見逃していませんか?「民藝の100年」をブックディレクター山口博之がレポート
柳宗悦らが蒐集した陶磁器、染織、木工などの暮らしの道具類や民画のコレクションとともに出版物、写真、映像などの同時代資料を展示、民藝とその内外に広がる社会、歴史や経済を浮かび上がらせる展覧会、柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」。ブックディレクターの山口博之がレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年1・2月合併号掲載)
編集とネットワークの民藝
「民藝の100年」は、「民藝」という言葉が1925年に生まれてからもうすぐ100年であること、そして「民藝」の提唱者にして、ムーブメントを理論、実践、蒐集などあらゆる面で牽引した柳宗悦の没後60年であることに合わせて企画された展覧会だ。
この展覧会は、これまで企画されてきた柳の理論から民藝を紐解く作品展でも、濱田庄司や河井寬次郎など作家個人という括りでもなく、さらに単なる単線的に歴史を振り返るものでもない、俯瞰的で編集的な見通しのいいものだった。「民藝」展を俯瞰し、編集するという視点は、民藝という運動自体がとても編集的で、ネットワークを駆使したものだったことが重ねられている。
民藝運動の三本の柱となる活動を示した“民藝樹”という図が紹介されている。それは、民藝運動が「美術館(=日本民藝館)」「出版(=機関誌『工藝』や書籍等)」「流通(=セレクトショップ・たくみ工藝店)」という3つのメディアをネットワークし、日本各地の人とものづくりをフラットに位置づけながら展開していたものであることを示している。各地の手仕事を全長13m超の日本地図にマッピングした圧巻のスケールの《日本民藝地図(現在之日本民藝)》(日本民藝館蔵)からもよくわかる。鉄道網が全国に延びたことと民藝の活動時期の一致も、観光の視点も含めとても興味深い。
あ、バーナード・リーチが描いた書斎の柳宗悦のスケッチが、谷口ジローと荒木比呂彦の絵を足して割ったようでとてもよかった。
※掲載情報は1月29日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は展覧会公式サイトをチェックしてください。
柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」
会期/2021年10月26日(火)〜2022年2月13日(日)
会場/東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー、2F ギャラリー4
住所/東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間/10:00〜17:00(金・土曜は10:00〜20:00) *入館は閉館の30分前まで
休館/月曜日
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル 9:00〜20:00)
URL/mingei100.jp
Text:Hiroyuki Yamaguchi Edit:Sayaka Ito