“寝つき90分”が質の勝負! スタンフォード式睡眠メソッド
生活スタイルの変化で、眠れない人が増加中。心の健康と美容、それに人生までも左右するから。コツを知って、量よりパフォーマンスを上げる睡眠を。眠りのゴールデンタイムとは?(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年3月号掲載)
あなたの眠りの質は大丈夫!?
CHECKLIST
□ 寝つきがよくない
□ 昼間眠気が強い
□ 朝から頭がすっきりしない
□ 日中にミスが多い
□ 中途覚醒が多い
□ 日中のパフォーマンスを上げたい
スタンフォード大学医学部精神科教授・医師
西野精治さん
1987年渡米。レム睡眠の発見者のひとりウィリアム・C・デメント教授に師事。ナルコレプシーの発生メカニズムを突き止め、2005年、スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長に就任。株式会社ブレインスリープ代表取締役兼最高研究顧問。『眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話』(日本文芸社刊)が2月発刊予定。
眠りは“始めよければすべてよし”
「多少時間が少なくても、最初の90分をしっかり深く眠れることができれば、最高の睡眠がとれます」と、“量より質”を高めることを推奨する西野精治医師。この90分の間に体内では何が起きるのか?「人はレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しますが、寝ついて最初の90分間のノンレム睡眠はもっとも深く、明け方になるほど浅くなっていきます。最初の90分だけで、成長ホルモンの7〜8割が分泌されることがわかっています」。ご存じ、細胞の増殖や代謝に関わる成長ホルモンは美肌&アンチエイジングの源。この90分こそが美容のためのシンデレラタイムということ!「逆に最初の90分が妨げられると、何時間寝ようが、その後の睡眠リズムも乱れやすくなります」(西野先生)。無理に夜明けまで仕事をして寝ても、最高の90分は得られない。体のサーカディアンリズムに逆らわず、夜眠気が起きたときに眠ることが大切。家族やパートナーとこの知識をシェアして、寝つき90分は邪魔しないルールをつくるべし!
正しい入浴や良質な寝具で、最高の90分を演出
では、どうしたら最初に深い睡眠がとれるの? 西野先生がとっておきの“スイッチ”を伝授!「睡眠90分前の入浴です。スムーズな入眠にとりわけ大事なのが“深部体温の調節”。人は、手足などの毛細血管から熱を逃がして、深部体温を下げると眠くなります。それを意図的にコントロールできるのが入浴。入浴で一度上がった深部体温は、約90分後に下がり、体が眠くなるタイミングを迎えます」。お風呂は、38〜41度のお湯がベスト。冷え性の靴下なども、末端まで覆うと放熱できなくなるので足首からふくらはぎまでのものを。
「寝具や枕、香りや温度、音や光など、寝室環境を最適にして、寝入り90分をいかに妨げられず快適に眠るか。そこに心を配るべきなのです」。健康な人の場合、ベッドに入って目を閉じたら10分以内で入眠するそう。「睡眠は自律神経やホルモンなどに関係しているほか、イヤな記憶を消し去る役割もあります。近年では、アルツハイマー型認知症に関与する“脳の老廃物”=アミロイドβの除去が睡眠中に行われていることも判明しています」(西野先生)。“脳のシミ”も睡眠中にデトックスして、未来の健康も守って!
“頭を冷やす”枕選びを!
「頭に熱がこもらない素材と、気道を確保できる高さの枕を」と西野先生が開発した枕は、高反発と低反発のハイブリッド。使ううちに頭の重さや大きさにフィットし、首や肩に負担なく寝がえりもしやすい。
Photos: John Chan Illustration: Asami Hattori Edit & Text: Naho Sasaki