「楳図かずお大美術展」で楳図ワールドに浸る!【#私の土曜日16:00】 | Numero TOKYO
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「楳図かずお大美術展」で楳図ワールドに浸る!【#私の土曜日16:00】

東京シティビューにて開催中の「楳図かずお大美術展」へ。ホラーやSFを中心に歴史に名を刻む傑作を数多く世に送り出している漫画家・楳図かずお先生。漫画という枠には収まりきれない先見的な世界観と画力、ストーリー、本当に天才です。『まことちゃん』の印象しかないという方には私のたんとある蔵書をお貸ししたいぐらい。展覧会ではその比類なき芸術性をテーマに新作や代表作を通して楳図ワールドを表現しています。

展覧会の目玉は、27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』。楳図作品を知っている人ならすぐにピンとくるでしょう。漫画『わたしは慎吾』とつながる作品です。27年ぶりというのもすごい話。先生がしばらく漫画を離れていた理由は「ずっと漫画を書いていても評価も何もなく、褒められることって全然なくて…」という作品への評価。が、2018年「漫画界のカンヌ」とも言われる「アングレーム国際漫画祭」で『わたしは真悟』が「遺産賞」を受賞。世界から高く評価されたことをきっかけに創作意欲を取り戻され、今回公開されている『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』を4年がかりで完成。

©楳図かずお Photo: Ken Kato
©楳図かずお Photo: Ken Kato

コマ割りしたマンガではなく、一つのシーンをB4サイズぐらいの紙1点に鉛筆で下絵を描き、アクリル絵具で着色するという絵画のようなスタイル。なんとその数101点!

展覧会ではその作品1点ずつ順に観ていくことで、漫画のコマを読み進めるようにストーリーを楽しめるようになっています。『わたしは真悟』(1982年〜)では、自我が芽生えた産業用ロボットが進化していく姿を描き、デジタル社会における人間の在り方に一石を投じています。今回の新作は、人類が滅びロボットだけになってしまった未来でのロボットシンゴとマリンの壮大なストーリーが展開されています。作品1点1点の構成や色合いも素晴らしく、先入観なしに見ても楽しめますが、『わたしは真悟』を読まれてから見るとよりぐっと来ると思います。会場の東京シティビューから見える東京タワーを見たら「333ノテッペンカラトビウツレ」と呟いてしまうはず。

©エキソニモ ©楳図かずお/小学館 Photo: Ken Kato
©エキソニモ ©楳図かずお/小学館 Photo: Ken Kato

『楳図かずお大美術展』
会期/〜3月25日(金)
会場/東京シティビュー
住所/東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
開館時間/10:00~22:00(最終入館 21:30)
URL/umezz.roppongihills.com/

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Profile

水戸美千恵Michie Mito マーケティング・ディレクター/エディトリアル・ディレクター。大学時代にジャーナリストアシスタント、ライターとして書籍、雑誌に携わる。卒業後扶桑社へ入社し、女性ファッション誌を経て『NumeroTOKYO』創刊1年目より副編集長に就任。ファッションページ制作や取材のほか連載「YOUのテキトーく」「佐久間由美子が聞く 女性表現者たちの闘い」を担当。食、旅、アートも好きなもの。座右の銘は「いつも心にナンシーを」。Instagram: @mitomiche

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