Art / Feature
時間を映し出すアートの地平 【4】クリスチャン・ボルタンスキー
傷心からの復活、平和への祈り、人類と地球の問題に至るまで──。色とりどりのアプローチで時間を捉え、気付きへと誘うアートの力。みずみずしく奥深い“時間の形”を見せてくれる作品とは。『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年7・8月合併号の特集より、一部抜粋してご紹介。
エスパス ルイ・ヴィトン東京「CHRISTIAN BOLTANSKI - ANIMITAS II」(2019年)の展示風景より。『アニミタス(死せる母たち)』、死海、イスラエル(2017年) Courtesy of the Fondation Louis Vuitton Photo: Jérémie Souteyrat © Adagp, Paris 2019
クリスチャン・ボルタンスキー
『アニミタス(死せる母たち)』
時とともに浮かび上がる死者の魂
名もなき人々の顔写真の祭壇など、記憶や歴史を喚起する作風で知られるクリスチャン・ボルタンスキー。南米の砂漠や瀬戸内の豊島(てしま)などで展開された『アニミタス』は、300個の風鈴が土地の死者の魂と呼応した音を奏でる作品。昨年にはエスパス ルイ・ヴィトン東京で映像による展示が行われ、彼が「亡霊」だと語る風鈴の音色が響き渡った。死者への思い、薄れゆく記憶──人間という存在の儚さが、時の流れの中に浮かび上がる。
Edit & Text : Keita Fukasawa
Profile
クリスチャン・ボルタンスキーChristian Boltanski
1944年、フランス・パリ生まれ。歴史や記憶、人間の存在の痕跡などをテーマに、匿名の人々のポートレートや電球、古着などを用いたインスタレーションで知られる。2011年にはヴェネチア・ビエンナーレでフランス代表を務めるなど、世界的に活躍。高松宮殿下記念世界文化賞ほか受賞多数。(Photo: エスパス ルイ・ヴィトン東京にて、2019年 Louis Vuitton/Jérémie Souteyrat)