フォトグラファーP.M.Kenが捉えた、東京近郊のSF世界
想像の世界、画面やテキストの向こうの世界であるSF。でも実は、そんな世界を体感できる場所が身近にあった。ワクワクするようであり、ゾクゾクするようであり、そのスリル感はSFそのもの。フォトグラファーP.M.Kenが捉えた異世界の入り口。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年1・2月合併号掲載)
山梨県にある、牧場の跡地を活用したメガソーラー(大規模太陽光発電)。山肌を覆うパネルは今にも動き出し、こちらに侵食してくるのではないかと思わせる。ドイツの写真家、アンドレアス・グルスキーが南フランスで太陽光発電所を撮影した作品『Les Mées』(2016)へのオマージュ作品。
古代文明の遺跡か、はたまた廃墟と化した現代文明の未来の姿か……。見知らぬ巨大建造物を思わせるここは、広さ2万㎡、深さ30mに及ぶ大谷石地下採掘場跡(栃木県宇都宮市)。今では劇場などとしても使用されている。地下のひんやりとした空気も相まって荘厳な雰囲気を湛える。
切り立つ巨大な岸壁が大峡谷をつくり、柱状の岩とエメラルドグリーンの清流が美しい清津峡(新潟県)。景観を楽しむために生まれた歩道トンネルは、「大地の芸術祭 2018」でアート作品『Tunnel of Light』に生まれ変わった。水面に映り込む自然の美しさはまるで鏡世界の向こう側に誘うよう。
高度なコンピュータに制御され、退廃した未来社会の姿を描くサイバーパンクの世界観を彷彿とさせる建物、実はそごう千葉店の駐車場。螺旋状の構造になっている建物の吹き抜け部分(写真)に立つと、発達したテクノロジーを前にしてなすすべもなく矮小化する人間の気持ちを味わえてしまう。
Photos: P.M.Ken