TOKYO女性デザイナーの最愛マイヴィンテージ|vol.2 瀧見サキ
今の気分を反映したリアルモードをつくり出すTOKYOの女性デザイナー。 彼女たちがパーソナルに長く大切にしているアイテムとは? 手放せない理由から見えてくる、それぞれのアイデンティティ。 自分らしさを見つめ直すことは、自身を愛することにつながる。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年5月号掲載)
瀧見サキ(SAKIAS シューズデザイナー)
エルメスのシルバーブレスレット
フィッテングにこだわったシューズブランド、サキアスのデザイナー、瀧見サキさん。大切にしている一品はエルメスのブレスレット。その理由からは彼女の美学が垣間見える。
「30代前半のことですが、ある日鏡を見てバランスとして何かアクセサリーが必要だと思って。ブレスレットを探したのですが、しっくりくるものに出合えませんでした。それで夫が、90年代にパリで購入したエルメスのブレスレット「シェーヌ ダンクル」を譲ってくれたのです。つけ心地が自然で違和感がなく、お客さまの計測にも邪魔にならないので10年以上愛用しています。
そもそも私はデザイナーを目指したわけではなく、自分が履くためのシンプルなパンプスが欲しくて靴づくりを始めました。20代はスタイルをよく見せるために9.5cmヒールしか履かない徹底ぶり。当時憧れだったマノロの美しい靴は、たくさん歩くためには作られておらず、履くたびに痛くて。それなら自分で作ろうと本格的な靴の学校で学び、卒業後も木型と向き合う日々でした。1週間に1足の靴を作るか、週末DJの夫がいるクラブに行くかの生活(笑)。今は流れに逆らわず求められる靴を作っていますが、シーズンごとの新作もほんの数型です。在庫があるとそれを売ろうと望まないエネルギーを使うので在庫も持ちません。靴もブレスレットも、私にとってはあくまで自分のバランスをとるための道具。自分らしさを見極めて、物を増やさず、最小限で生きていきたいです」
Her Creation
“工夫してこそ我あり”な靴づくり
ワイズはAから4Eまで、既存の木型に足に合わせる乗せ甲という作業でフィット感を生む。手前は黄金律のステッチですっきり見せた定番パンプス。奥はグルカサンダルをベースに鼻緒を内蔵したり、バックストラップにクッションを添えるなどの配慮が。仕上がりまでは3ヶ月前後。生産は長年の実績を持つ工房が担当。半端な残革を使い、素材や色をオーダーする“誰も傷つかない”エシカルな取り組みも。
Photos : Hal Kuzuya Edit&Text : Hiroko Koizumi