「WRINN(リン)」川島幸美が挑む、サステナブルとデザイン性が両立する服づくり | Numero TOKYO
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「WRINN(リン)」川島幸美が挑む、サステナブルとデザイン性が両立する服づくり

ケープを羽織ったようなデザインの「バックケープニット」は「Numero CLOSET」でも展開中
ケープを羽織ったようなデザインの「バックケープニット」は「Numero CLOSET」でも展開中

「輪廻」という大きな時間の中で、「凛」として佇む女性が纏う服をイメージしたブランド「WRINN(リン)」。「持続可能なファッションを通して地球の自然環境に貢献すること」をミッションに掲げ、素材を始め、生産過程で環境負荷の大きい部分を見直しながら、同時に高いデザイン性にも挑む、デザイナーの川島幸美さんに、服作りのこだわりやブランドが目指すものについて聞いた。

丹精込めて作った服は長く愛してもらいたい
ずっと疑問を感じていた“アパレルの常識”を変えるために

「WRINN(リン)」がスタートしたのは2020年の11月。デザイナーの川島幸美さんは、アパレル業界に長く身を置く中で、ファッションビジネスの“常識”とされていたことに対して、疑問がどんどん膨らんでいた。

「以前は3つのブランドの、デザインから生産や販売まで手がけていました。毎日深夜までスタッフが全力を注いで作った服も、シーズンの終わりには一斉にセールにかけられてしまう。セールで売れ残った服が捨てられてしまうことも悲しかったし、ゴミに変わり、それを増やしてしまうことにも疑問を感じていました。これまで常識とされていたことではなく、なにか新しいシステムはできないだろうかと、コロナ禍中に立ち上げたのが『WRINN』です」

ブランド名は「Wastes(ごみを出さない)」「Recycle(資源を無駄にしない)」「Improve(生産者の生活環境を改善する)」「Nature(土壌を守る)」「No more animals(動物の毛皮を使用しない)」という、言葉の頭文字を並べたもの。

「生地はオーガニックコットンや再生繊維、リネンやウールなど土に還る天然繊維を使用しています。ブランドを立ち上げた2年前は生地の種類が少なく、思い通りのシルエットが出せずにデザインに苦労したことも。最近では再生繊維も増えたし、CO2排出が少ないインクジェットプリントもできるようになりました。生産過程でも、認証のとれたオーガニックコットンを使用したり、労働者の健康や労働条件を守るフェアトレードを意識し、デニム加工は汚水処理を行い環境負荷の少ない工場にお願いしています」

素材と生産過程にこだわったからこそ、大量生産するのではなく、いいものを少しずつ。シーズンごとにアイテムを入れ替えるのではなく、シーズンレスで販売を継続していく。

「たとえ5、6型でも、私が本当に作りたい服だけを展示会やSNSで発表して、オンラインのみで販売しています。基本的には、量産分がソールドアウトになったら販売終了。お客様から追加してほしいという声をいただき、追加生産することもあります。シーズンレスだから、セールも行いません。その代わりセールの損益分を価格に上乗せしないので、クオリティが高いものをリーズナブルな価格に設定することができます」

素材のこだわりや着心地の良さは
ファッションが楽しくなる服を作るために

「WRINN」デザイナー 川島幸美
「WRINN」デザイナー 川島幸美

素材はサスティナブルなものだけど、デザインは都会での暮らしの中で使えるもの、ファッションを好きな人が着て楽しいものにしたいと川島さんは考えている。今回、特別に「Numero CLOSET」でも販売をスタートした3つのアイテムも、サステナブル素材と高いデザイン性が融合したもの。

「バックケープニットは、オーガニックの牧草で育ったグラスフェッドウール100%です。ミュールジングしていないかなどもチェックしています。これはケープを羽織ったようなデザインで、フロント着丈が短めなので、ハイウェストボトムに合わせてもすっきり着ることができます。カシミアのパフスリーブは、カシミアを撚糸するときに出た糸くずを、再度紡績したリサイクルカシミアを使っています。といっても、普通のカシミアニットと遜色がないくらい、クオリティは良いものを使用しています。ケープコートもウール100%にこだわりました。ゆったりしたシルエットなので、インナーにニットを着込んでもかさばりません」

ギャザーや丈、襟のあき具合などトータルのバランス感が計算されたアイテムは、デザインからパターンまで、川島さんが一貫して行っているので、着たときのシルエットが美しい。リピーターが多い理由もそこにある。

少数のスタッフでフットワークを軽く。
働くこともライフスタイルの一つに

川島さんが見直した“ファッションの常識”は、自分の働く環境もその一つ。

「これまではたくさんのスタッフと一緒に、朝から深夜まで、ひたすら服を作り続けていました。でも、これは無理があると感じていたんです。本来の人間らしい生き方を取り戻して、仕事もライフスタイルの一つとして取り込んでいけるように、自分自身を変えました。今は少数の信頼するスタッフと外部スタッフに協力してもらって、身軽にどこでも働けるようにしています」

ワーカホリック気味の生活に、オンとオフを切り替えが生まれたことで、サーフィンやスノーボードも始めた。以前よりも自然の中にいる時間が増えて、視野も広くなったという。

「自然の中で新しい発想が生まれたり、植物や動物から色のインスピレーションをもらったり。以前からお友達のマギーと、一緒にMAGGY×WRINN GOLFというゴルフウェアも始めました。環境破壊が問題のゴルフ場なので、ゴルフウェアだけでも環境に良い素材でプレイできたら。もちろん、東京も好きですし、アート、カルチャーから刺激を受けることもあるので、街と自然、どちらも私にとって必要なものです」

素材や服だけでなく、作る人の働く環境もサスティナブルなものへ。2023年の年明けには新しいアイテムも発表予定。「WRINN」の新しい挑戦は、ファッション未来につながっていく。

現在「WRINN」で展開しているローゲージのニットやリメイクのデニムスカートでコーディネート
現在「WRINN」で展開しているローゲージのニットやリメイクのデニムスカートでコーディネート

WRINN

https://wrinn.jp/
Instagram:
@wrinn_

Numero CLOSET

https://shop.numero.jp

Photos:Ayako Masunaga Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Sayaka Ito

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