間宮祥太朗インタビュー「演技と嘘はニアリーイコールだから面白い」
旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.106は間宮祥太朗にインタビュー。
映画『ある閉ざされた雪の山荘で』は、東野圭吾の人気推理小説を原作に、大雪で閉ざされた山荘という密室を舞台にしたサスペンス・エンターテインメントだ。劇団の役者たちに最終オーディションの招待状が届く。それは「大雪で閉ざされた山荘」という、架空のシチュエーションで起こる連続殺人だった。ただの設定だったはずが、実際に役者が一人ずつ消えていく。それはオーディションなのか、本当の殺人なのか。本作で、劇団のトップ俳優・本多雄一を演じる間宮祥太朗に、芝居の嘘と本当、そして雪山と趣味のアウトドアについて聞いた。
20歳前後で知り合った仲間と、再び共演して感じたこと
──今作に出演を決めた理由に、企画プロデュースの大畑利久さんの存在があったということですが。
「プロデューサーの大畑さんとは、『トリガール!』や『不能犯』の仕事でご一緒したのですが、その時にたくさんコミュニケーションをとって関係性ができていたんです。信頼している大畑さんから、シゲ(重岡大毅)が主演で東野圭吾さん原作の作品だから、どうしても出演してほしいというお話を直々にいただいたら、引き受けないわけがありません。それに、シゲとは、『溺れるナイフ』を観てからずっと共演してみたかったんです」
──重岡さんと共演した感想は?
「思っていた通りの気持ちのいい方でした。ライブや音楽番組で見かけると、パフォーマンスすることが楽しいんだと全身で表現しているような印象があったのですが、共演してみたら、まさにその通りの人物でした」
──今作の共演者は同世代が多かったですよね。
「今回、初対面だったのは、シゲと西野さん(西野七瀬)の二人です。西野さんには物静かなイメージがあったんですけど、ボソッと関西弁で刺すようなツッコミをする面白い人でした。他はみんな20歳前後の頃からよく知っていて、中条さん(中条あやみ)、(岡山)天音、(戸塚)純貴は、『ライチ☆光クラブ』(16年)で共演しました。それぞれがキャリアを積んで、今回久々に集まったので、ふとした瞬間に懐かしさを感じました。純貴は待ち時間にゴルフのフォームの確認をしたりして、『ゴルフはいいよ』なんて言うんですよ。初めて共演したのが20代前半だったので、お互いに年齢を重ねたなと思いましたね」
──間宮さん自身、その頃から比べて変化したことは?
「その頃は、自分の役柄や俳優として、見てくれる誰かに刺さってほしいと思っていたのですが、今は作品全体のことを考えるようになりました。自分の役ではなくても、誰かが気にしている部分があれば、一緒に考えられたらと思っています。例えば、ここの動きを少し変えるだけでスムーズになるんじゃないか、など監督に提案することも増えました」
──制作側の視点に立つようになったということですか。
「視点が『自分』じゃなくて『作品』になったんだと思います。シンプルに考えると俳優というのは、脚本に書かれていることを体現したりセリフをいうことが仕事です。そこにオリジナリティが生まれるのは、技術的なことかもしれないし、技術じゃ説明できない存在感のようなものかもしれません。不確定要素があるから、芝居は面白いんですよね。その一方で、観客側として作品を見ていると、すごく面白かったのにこの部分は少し気になったな、など感じるときもありますよね。その原因を考えたりするのと、現場で監督に提案するのは同じだと思っていて、気付いたことがあればとりあえず話してみようと。なので、制作側の視点というよりも、気付いたことを言ってみて、その結果、少しでも作品にとってプラスになればいいな、と思っています」
芝居には嘘と本当が混じっているから面白い
──今作で演じた、劇団のトップ俳優・本田雄一については、どう解釈されましたか。
「劇団の顔として、公演では主役を張ることが多いという人物だという設定でしたが、彼は勢いに乗ると圧倒的な存在感があるんだけれど、もしかしたら、台本を深く理解しているわけじゃなかったりして、そこがチャーミングなのかなと。感覚で演じても、それが意外にも想像以上になってしまう。現実でも、感覚派と言われる方がいらっしゃるように、彼はそんな感じの人なんじゃないかなと思っています」
──それはご自身と近いものがありましたか。もしくは正反対?
「近くはないかもしれません。僕は、監督の意図を頭で考えようとするし、現場で気になる部分があれば、監督と話し合うので、感覚だけではないですね。今作はトリックが二重三重に張り巡らされているので、通常はこうだけどこのニュアンスを入れなくちゃいけないとか、感じたままに芝居をすればいいだけじゃないので、それが難しくもあり面白いところでもありました。役者としては、こういうシチュエーションでこのセリフなら、こうやって動きたいという欲望が生まれるものなんですが、そうするとこの物語のシステムが成立しない。そういうジレンマを抱えつつ、どうやってバランスを取るか。僕自身もそうですが、共演者はみんな考えていたと思います」
──本作のキーワードの一つが「嘘」ですが、「演技」と「嘘」との間に共通点はありますか。
「僕は演じることは必ずしも嘘だとは捉えていません。フィクションかノンフィクションかという違いはあるけれど、人が存在して会話をしているのは現実です。ただ、台本があって演じているだけで。だから、ニアリーイコールかもしれないですね。例えば、泣くシーンがあるとして、役者がその場で泣いていることは本当だけど、もし目薬を使ったとしても、観ている方にとって涙は涙。芝居には、嘘と本当が混じっているから面白いんだと思います」
趣味はアウトドア。バスフィッシングでは自己ベスト更新
──今作の設定のひとつは雪山でした。雪山のアクティビティは好きですか。
「スキーやスノボもしばらく行ってないですね。そういえば、人生で最初に記憶に残っている映画は、『バーティカル・リミット』(00年)です。雪山で遭難する物語なのですが、幼い頃に見て、とても印象に残っています」
──では、雪山にはトラウマが?
「怖いというよりも、雪山は生命に対して厳しい場所だなと思います。よくキャンプに行くのですが、雪中キャンプも経験したことがあります。とはいえ、キャンプ場なので、管理されている場所ですから。そこに雪が降ると、楽しいし気分も良かったです。ただ、雪山は極限の状態ですよね」
──オフのリフレッシュというと、キャンプに行くことが多いんですね。
「そうですね。そろそろ寒くて厳しい時期になってきましたけど、オフはだいたいキャンプとバスフィッシングです。つい先日も、自己ベストを釣り上げました。大会に出るわけではないので、ちゃんと重さを測ってるわけではありませんが、大きいものを釣り上げたからサイズを測ってみたところ48センチ! 過去最高の大きさでした」
衣装: オールインワン ¥34,999/rabanne H&M(H&M カスタマーサービス 0120-866-201)その他 スタイリスト私物
『ある閉ざされた雪の山荘で』
7人の若手劇団員が山荘に集められた。これは「閉ざされた雪の山荘」というシチュエーションの演劇の最終オーディションだ。演出家の指示に従い、演技を続けるが、出口のない密室でひとり、またひとりと人が消えていく。これは本当にオーディションなのか、それとも連続殺人事件なのか。演技と嘘、隠された過去が交錯していく──。
2024年1月12日(金)公開
監督/飯塚健
原作/東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」(講談社文庫)
脚本/加藤良太、飯塚健
出演/重岡大毅、間宮祥太朗、中条あやみ、岡山天音、西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵
配給/ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション/ファインエンターテイメント
©2024 映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社
URL/happinet-phantom.com/tozayuki/
Photos: Yu Inohara Hair & Makeup: Akane Miyake Styling: Shingo Tsuno(impiger) Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto