23年春夏「Prada」は女性の生き様を探求。NWレフン監督の視点を取り入れたショーを開催
プラダが2023年春夏コレクションを発表。ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズは、映画監督のニコラス・ウィンディング・レフンを迎え入れてウィメンズファッションショーを開催した。
フロントロウには、今回のコレクションでコラボレーションしたニコラス・ウィンディング・レフン監督ファミリーの姿や、アンバサダーの永野芽郁、TWICEのサナ、キム・テリの姿も。
コレクションのタイトルは「Touch of Crude」。会場となったプラダ財団の「Deposito」には、レム・コールハースのAMOと共同で考案した没入型のインスタレーションが装飾の一部として設置され、レフンが手がけた短編映画のシリーズを、黒い紙の壁に開けられた窓から見ることができる。観客がこの窓を覗き込むことで、ショートフィルムから切り取られたさまざまな家庭や女性の生活の断片的なシーンに触れられるという仕掛けだ。
不穏なムードをたたえるミニマルな音とともに、ボックスシルエットのロングジャケットとポプリンシャツの生地のボディースーツを着用したファーストルックでコレクション開始。
会場の黒い切りっぱなしの窓と呼応するように、紙を基調とした生地が使用されたり、荒々しく引き裂かれたスリットやヘムから露出した下着、ねじれ、シワ、折れ目まで、衝動的で生々しく表現される。それらは、ミウッチャ・プラダ曰く「生きている痕跡」。人間のジェスチャーが、衣服の表面に生命を吹き込み、生命の痕跡が衣服の形を作るというアイデアのもと、あたかも布地に埋め込まれた美の記憶のようにしわくちゃのランジェリードレスが登場する。噛み砕いたシェットランドニット、胸元を裂きコサージュが付けられたTシャツ素材のドレス、オペラコート、トレーンがあしらわれたテーラリングと続き……どのルックにも共通しているのは、チャンキーヒールのメリージェーンと目を覆い隠すような長いつけまつげ。
デイタイムからイブニングへ、あるいは、ミニマリズムからデコレーションへ、同じ人物のさまざまな一面なのか、異なる人物それぞれなのか、つねに流動的に変化し続けている現代女性の“リアル”なアイデンティティを探求していく。まるで、「あなたは何を選んできましたか」とこれまでの生き方を問われているようでもあり、自分がいま良いと感じる女性像に思いを馳せながら、ふさわしい服を選べばいい(それはあなたの自由)というメッセージとも受け取れる。
ショー発表後に公開された動画も必見。ミウッチャ、ラフ、レフンの三人が、今回のコレクションのインスピレーションとなったアイデアについて語り合う、貴重な記録となっている。
Photos:Courtesy of Prada Text:Chiho Inoue