Text:Tetsuya Sato