資生堂の地下で開催される秘密のダンスパーティ | Numero TOKYO
Art / Editor’s Post

資生堂の地下で開催される秘密のダンスパーティ

銀座・資生堂ギャラリーにて、アーティスト藤田クレア展「ふとうめい な 繋がり」が開催中ということで足を運ばせていただきました。美を象徴する企業の資生堂の地下で、なにやら秘密のダンスパーティーが行われているということで...!?

“新しい美の発見と想像”をテーマに資生堂が3組の若手作家を紹介する展覧会『shiseido art egg』。そのラスト3組目となるのが、藤田クレアさんの「ふとうめい な 繋がり」。

地下に降りると待ち受けるのは、なんと巨大なシャンデリアのような噴水のオブジェ…!  下から吸い上げた水が頂点から重力に逆い噴射し、やがて重力に負けて落下。はたまたいくつものポリエステル製のチューブの中を下から上へ、上から下へと空気を孕みながら赤黒い液体が循環して流れるという、まずこの二重の循環に目を惹かれました。それは、まるで花のようで、中央で噴射する様子は受粉をする雌しべにも見えます。そしてそれを囲むように4つの壁面には、これもまた上下運動を繰り返す、真鍮製のキネティックなオブジェ。(これは雄しべ…!?)

《静かなダンス 》2020 ミクストメディア
《静かなダンス 》2020 ミクストメディア

続いて、作品は小さなサブホールに繋がっていきます。そこでまず目を引くのは、回転する機械と共に上下に動きを繰り返す金属の突起と、その突起が、美しい液体に挿入する様子。突起が液体に入るたびに気泡ができ、その様子に目が奪われる、癖になる作品です。液体はガラスの容器に入っており、あえてその下の石のいびつな形に合わせて作られたガラスもまた液体の様子を美しく見せるのに一役買っています。

《Never the Same》2019 ミクストメディア
《Never the Same》2019 ミクストメディア

また、そのほか、古来より人が美しいを感じる比率「黄金比」のできている貝殻の形をなぞるように回転する丸い玉と、測定した音をオルゴールのようにメカが奏でます。まさに、“美”とは何なのかを音や記録で感じられます。

《Invisible soundscape ~version 1 : (1 + √5)/2+x~ 》 2020 ミクストメディア
《Invisible soundscape ~version 1 : (1 + √5)/2+x~ 》 2020 ミクストメディア

どの作品も一見するとまずセクシュアリティが思い浮かぶのですが、規則性のある人工物が有機的な形をもつ自然物との摩擦、自然と人間の絶え間ない関係性も彷彿させられます。

美しいものやどんな外見をした人でも、本当の中身は誰も知ることはできない。海外生活が長く多文化の中で育ち常に他者との違いを意識してきたという藤田さんが考える、人間同士の繋がりや距離、コミュニーケションのあり方が感じられました。

入場には事前予約が必要になりますが、これも会員制な秘密なダンスパーティーへの誘いかもしれません。ぜひ、残りあと数日の会期をお見逃しなく!

第14回『shiseido art egg』藤田クレア 展 ふとうめい な 繋がり

会期/2020年11月27日(金)~12月20日(日)
会場/東京都 資生堂ギャラリー
住所/東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
時間/平日 11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00

休館/月曜(祝日が月曜にあたる場合も休館)

TEL/03-3572-3901
URL/www.shiseidogroup.jp/gallery
入場無料・事前予約制

Profile

大岩翠Midori Oiwa ファッション・エディター/フォト・エディター。大学卒業後、渡英。ロンドンのファッション誌でアシスタント経験を積む。2018年に帰国し、『Numero TOKYO』に参加。現在は、海外撮影のカバーストーリーをメインに、ファッションコンテンツを担当しているほか、フリーのエディター、スタイリストとしても活動中。去年から猫を飼い始め、愛猫と一緒に寝るのが何よりも癒し。おかげで引きこもりがちなので、今年こそは海外旅行のルーティンを取り戻したいとたくらみ中。
Instagram: @midorioiwa

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