【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.15 各社のリモートワーク導入事情
Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。
vol.15 各社のリモートワーク導入事情について
コロナ禍をきっかけに、リモートワークも一般的になってきましたが、恒常的にオフィスへの出社を義務としない会社もできています。中でも先週、ヤフーが自社のリモートワークについての「どこでもオフィス」の制度をアップデートしたことが話題になっています。
ヤフー、人事制度「どこでもオフィス」を拡充──国内どこでも居住可能、通勤手段の制限も緩和
これまでは通常の交通機関に加えて新幹線で午前11時までに出社できるエリアに範囲は居住地は限定され、交通費も片道6500円までと規定されていたものの、今回のタイミングで出社時間の縛りはなくなり交通費の片道の制限も撤廃されたといいます(交通費月額の上限は15万円のまま)。
毎日出社する必要がある社員が交通費の負担を上限に収めるには多少居住可能な範囲は限定されるかもしれませんが、週1〜月1程度の出社であれば、ほぼ全国どこでも住めるようなかたちに制度がアップデートされています。今後は国内に留まらず、世界へとその対象が拡がっていくことも考えられますね。
弊社サマリーでも2020年の3月に全社リモートワークを導入し2年が経とうとしていますが、特に優秀な開発職の社員はリモートワーク志向が強く、採用のターゲットを都心のオフィスに通勤可能な人材に限定するよりも、全国に拡げることでより優秀な人材が採用できる確率があがることは実感としてもよくわかります。
弊社の場合は、業務の進め方として、コロナ禍以前より属人性を取り払い、仕組み化・ドキュメント化に注力してきたこともありリモートワークへの移行は非常にスムーズでした。会社によって働き方は様々だと思うので、もちろん向いている会社とそうでない会社はあると思います。
ちなみに個人的に僕も昨夏より軽井沢に拠点を移し、自然の中の快適な仕事環境でリモートワークを進んで実践し、その良さを体感しています。
ANA正社員、転籍で地方移住OK 22年度に新制度導入へ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ1F6W10Q1FULFA01W.html
ANA正社員、転籍で地方移住OK 22年度に新制度導入へ https://t.co/ELaw2Ozd8U
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) January 13, 2022
かたや、ANAで導入された地方移住OKの制度もあるのですが、ヤフーの制度と一見似ているようで全然異なるもので、こちらはヤフーの自分の希望の場所でどこでもいつでも働けます、というよりは地方の子会社に希望があれば転籍させてあげます、という制度になっています。航空会社はコロナの悪影響を最も受けている業種のひとつで、やはり経営上の観点から人件費を削減する必要もあり、転籍した場合は当然ながら子会社の給与規定が導入されます。
全日空CAが移住して超遠距離通勤選んだ理由(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ1C3CL6Q14UZHB006.html
全日空CAが移住して超遠距離通勤選んだ理由 不安で保険も見直した https://t.co/VgH0TKKxyL
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) January 11, 2022
とはいえANAが地方子会社への転籍だけを推進しているかというとそうではなく、国際線のチーフパーサーが山形に移住し、CAの能力を活かして出向というかたちで業務の半分の時間で庄内地方のPRの仕事に携わり、残りの半分の時間では自社便で羽田まで通勤し今まで通りCAの業務をこなしているといったケースもあるといいます。
社会全体のムードが、毎日通勤するのが当たり前ではなく、どこでも働けることが当たり前になるのはやはり歓迎されるべきことで、メタバース関連のサービスの普及のトリガーになる可能性も大いにあると思います。どんどん推進されていってほしい気持ちもありながら、年末の納会で久しぶりにリアルにチームの面々と顔をあわせたときの喜びというのはなかなか他には代えがたいものでした。そう思うとリモートワーク自体が「リアルの価値」をより感じさせてくれるものなのかもしれません。
リモートとリアル、どういうバランスがベストなのかを社会全体で探り続けていく時間がもう少し続いていくのでしょうが、コロナもさすがにいよいよ収束してほしいものです。
Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue