自分らしい新時代の働き方 vol.3 田上陽子
仕事に没頭するもよし、よりプライベートを充実させるもよし。さまざまな選択肢が見えてきたポストコロナの今だからこそ、働き方の理想を追い求めたい。まずは新しい働き方を実践&研究中の5人から学んでみよう。自分らしい働き方にもきっと近づけるはず。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年10月号掲載)
田上陽子が北海道移住で見つけたこと
東京での生活は一旦リセットし、北海道でパートナーとともにワイナリーのぶどう畑とハーブ園を営んでいる田上陽子。仕事のスタイルを180度転換して見つけた働き方とは。
──北海道への移住を決断する前にフリーランスに転身されたそうですね。
「2022年2月に北海道へ移住してきたのですが、その一年半前にフリーランスになりました。それまでは東京で化粧品の会社で10年間働き、主にブランドのディレクションを行ってきました。ちょうど10年という節目の時期とコロナ禍が重なり、自分の人生の目標を見直し、生活の延長線上に仕事を置きたいと思うようになったんです。というのも、仕事ではウェルネスビューティなどの理想を掲げて打ち込んでいたのですが、日々ハードに働いて自分の生活が疎かになってしまい、理想と現実のギャップに葛藤していました。そこでまずは、仕事より生活を見直したいという思いが強くなり、自分でコントロールできる働き方にシフトしようと思ったのがきっかけです。もちろん初めは不安もあったので、フリーランスになる前に、周りの人や会社にも自分のやりたいことを相談して準備しながら進めていきました」
──フリーランスになってやりたかったことは?
「化粧品の仕事も好きだったんですが、もともとトータルビューティといったインナーケアや東洋医学など、体の内側からなる美について興味があったんです。また、物を大量に売るのではなく、本当に必要なもの、コミュニティは小さくても強く共感してもらえるものづくりを行いたいと思うようになりました。そんな時に友人と北海道を訪れ、現在の夫と出会って彼のものづくりの姿勢にも共感。私も北海道へ移住しようと決断しました。ここなら私の思い描くものができそうって思ったんです」
──ジュエリーブランド「ENEY」に関して、東京とのやり取りはオンラインで?
「基本的には会議や打ち合わせはオンラインで行っています。北海道がベースで時々東京へ行く生活ですね。夜遅くまでパソコン作業をしていてはこれまでと変わらないので、いかに効率をよく仕事と家事をこなすかと考えるようになりました」
──北海道での生活はいかがですか。
「毎日時間があっという間に過ぎていきますね。畑仕事は初めての経験ですし、体力が必要でモチベーションを保つのに必死なんですが、幸福感はいつもあるなと思います。自分の作ったハーブを取り入れて料理をしたり、自然を見ながら外でバーベキューしたりと、生活の充実度は増したような気がします。仕事に関してはこれまで会社ではチームを組んで行っていましたが、ここに来たら0から10まで自分でやります。結果もすべて自分次第なので、やりたいことをいかに極めていくかが大切だと思っています。ワインもハーブも極めるほどおいしくなるし価値も上がる。そうなれば大量生産しなくてもよくなるという、その仕組みに感銘を受けました。これまでは「たくさんの人にどう広げるか」と考えていましたが、今は真逆の考えで働き方も変わったなと感じています」
──極め続けたことで、自身の中で変わってきたことはありますか。
「たくさんありますよ。自分のできなさに気づきました(笑)。会社では役割分担していたことも自分ですべて行っているので、細かなミスに気づいて落ち込むこともあります。ですが、できないことを受け入れることは大切だと気づきましたし、そこに成長があるなと。仕事って楽しいことばかりじゃないですよね。でも目標があるから頑張れる。ゼロから修業している感じがしますね」
──今後の目標について教えてください。
「当面は、ワインとハーブをより極めていくこと。今年出産したんですが、娘が大きくなって「お母さん、かっこいいね」と言われるくらい、自分に自信を持ってやっていきたいなと思っています。一緒に畑仕事もできたらうれしいですね」
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