【Editor’s Letter】大冒険も、日々の冒険も・・・すべて“自分探し”なのです。 | Numero TOKYO
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【Editor’s Letter】大冒険も、日々の冒険も・・・すべて“自分探し”なのです。

2023年4月27日(木)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2023年6月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズレター。

思う存分に外出を満喫したり海外旅行を再開したりと、懐かしくも愛おしい“あの頃の日常”がいよいよ戻ってきました。今号は、通常の“旅=Journey”ではなく、“非日常だった日常”に飛び込むという意味も込めて“冒険=Adventure” と題してこの特集を送ります。ウィキペディアによると、冒険=Adventureは「日常とかけ離れた状況の中で、なんらかの目的のために危険に満ちた体験の中に身を置くこと。あるいはその体験の中で、希有な出来事に遭遇すること(ウィキペディア(Wikipedia):フリー百科事典/2023年4月12日現在)」だそうで、少なからずドキドキハラハラする体験がはらまれていることを指すようです。が、ここ3年間の“新しい生活様式(と呼ばれていた)”での静かな日常に慣れていた私たちにとって、これから起きるすべての事柄が“冒険”なのではないでしょうか。

(左)通常版 ¥890 (右)東方神起が表紙の特装版 ¥1100
(左)通常版 ¥890 (右)東方神起が表紙の特装版 ¥1100

冒険といえば20代前半、イタリア留学時代にバックパックを担いでモロッコやスペインを旅していたことを思い出します。若かりし頃、当時の旅仲間となけなしの所持金を片手に足で回る『地球の歩き方』的な旅をしていました。お金がない旅は知恵と愛嬌で乗り切るのが一番! とヒッチハイクをしたり、出会った方のお宅におじゃまして食事やお茶をごちそうになったり、振り返ると少しむちゃをしていたなと思うほどドキドキした体験をたくさんしました。スペイン旅行の最後にフランスとの国境にそびえるピレネー山脈を目指して、数日かけて麓の村落にたどり着き、最後には登頂して旅の醍醐味を味わったたことが記憶によみがえります。日没までに下山しないと宿に戻れないとわかった私たちは、両手両足を駆使して最後は山をよじ登っていました。頂に向かうにつれ見たことのない景色が広がり、視座を変えると見えなかったものが見えてくるのだと、経験を通して学んだことは今に生きています。冒険は、人をたくましく豊かにしてくれます。このピレネー山脈登頂記は、バッグブランドBriefingのサイト内のコーナー「Favorite Spot」で取材、掲載をしていただいたので、よかったら覗いてみてください。(https://www.briefing-usa.com/news/favorite-spot-2)。

「写真家たちの冒険」(本誌p.90〜)では、6人の写真家のそれぞれの日常(とはいえ非日常)が切り撮られた心躍る美しい写真と文を紹介しています。冒険心を持ってファインダーを覗き、偶然出合った一瞬を切り撮るために日々、自分自身と向き合っているのだと知らされます。8000m以上の山々の登頂を目指し撮影する石川直樹さん(取材時はネパールのアンナプルナに挑戦中!)の「写真というのは何を撮るかよりも『なぜ』それを撮っているかのほうが大切」という視点。アイスランドのヴィトナヨークトル氷河に挑んだ川内倫子さんの「大自然の中を自分の足で立ってみたいと思いました。その行為は『挑戦』というような言葉ではなく、一番しっくりとくるのは『ただ自分と向き合う』ということ」という人生観。2007年度の木村伊兵衛写真賞受賞者の志賀理江子さんの「自分が住む場所のせいぜい半径100メートル以内を、できる限りよく見ることはしてきたと思います。そうすると、どこにでも秘境はあるものだなといつも驚きます」という姿勢。他に宇宙から精神世界へと冒険を続ける瀧本幹也さん、NYに拠点を移すも変わらず作品づくりに邁進する小浪次郎さん、アフリカに魅了されるヨシダナギさんらそれぞれの「冒険」に出合えます。また「私の冒険のはなし」(本誌p.82〜)で現在妊娠中のコムアイさんに話を伺いました。自分に合った分娩スタイルや場所を模索中です。婚姻制度についての考えも伺い、人生をかけて新しいことに挑み続ける姿に感銘を受けました。ジェーン・スーさんとの掛け合いが人気のポッドキャスト番組『OVER THE SUN』でおなじみの堀井美香さんは50歳にしてフリーランスの道を選びました。「フリーになってからは完璧を目指すよりも型を破ることができるようになった」の言葉にチャレンジャー精神が垣間見られます。この特集ではアーティストコレクティブChim↑Pom from Smappa!Groupのエリイさんの子育てで広がった人生についても取材しています。それぞれに色濃く、ただいま冒険中の人生に触れられます。さらに、奇想天外な「“世界の果て”のアート探訪」(本誌p.86〜)も驚愕なので、ぜひご覧ください。

ピレネー山脈の頂を目指してトレッキング〜よじ登りまで。バックパッカー時代の登山ショット。

この特集を通じて気づいたことは、輝いている人は皆、新しいことにチャレンジし、知らない世界に挑み学び続けているということ。そうでした。「人生そのものが冒険!」なのです。挑み続けること。これこそが、生きている証しですものね。

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Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。
Twitter: @akotanaka Instagram: @akoakotanaka

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