京都にタカ・イシイギャラリーの新スペースが誕生。サーニャ・カンタロフスキー展開催中
日本の現代アートシーンの一翼を担うタカ・イシイギャラリーが、京都・四条に新スペースをオープン。同所で行うはじめての展覧会としてサーニャ・カンタロフスキー「After birth」が開催中だ。
タカ・イシイギャラリー京都がオープン。開廊に伴い重要文化財である杉本家住宅前に存する築約150年の町屋を建築家、工務店、造園家とともに限りなく当時の状態に戻すことを試みたという。かつては民家として、その後カフェとして利用されてきた町屋は、今回新たにペインティング、水彩画、伝統的な西陣織を用いたタペストリー作品を収容する器の役割も果たすことになるようだ。
記念すべき第1回目となる展覧会は、1982年モスクワ生まれのサーニャ・カンタロフスキーによる「After birth」。会場であるこの町屋のために構想されたという。
空間には、出産で命を落とした母親の妖怪である「産女(うぶめ)」、腐った肉の塊の「ぬっぺっぽう」、蛇のような長い首で頭部をさまよわせる女の妖怪「ろくろ首」など、妖怪の描写がこの町屋内部を仕切る壁や襖にならぶ。生活の不安やくるべき死と折り合うためのいち手段として登場してきた妖怪と、西欧の神話や美術史、作家自らの体験などから引用された材とが町屋の陰翳の中に同居する。
なお、伝統的な引箔の技法を用いて制作された西陣織の織物も展示。周囲の自然から集めた苔や地衣類、菌類などの色素を使いながら素材自体でテーマを表す試みだ。
作品たちが示すのは「きわめて特異なかたちの子育て」だという。世話や心遣いは愛情に起因する行為ながら、そのようすは畏怖も感じさせる。幽霊と向き合い、証人となったカンタロフスキーは制作にあたりどんな思いを巡らせたのか。そもそも幽霊をどう表現するのか。新たに誕生した空間とともに、ぜひお楽しみを。
※掲載情報は4月24日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
サーニャ・カンタロフスキー「After birth」
会期/2023年4月14日(金)〜5月27日(土)
会場/タカ・イシイギャラリー京都
住所/京都市下京区矢田町123
開館時間/10:00〜17:30
休館日/日〜水曜日、祝祭日
URL/https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/28996/